今度こそ君と結婚するために生まれ変わったんだ。そう言った人は明日、わたしの妹と結婚します

柚木ゆず

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第4話 2つめのイベント ロドルフ視点(4)

「……アンジェルと結婚したら、マズいんじゃないか……?」

 何があったか知らない。知らないが……。ヌイグルミ相手とはいえ、ここまでできてしまえる人間なんだ。
 カッとなったら、何をするか分からない。

「人相手にだって、してしまう可能性はある……。よな……?」

 ある、と思う。
 だって、めった刺しだぞ!? 心臓に深々と突き刺したままにしてるんだぞ!? ここまで凶暴な性格なら、平気で一線を越えかねない。

「だとしたら……。もし、俺が知らず知らず逆鱗に触れてしまったら……」

 俺が、このヌイグルミみたいになってしまうかもしれない。
 そんな真似をすれば、自分の家族や『家』がどうなってしまうか――。そんなことは頭の中から消え、感情の赴くままに動くに違いない……。

「……………………や、やめだ……。やめよう。無理だっ」

 落ち着いている時? がいくら魅力的でも、抱えている爆弾があまりにも大きすぎる。
 こんなヤツと結婚なんてできない。できるはずがない!

「もしかするとあの幻覚は、コレを知らせるためのものだったのかもしれないな……。危なかった。アレがなかったら、このヌイグルミに気付けずアンジェルと結婚をしてしまってい――!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ………………。
 俺は今ヌイグルミが実在しているかどうかを確かめるため、クローゼットに身体を突っ込んでいた。だから外からは見えない部分まで、見ることができて……。
 恐怖から逃れるために右へと目を逸らしたら、見えてしまったんだ……。もう3つ、同じような有様のヌイグルミがあることに……。

「みっ、みいっ!?」

 しかもっ、一つは首から上がなくって! もう二つは同じくめった刺しにされた上で、鋭利な刃物でそれぞれ縦と横に真っ二つにされていたんだ!!

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!! だ、だめ、だ。アンジェルと、しちゃ、いけない……。や、やめ……。ち、ちちうえに、いそいで――ひぃっ!?」

 廊下から、「アンジェルお嬢様、ご相談がございまして」という使用人の声が聞こえてきたっ!
 アンジェルは近くにいる!!

「みたことが――」((見たことがバレたら、面倒なことになる! い、急いで元に戻さないと!!))

 震える手に鞭打ってヌイグルミをもとの位置に置き、音を立てないように慎重にクローゼットの扉を閉める。どうにか痕跡を消した俺は、足音を立てないようにしながら必死になって椅子へと戻り――

「お待たせいたしました」
「あ、ああ、お帰り。ありがとう」

 ――逃げ出したくなる気持ちを抑えながら、平常心を装ってアンジェルを出迎えた。

「調子はいかがでしょうか?」
「え!? 調子!? なんのだい!?」
「?? 酔い、ですが……?」
「ああ酔いね!! かなり酷いよ。もらってもいいかなっ、お茶を!」
「畏まりました。…………どうぞ、ロドルフ様」
「ありがとう! おおっ、美味しい! アンジェルは上手だね! そういえば聞いたことがなかったけどお茶はよく入れるのかい?」

 こんな風に必死に動揺を抑えて会話を行い、1時間ほど懸命に我慢をしてお開きとなった。なので俺は名残惜しそうにしつつ部屋を去り、廊下に出ると大急ぎで父上と母上のもとを目指したのだった。


 〇〇


「……わたくしが部屋を空けてから、様子が変ですわね。空けている間の物音に触れてみても、とぼけていましたし……。もしかして」


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