困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず

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第3話 変化と変化 アン視点(3)

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「君に――フェリルーザ家に支援をもらえたら、破産は回避できる……。アン……。俺に、俺達に、手を差し伸べてくれませんか……?」

 無様だと重々承知している――。これからは貴女を幸せにしていくと誓ったのに、申し訳ない――。苦々しくそう続けた後、イブライム様はこんな風に仰った。

「君のフェリルーザ家は、うちなんかと違って・・・・・・・・・・資産が潤沢になる。貴女たちの支援を受けられたら、最悪の事態は阻止できるんだよ……」
「ぉ、ぉぉ! そうだっ、そうだった! うむっ、うむ! 確かにそうだ……!!」
「だから、力を貸して欲しい……。そ、それと……」

 また、おなじ。苦々しい調子を挟み、申し訳なさげにわたしを見つめて来た。

お義父さん・・・・・には、現状を隠したままで……。持ち逃げされて財産が半分以下なことを伏せた状態で、支援をお願いして欲しいんだ……」
「父に、ですか……? なぜなのでしょうか……?」
「…………。俺達は、ずっと酷い真似をしていた……。弱体化したと知ったら、その……。仕返し、をされてしまうからだよ……」

 断る――。勝手にしろ――。そのまま滅べばいい――。これも一種の不祥事、ルールに則り婚約は解消させてもらう――。
 金は出してやるが、今後は服従しろ――。
 そんな返しなら、まだマシ。

 敵対貴族に情報を流し、そちらと手を組む。

 そのやり方を賢く使えばハーニエル家との婚約以上に良い益を生み出せるため、お父様なら必ずやる。そんなことになってしまったら一家全員死亡などもあり得る話で、イブライム様たちが懸念するのは至当だった。

「借りたお金は必ず全額返済させてもらうし、こんなことは二度と繰り返さない。絶対に君を幸せにするから……。お願いします……。俺に、俺達に……。ご慈悲をください……」
「お願い、します……」
「お願いします……」

 隣にいたダニエル様、駆け付けて来たアリックス様も一緒になって、深々と頭を下げてくる。

((……あの日の手のひら返し。アレはこのためのものだったのね))

 思っていた通り、全てが本心ではなく打算による行動。そう分かり切っているので、即答で拒否をする――わけにはいかない。
 この人達の性根は腐りきっていて、この場で拒否をしたら暴挙に出る。十中八九暴走してわたしを人質にし、ウチに身代金を要求することだろう。

((…………はぁ。そうなったら面倒ね))

 だから、

「はいっ、お任せくださいっ。皆様は心を入れ替えてくださり、ずっと優しくしてくださっております。喜んでお力になりますよ」

 と、伝えておく。
 そして同時に、心の中では思案を始めて――

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