もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず

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第3話 兄~偽りの安堵と、作戦の進行~ ロマニ視点(1)

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「危ない危ない……! 墓穴を掘ってしまうところだった……!」

 昨夜祝杯をあげながら書き上げた、愛しの人・アニーへの手紙。それを使者ジャックより受け取った俺は、自室で繰り返し安堵の息を吐いていた。

「まさか、アンナ用の封筒に入れていたとはな。本当に、危なかった」

 アニーは可愛らしいから、ピンク色の封筒と便箋。アンナは面白みのない女に成り下がった・・・・・・から、白の封筒と便箋。まるで違うのに、酔いによって入れ間違えてしまうとは。

「アニーの誕生日だからと浮かれて、ワインを1本開けてしまったのは失敗だったな。今後は絶対に、酒が入った状態で書かないようにしよう」

 湧いて出ていた大量の冷や汗を拭い、まずは手紙を書き直す。

 アニーとの出逢いが、俺を目覚めさせてくれた。最高の女だと思っていたアンナは、どこにでもある路傍の石のような存在。俺を惑わせた・・・・・・女の元に行きかけた手紙なんて、彼女に渡せないからな。

 改めてしっかりと心を込めて書き、ジャックに輸送を命じた。

「…………さて。ミスは取り返したし、あっちの計画を進めるとしよう」

 俺は、夜会でアニーと出遭ったことによって――真に愛すべき人によって、目を覚まさせてもらっただけ。真の愛に気付いただけなのだが、世間ではそれを『浮気』などと呼ぶ。そのため堂々とアニーと交際を行えず、そうするには、アンナの非によって婚約をなかったことにするしかない。
 だから――

 アンナがアニーをイジメていた。

 というものを、捏造することにした。
 格下のくせに家が裕福で面白くない。格下のくせにいつも高いアクセサリーをつけていて腹が立つ。そういった理由で、夜会で顔を合わせるたびに攻撃をしていた。ひょんなことからそんな悪事が発覚し、アンナの本性を把握した俺は激怒して婚約を破棄する。
 その後俺は被害者にお詫びを行い始め、なんと! そうしている間に愛が芽生え、2人は恋人となったのだった!
 これが俺が立てた計画で、この作戦は現在ステップ3まで進んでいる。あとツーステップで完成となり、これからラストのひとつ前、ステップ4へと進めることにする。

「うっかり、アニーに送ってしまったからな。まずは改めて、アンナへの手紙を書いて………………」

 一週間後に、アイツの部屋でアフタヌーンティーを行えるようにしておく。そうしてヤツへの手紙を書き直した俺は、デスクの引き出しを開け――

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