困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず

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第6話 急転 父・ケヴィック視点

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「なっ! この無礼者どもが!! ノックも確認もなしに扉を開け――そんなことよりもだっ! エリオッツ!! 貴様の入室はいかなる時も禁止しているはずだろうが!!」

 闖入してきた不届き者たちの群れの、左端。俺は目を剥きながらソイツを指差した。
 あそこにいる男は、平民! 人間としての価値が極めて低い、俺とは正反対に位置する下の下の人種だ! そんな者がこの場に来たら空気が穢れてしまう!

「ルシアン!! お前もなにをやっている!? どうなっているんだ!! 説明をしろ――いやその前にだっ、可及的速やかにコイツを外に出せ!!」

 低俗がどんどんとこの場を――聖域を穢している!
 これ以上浸食されたら、下級の血のせいで上手くいくものも上手くいかなくなってしまうだろうが!! さっさと追い出せ!!

「ルシアン!! 早くしろ!! 早くだ!!」
「……………………」
「っっ、なぜ黙っている!? 早く返事をしろっ! 早く動けっっ! 早く――ええいもういいっ! ヴィッケルっ、アルセル! ソイツらを連れていけ!!」

 怒鳴っている時間が惜しい! 強く舌打ちをしたあと、二人へと指示を出して命じ――

「「………………断ります。その言葉には従えませんよ」」

 ――なっ!? 二人は――いつも従順な二人は――二人、だけじゃない……。
 ニックスも、ダニエイルも、ジョインも……。従おうとはしない。
 そ、それに……。
 それに……!

「お前達……。なにをしているのだ……」

 突然俺の指示を拒否し始めた、9人。ヤツらは全員が恭しく移動をし始め……。
 ルシアン、エリオッツ、アン……。3人の後方へと、まるで王に仕える臣下の如き所作で動いたのだった。

「お、おい……。なんなんだ……? なんなんだこれは……? どうなっている……? なにが起きているんだ……?」
「「「「「「「「「ルシアン次期会長。どうぞ愚者に宣告を」」」」」」」」」
「うむ。そうするとしよう」

 ………………は?
 おかしな称号をつけた9人に対し、ゆっくりと頷いたルシアン。そんな弟は静かに一歩前に出て――。
 俺に対し……。信じられない言葉を……言い放ったのだった……。

「兄上、商会内の状況は様変わりをしているのだよ。……今日を以て、貴様の時代は終わる。これよりケヴィックは会頭の座を含めた全ての地位権利を剥奪され、その全てをこのルシアンが引き継ぐこととなったのだ」







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