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第12話 疑問と覚醒と、思い出 ダヴィッド視点(1)

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 僕は幼い頃から、自分は普通の人間ではないと思っていた。
 母国語の勉強や貴族としての勉強。それらに既視感があって、驚くべき速度でそれらの知識を身につけてしまったからだ。

((飲み込みが異常に早いと言われた兄さんの倍以上、一般的な人の4倍以上。これは、神童というレベルを超えている……))

 そのため常に自分自身を訝しみ、原因の追究を行い続けてきた。けれどその答えの手がかりすら掴めず、仕方なく諦め過ごしていた。


 そんな毎日に変化をもたらしたのは、生徒会長就任という出来事だった。


 選ばれたことによって僕は生徒会の業務に携わるようになり、必然的に書記であるアンナ・リロレット様と過ごす時間が大幅に増えた。
 それが、始まりだった。

((ん……? この感覚は、なんでしょう……?))

 生徒会活動が始まって、1か月が過ぎた頃だった。突然アンナ様に妙な懐かしさと愛情を覚え始め、それは時間に比例して大きくなっていった。

((……僕達は入学式で初めてお互いの顔を見て、ちゃんと話すようになったのだって生徒会に入ってから。入ってからも、思い当たるものはなにもないのに……。なのにどうして、こんなにも懐かしさと愛情を抱いているのでしょう……?))

 その頃にはすっかりそんな疑問で頭が一杯となり、でもこちらも既視感同様に、答えはでない。
 そのため同じく解明を諦め過ごしていた――のだけれど、ひょんなことからその理由を把握することとなった。

「ふぅ、これで終わりですね。アンナ様、お疲れ様でした」
「やっと、終わりましたね。お仕事お疲れ様です・・・・・・・・・、ダヴィッド様」

 今思えばそれは、状況と台詞が当時と一致したからなんだと思う。そんな偶然によって僕はかつて自分が経験した全ての出来事を、前世の記憶を思い出したのだった。

((……僕が言語などに既視感があったのは、1度覚えていたから。アンナ様に懐かしさと愛情を覚えるのは、かつて結婚していただったんだ))

 マリルス子爵家のアドリアン、レッドル子爵家のサンドラ。僕達は幼馴染として育ち、やがて恋をして結婚をして、85年の幸せな人生を過ごしたのだ。

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