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第9話 弟~予想外の言葉~ ダヴィッド視点
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「あちらもこちらも、予定通り進みました。したがって確実に、今日の夜会で状況をひっくり返せますよ」
翌日――夜会当日の、正午過ぎ。僕は再びリロレット伯爵邸を訪れていて、応接室にてアンナ様に断言をした。
前日クローゼット内にネックレスが隠され、その後色々とチェックを行ったものの、ロマニ及びアンナに想定外の動きはなかった。そのため明言をして、そうすると目の前では安堵の息が零れた。
「あのあとも、あちこちで動いてくださっていたのですね……。痛み入ります」
「本来こちらは必要のないもの、念には念の更にその上に念を重ねたものです。僕の性質による、勝手に行った行動ですので、お気になさらないでください」
大きな計画を実行する際、直前に改めて熟考して安全性を確かめ、その結果突然大幅な調整を加える人が意外といる――。それは経験則によるもので、とはいえそういった人間は1パーセントにも満たなかった。
なので自分でも杞憂だと感じていたものの、1パーセントが発生する時があるにはある。そこで、『あり得ないけれど』と思いながら行ったものだったのだ。
「これによって、全てが想定通りと確定しました。ですので、『兄ロマニにアニーが接触し被害を訴える、兄は信用する』、『大勢の前でアンナ様の罪を主張し始める』――。こういった流れとなりますので、愚兄たちによる3流ミュージカルにお付き合いください」
「はい、承知いたしました。……ダヴィッド様。今夜に関するお話は、以上でお仕舞となりましたよね?」
「ええ、そうですね。どうかされましたか?」
この人がこういった確認を行うのは、珍しい。何かあったのだろうか?
「……実はダヴィッド様に、お伺いしたいことがあるのです。決行当日はできる限り、違うものに時間を割くべきではないのですが……。どうしても確認しておきたいことが生まれまして。おひとつ、お許し願えますでしょうか?」
「もちろんですよ。決行当日ではありますが、他に行うことは大してありませんので。どうぞ仰ってください」
実際そうだから、すぐに笑みと頷きを返した。
あのように理解されている上で、知得しておきたいこと。それは一体……?
そう考えているとやがて、アンナ様の口が開き――。
おもわず……。感情が昂ってしまう言葉が、やって来たのだった。
「ダヴィッド様。私達は、以前――学院に入るもっと前に、出会っていますよね?」
翌日――夜会当日の、正午過ぎ。僕は再びリロレット伯爵邸を訪れていて、応接室にてアンナ様に断言をした。
前日クローゼット内にネックレスが隠され、その後色々とチェックを行ったものの、ロマニ及びアンナに想定外の動きはなかった。そのため明言をして、そうすると目の前では安堵の息が零れた。
「あのあとも、あちこちで動いてくださっていたのですね……。痛み入ります」
「本来こちらは必要のないもの、念には念の更にその上に念を重ねたものです。僕の性質による、勝手に行った行動ですので、お気になさらないでください」
大きな計画を実行する際、直前に改めて熟考して安全性を確かめ、その結果突然大幅な調整を加える人が意外といる――。それは経験則によるもので、とはいえそういった人間は1パーセントにも満たなかった。
なので自分でも杞憂だと感じていたものの、1パーセントが発生する時があるにはある。そこで、『あり得ないけれど』と思いながら行ったものだったのだ。
「これによって、全てが想定通りと確定しました。ですので、『兄ロマニにアニーが接触し被害を訴える、兄は信用する』、『大勢の前でアンナ様の罪を主張し始める』――。こういった流れとなりますので、愚兄たちによる3流ミュージカルにお付き合いください」
「はい、承知いたしました。……ダヴィッド様。今夜に関するお話は、以上でお仕舞となりましたよね?」
「ええ、そうですね。どうかされましたか?」
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「……実はダヴィッド様に、お伺いしたいことがあるのです。決行当日はできる限り、違うものに時間を割くべきではないのですが……。どうしても確認しておきたいことが生まれまして。おひとつ、お許し願えますでしょうか?」
「もちろんですよ。決行当日ではありますが、他に行うことは大してありませんので。どうぞ仰ってください」
実際そうだから、すぐに笑みと頷きを返した。
あのように理解されている上で、知得しておきたいこと。それは一体……?
そう考えているとやがて、アンナ様の口が開き――。
おもわず……。感情が昂ってしまう言葉が、やって来たのだった。
「ダヴィッド様。私達は、以前――学院に入るもっと前に、出会っていますよね?」
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