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第7話 土曜日 真鈴視点(1)
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「おはようございます。今日はよろしくお願い致します」
「おはよ、水前寺くん。今日はよろしくお願いします」
午前9時ちょうど。私達は駅で待ち合わせをして、水前寺くんが住んでいた場所へと向かう電車に乗った。
「へぇ、電車の中ってこんな感じなんだ。映像で見てたのと雰囲気がちょっと違う」
「……市川さんは、初めてなんですね。体質の影響ですよね?」
「正解」(線路の上を走る乗り物は、厄介なのがいる時が多いんだよ)
色々あるから、なんだろうね。恐ろしい姿をした幽霊が乗っている場合が多くって、幼い頃にホームでとんでもないのを目撃してから、そういう乗り物には近づかないようにしていたのです。
「今日はね、そういうのを理解した上で乗るって決めてる。私が望んでいるのです」
この人って、すぐ申し訳なく思ってくれちゃう。罪悪感が出てくる前に首を振っておいた。
「それにほら、水前寺くんもヤバそうな声は聞こえてないでしょ? この電車には滅茶苦茶危険なのはいなくって、平気だよ」
「そ、そうですね。よくいるタイプはいません」
よくいる。やっぱり、今でも多いんだ。
出会えない出会いに感謝です。
「私のこと心配してくれてるけど、声が聞こえるのも辛いでしょ? 電車は混んでてあんまり動けないし、それなりに数もいるし」
1、2、3体。この車両の中にも、ちょっとだけ化け物味があるのがいる。
近くで色々聞こえてくるのは、きつそう。
「そうですね、休みなく耳に入ってくるので疲れます。そこで電車などに乗る時は、音楽を聴くようにしているんですよ」
「なるほどね。ナイスアイディア」
大音量で流しておけば、周りで何を言ってても聞こえない。のんびり乗れるね。
「そういう時って、どんな曲を聴いてるの? 市川くんがどんなのを聴くのか興味あるな」
ベンチでアイスを食べた時に知った新情報、好きなテレビ番組は時代劇と落語と相撲。おじいちゃんと同じ趣味をしている彼が、何を選んでるのか気になる。
「昭和の歌謡曲です。この曲が一番好きなのですが、御存じですか?」
「…………ご存じではありませんねー」
しぶい声の人が、しぶーい曲調でしぶく歌ってた。
タイトルを聞いてもピンとこなくって、帰ってお母さんかお父さんに聞いてみようと思いました。
「この曲は、故郷への思いを歌った歌なんです。……目を瞑ると、青森の光景が浮かんできませんか?」
「う、うーん。どうかなぁ?」
「僕には、津軽平野が見えます。素晴らしい歌詞、メロディー、この土地出身の歌手、以上の三要素が揃って生まれた奇跡の一曲だと思っています。この曲に出会えずに生きていたと思うと、恐ろしくて仕方がありませんよ」
新情報その2、この人は趣味の話題になるとお喋りが加速する。
普段落ち着いてるからめっちゃ意外で、初めてこの状態になった時はビックリした。
「僕自身カラオケでもよく歌うのですが、足元にも及びません。十年――いいえ、二十年三十年、一生かかっても納得できる仕上がりにはならないでしょうね。それほどまでに、奥深い曲なんです」
「そ、そうなんだ」
「スルメ、ありますよね? まさにアレです。噛めば噛むほど味が出てきて、ますます好きになってしまう。この曲を教えてくれた祖母には心から感謝をしていて――あ、すみません。つい喋りすぎてしまいました」
電車が止まって到着に気付き、水前寺くんが頬を掻いた。
「んーん、楽しそうな水前寺くんを見れたからいいよ。さ、行こ」
「は、はいっ」
電車を降りて改札口を潜って駅から出て、水前寺くんの案内が始まる。
この街にいる幽霊は、2体。どんな幽霊がいるんだろう……?
「おはよ、水前寺くん。今日はよろしくお願いします」
午前9時ちょうど。私達は駅で待ち合わせをして、水前寺くんが住んでいた場所へと向かう電車に乗った。
「へぇ、電車の中ってこんな感じなんだ。映像で見てたのと雰囲気がちょっと違う」
「……市川さんは、初めてなんですね。体質の影響ですよね?」
「正解」(線路の上を走る乗り物は、厄介なのがいる時が多いんだよ)
色々あるから、なんだろうね。恐ろしい姿をした幽霊が乗っている場合が多くって、幼い頃にホームでとんでもないのを目撃してから、そういう乗り物には近づかないようにしていたのです。
「今日はね、そういうのを理解した上で乗るって決めてる。私が望んでいるのです」
この人って、すぐ申し訳なく思ってくれちゃう。罪悪感が出てくる前に首を振っておいた。
「それにほら、水前寺くんもヤバそうな声は聞こえてないでしょ? この電車には滅茶苦茶危険なのはいなくって、平気だよ」
「そ、そうですね。よくいるタイプはいません」
よくいる。やっぱり、今でも多いんだ。
出会えない出会いに感謝です。
「私のこと心配してくれてるけど、声が聞こえるのも辛いでしょ? 電車は混んでてあんまり動けないし、それなりに数もいるし」
1、2、3体。この車両の中にも、ちょっとだけ化け物味があるのがいる。
近くで色々聞こえてくるのは、きつそう。
「そうですね、休みなく耳に入ってくるので疲れます。そこで電車などに乗る時は、音楽を聴くようにしているんですよ」
「なるほどね。ナイスアイディア」
大音量で流しておけば、周りで何を言ってても聞こえない。のんびり乗れるね。
「そういう時って、どんな曲を聴いてるの? 市川くんがどんなのを聴くのか興味あるな」
ベンチでアイスを食べた時に知った新情報、好きなテレビ番組は時代劇と落語と相撲。おじいちゃんと同じ趣味をしている彼が、何を選んでるのか気になる。
「昭和の歌謡曲です。この曲が一番好きなのですが、御存じですか?」
「…………ご存じではありませんねー」
しぶい声の人が、しぶーい曲調でしぶく歌ってた。
タイトルを聞いてもピンとこなくって、帰ってお母さんかお父さんに聞いてみようと思いました。
「この曲は、故郷への思いを歌った歌なんです。……目を瞑ると、青森の光景が浮かんできませんか?」
「う、うーん。どうかなぁ?」
「僕には、津軽平野が見えます。素晴らしい歌詞、メロディー、この土地出身の歌手、以上の三要素が揃って生まれた奇跡の一曲だと思っています。この曲に出会えずに生きていたと思うと、恐ろしくて仕方がありませんよ」
新情報その2、この人は趣味の話題になるとお喋りが加速する。
普段落ち着いてるからめっちゃ意外で、初めてこの状態になった時はビックリした。
「僕自身カラオケでもよく歌うのですが、足元にも及びません。十年――いいえ、二十年三十年、一生かかっても納得できる仕上がりにはならないでしょうね。それほどまでに、奥深い曲なんです」
「そ、そうなんだ」
「スルメ、ありますよね? まさにアレです。噛めば噛むほど味が出てきて、ますます好きになってしまう。この曲を教えてくれた祖母には心から感謝をしていて――あ、すみません。つい喋りすぎてしまいました」
電車が止まって到着に気付き、水前寺くんが頬を掻いた。
「んーん、楽しそうな水前寺くんを見れたからいいよ。さ、行こ」
「は、はいっ」
電車を降りて改札口を潜って駅から出て、水前寺くんの案内が始まる。
この街にいる幽霊は、2体。どんな幽霊がいるんだろう……?
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