もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず

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第14話 兄~夜会・待望の時~ ロマニ視点(2)

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「嘘? お前は何を――ああそうか、分かったぞ。お前は生徒会長で、メンバーの中で最もアンナと過ごす機会が多かった。そのため皮を被ったあの姿を、本物だと思い込んでいるんだな?」

 弟の登場に戸惑っていたものの、すぐに理解ができた。
 アンナをずっと見てきたから知ってるぞ! アンナそんな人じゃないだぞっ! アニーは嘘を言っているぞ! と、言いたいんだな。

「ダヴィッド。俺もさっきまでは、お前と同じだった。アンナは素晴らしい人格者だと、信じていた。愛していた。こちらから申し込んで、婚約者になってもらうほどにな」
「………………」
「だがアニー・ザレテリアの言い分を知り、目撃者の存在を知り、そいつはガラリと変わってしまった。それは『皮』だったと確信したんだよ」

 隣に居る、真なる運命の人。そして少しばかり離れた地点で立っている、5人の人間――5人の令嬢を一瞥する。

「彼女達はアニー・ザレテリアへの行動を見て動き出した、勇気ある者達だ。この5人はアンナが呼び出すところを目撃しており、じっくり問うた結果、そのどれもに不自然な点はなかった。更に彼女達はアニーアンナ双方に特別な感情を抱いておらず、完全な中立。したがって強い信憑性が生まれるんだよ」
「私は、見ました」
「わたくしも、目撃しております」
「断言、致します」
「アンナ様がアニー様に迫る姿など、この目で見ております」
「間違いありませんでした」

 コイツらは俺が、侯爵家の力を匂わせ従わせている駒。そのため指示通りに動き、更に会場の雰囲気はこちらへと傾いた。

「……兄さん。中立は間違い。何かしらの形で、その5人が結託している可能性がありますよ。関係がなかったから、証言に不自然がなかったから信じる。それは尚早であり、証拠がないと――」
「ダヴィッドよ。れっきとした証拠が、あるらしいぞ」

 ふん、ちょろいな。
 誘導に乗ってくれて、ありがとうよ。

「『格下のくせに高価のものを持って生意気だ』。そのように言われていたと、今しがた俺は説明しただろう?」
「ええ。口にしていましたね」
「だから、その日もそうしていた。アニー・ザレテリアは先日、とあるパーティーの終了後に――」
「ダイヤがふんだんに使われたネックレスを奪い取られてしまい、それがアンナ様のお屋敷、もしくは部屋のどこかにある。そう言いたいのですよね?」

 ……………………。
 え……?

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