もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず

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第10話 夢 アンナ視点

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 ダヴィッド様にオペラをお出しして、賑やかな時間を過ごした日の夜でした。私は、不思議な夢を見ました。

「〇〇ちゃん、こんにちは。また来たよっ」
「いらっしゃい〇〇くんっ。あそぼっ」

 私は見慣れない建物の中で立っていて、目の前には多分男の子がいて。私はそんな人に満面の笑みを浮かべて、歓迎しているんです。

 多分がついているのは、その人のお顔が分からないから。

 目の前にいる人の顔面と、自分が呼んでいる名前、呼ばれている名前。この3つをなぜか認識できない。濃い『モヤ』のようなものがかかってしまっています。
 なので、声音は高めなものの同性のそれではない点、男児のような体型の人に『くん』をつけている点から、私が男の子と喋っていると判断したのです。

((これは……。なに……?))

 おかしな状況に戸惑っていると、その夢は更に変化をしました。

「〇〇、今日はどうする? なにして遊ぶ?」
「う~ん、そうだね。〇〇くん、お庭で遊ぼっ」

 視界が暗転して視覚が回復すると、私は相変わらず見慣れない建物の中に立っていて、相変わらず相手のお顔も名前も分かりません。
 ですが男の子の姿には変化があって、130センチ程度だった背が150センチ程になっていました。どうやら時間が経過して、成長したようです。

((……これは、もしかして……。私の、記憶……?))

 でも、こんな記憶はありません。でもどう考えても、そうとしか思えません。
 そこで私は更にこの不思議な出来事に集中するようになって、そうしていると再び暗転。やがて再び視界が回復すると、私はおもわず息を呑んでしまいました。

「〇〇が作るオペラは最高だなぁ。今日は父さんの手伝いで大忙しだったんだけどさ、その疲れが一気に取れるよ」
「お仕事お疲れ様です、〇〇くん。はい、いつものローズマリー。今日は濃いめに淹れておいたよ」
「ありがとう。やっぱり〇〇は、俺が欲しい物を分かってくれるんだよなぁ。〇〇、愛してるっ」

 更に成長して、たぶん、15歳くらいになった男の子。私はそんな人にオペラとローズティーを出していて、その後キスを交わしたのです。

((………………))

 突如唇にやってきた、温かく柔らかな感触。それによって私の心は『幸せ』であっという間に満たされ、その直後でした。
 今度は思わず大声を出してしまうことが、起きたのです。

「あっ!!」

 これまで男の子の顔にかかっていた、濃い『モヤ』。それが突然吹いた突風によって飛ばされ――。そうするとそこには、見覚えのある…………子犬のようなお顔が、あったのです。

「そんな……っ。ずっと一緒にいた人は……。ダヴィッド、様……!?」

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