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第2話 弟ダヴィッドの来訪 アンナ視点(2)
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「引き続き愚兄の周辺を探って計画を突き止め、ソレは捏造だという証拠を手に入れる。その時まで、父への言及を待っていただきたいのですよ」
ダヴィッド様が仰られたのは、ステイ。気付いていないフリをして欲しい、というものでした。
「皆様が動かれますと、兄が何かしらの違和感を覚えるかもしれません――計画を、変更するかもしれません。そうすると掴みかけていたものが使用できなくなり、円滑な処分を行えなくなってしまいます。そこで、こちらの手紙は見なかったことにしていただきたいのですよ」
「そちらは勿論、異論はありません。ですが、こうして受け取ってしまっています。そちらの誤魔化しは、可能なのでしょうか?」
使者の方から、受け取ってしまっています。そこを、なかったことに出来るのでしょうか?
「ええ、問題ありません。あの使者は僕の息がかかった人間でして、すでに話を合わせてくれるようになっています。実は屋敷に帰還せず、外で待ってもらっているのですよ」
酔いのせいで封筒にしっかりと封ができておらず、途中で開いて中身が見えた。その際に便箋の色があまりにも違うため不審に思い、一旦戻って確認を行うことにした。
そういった流れまで、ダヴィッド様は考えてくださっていました。
「兄は僕の把握と行動を一切知りませんし、使者は自分の理解者であり協力者の一人だと思い込んでいます。そうしておけば、愚兄は簡単に信用してしまうのですよ」
「な、なんと……! そこまでコントロールされているなんて……!」
「こちらはいずれ――そうですね、この件が解決したあとにお伝えさせていただくのですが。僕はとある理由により、以前からアンナ様と兄の交際を見守っておりました。こういった使い方は、想定してはいませんでしたが……。アンナ様の幸せが実現するべく、色々と準備であり用意をしていたのですよ」
おもわず感嘆を漏らしたお父様に小さく微笑まれ、私には微苦笑を浮かべられました。
とある理由。そちらが気になりますが、時期を明言してくださっています。そこで更に踏み込むことはせず、新たに開き始めたダヴィッド様のお口を見つめました。
「そのため手に渡ったと認識はされず、それによって彼はのうのうと計画を進めます。捏造の証拠確保の際に、アンナ様に少々行動をしていただくことがあるかもしれませんが――。心身であり評判の安心安全は、保障いたします。貴方の顔が悲しみに歪むことはないとお約束致しますので、お願いできますでしょうか?」
「私はかつて生徒会書記としてお傍におりましたので、そういった心配は微塵もございません。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ダヴィッド様は歴代最高の得票数で生徒会長に任命された、人格者であり切れ者な御方。それに何よりこの方は、お傍に居ると不思議と大きな安心感を得られる御方。『信頼できる』と無条件で思える程に、立派な御方ですので。
迷わず頭を下げ、お父様とお母様も続いてくださりました。
「「ダヴィッド様。娘の件、なにとぞよろしくお願い致します」」
「アンナ様、リロレット卿、レテア様。こちらは兄の不始末、そういったものは不要でして、そうするのは僕の方でございます」
そう仰られたダヴィッド様は私達以上に深々と頭を下げられ、そちらが終わるとすぐさま立ち上がられます。
「それではこれより、行動を開始いたします。変化が生じればつど、報告をさせていただきますね。………………」
「? ダヴィッド様?」
「いえ、なんでもありません。……たびたび無言で見つめてしまい、申し訳ありません。失礼致します」
そうしてダヴィッド様はお屋敷を去られ――こうして私達を襲った激動の時間は、ひとまず、終わりを告げたのでした。
ダヴィッド様。貴方様が気付いてくださったおかげで、私は魔の手に落ちずに済みました。ありがとう、ございます。
ダヴィッド様が仰られたのは、ステイ。気付いていないフリをして欲しい、というものでした。
「皆様が動かれますと、兄が何かしらの違和感を覚えるかもしれません――計画を、変更するかもしれません。そうすると掴みかけていたものが使用できなくなり、円滑な処分を行えなくなってしまいます。そこで、こちらの手紙は見なかったことにしていただきたいのですよ」
「そちらは勿論、異論はありません。ですが、こうして受け取ってしまっています。そちらの誤魔化しは、可能なのでしょうか?」
使者の方から、受け取ってしまっています。そこを、なかったことに出来るのでしょうか?
「ええ、問題ありません。あの使者は僕の息がかかった人間でして、すでに話を合わせてくれるようになっています。実は屋敷に帰還せず、外で待ってもらっているのですよ」
酔いのせいで封筒にしっかりと封ができておらず、途中で開いて中身が見えた。その際に便箋の色があまりにも違うため不審に思い、一旦戻って確認を行うことにした。
そういった流れまで、ダヴィッド様は考えてくださっていました。
「兄は僕の把握と行動を一切知りませんし、使者は自分の理解者であり協力者の一人だと思い込んでいます。そうしておけば、愚兄は簡単に信用してしまうのですよ」
「な、なんと……! そこまでコントロールされているなんて……!」
「こちらはいずれ――そうですね、この件が解決したあとにお伝えさせていただくのですが。僕はとある理由により、以前からアンナ様と兄の交際を見守っておりました。こういった使い方は、想定してはいませんでしたが……。アンナ様の幸せが実現するべく、色々と準備であり用意をしていたのですよ」
おもわず感嘆を漏らしたお父様に小さく微笑まれ、私には微苦笑を浮かべられました。
とある理由。そちらが気になりますが、時期を明言してくださっています。そこで更に踏み込むことはせず、新たに開き始めたダヴィッド様のお口を見つめました。
「そのため手に渡ったと認識はされず、それによって彼はのうのうと計画を進めます。捏造の証拠確保の際に、アンナ様に少々行動をしていただくことがあるかもしれませんが――。心身であり評判の安心安全は、保障いたします。貴方の顔が悲しみに歪むことはないとお約束致しますので、お願いできますでしょうか?」
「私はかつて生徒会書記としてお傍におりましたので、そういった心配は微塵もございません。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ダヴィッド様は歴代最高の得票数で生徒会長に任命された、人格者であり切れ者な御方。それに何よりこの方は、お傍に居ると不思議と大きな安心感を得られる御方。『信頼できる』と無条件で思える程に、立派な御方ですので。
迷わず頭を下げ、お父様とお母様も続いてくださりました。
「「ダヴィッド様。娘の件、なにとぞよろしくお願い致します」」
「アンナ様、リロレット卿、レテア様。こちらは兄の不始末、そういったものは不要でして、そうするのは僕の方でございます」
そう仰られたダヴィッド様は私達以上に深々と頭を下げられ、そちらが終わるとすぐさま立ち上がられます。
「それではこれより、行動を開始いたします。変化が生じればつど、報告をさせていただきますね。………………」
「? ダヴィッド様?」
「いえ、なんでもありません。……たびたび無言で見つめてしまい、申し訳ありません。失礼致します」
そうしてダヴィッド様はお屋敷を去られ――こうして私達を襲った激動の時間は、ひとまず、終わりを告げたのでした。
ダヴィッド様。貴方様が気付いてくださったおかげで、私は魔の手に落ちずに済みました。ありがとう、ございます。
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