困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず

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第11話 約束していたこと アン視点(2)

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 昔は違っていた。幼い頃はちゃんと、自分の夢や自分なりの幸せがあった。
 でも。成長するにつれて、貴族令嬢としての『意識』が多くなった。そしてソレは増え続け、心の全てを満たし、個人的な感情が表れないほどに埋め尽くしてしまっていた。

「あの頃のことを、思い出したみたいですね? ……僕が初めて会った時のアンには夢があって、色々と話してくれましたよね?」
「……はい。たくさんのことを、話しました」

 貴族をしつつもお花屋さんをしたいとか、ケーキ屋さんをしたいとか、ピアニストになって演奏会を開きたいだとか。いろんなお話をした、二人きりで、

「貴族としての自覚、それは本当に立派なことだと思っています。その意思を尊重してもいます。でも、それでも。貴方は、人間でもあるのだから。個人的な感情をまた抱いて欲しかった。そうして抱いたものを、僕が商会やファレルーザ家を支えさせてもらっている間に育て、実現してもらいたかったんです」
「おにい、さま……」
「ですからそうできるように、やっと気付いた時から・・・・・・・・・・動いていたんです」

 お兄様は自嘲混じりに口元を緩め、「この言葉の説明は、3つ目の説明が終わってからしますね」と続け――。
 そのあと、のことです。
 わたしが予想だにしなかった言の葉を、紡がれたのでした。

「最後の理由は、アン、貴方を愛していたから。家族であり女性として、大好きだったから――。大切な人を守りたくて、動いていたのですよ」









※検査などの影響で、ご迷惑をおかけいたしました。明日の投稿分より、文章量を戻させていただきます。

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