婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

文字の大きさ
15 / 74

第7話 おねだりは予想外?  エメリック視点(2)

しおりを挟む
「サーフィナ。それもいいけど、こっちが更に君に似合うんじゃないかな?」

 平静を装って宝石達を見回し、エメラルドを使った指輪――140万のものを指差す。
 この場で取る行動、それは誘導。有言不実行ほど、情けないものはない。なので、彼女には申し訳ないけれど……。言葉と態度を巧みに使って、購入する品を変える。

「ルビーの赤もいいけど、今の君にはエメラルドのグリーンが良く似合ってる。オーナー、値は落ちるものの、こちらも自慢の一品なのだろう?」
「もちろんでございます! エメラルドは当店でも高品質なものを1・05カラット、ダイヤモンドは合計3・88カラットをふんだんに使用しております。プリンセスカットを施したダイヤモンドをエメラルドの周りに配置しておりまして、非常に人気の高い一品となっておりますよ」

 よし。いい具合に、この指輪を絶賛した。
 これなら、誘導をしていると悟られないだろう。

「サーフィナ、今回はこっちにしないかい? そちらは、次の機会にするのはどうかな?」

 最近散財してしまっているから、そうだな……。近々、『記念日』もあるから……。半年から8か月後くらいには、問題なく買えるようになる。
 だから、エメラルドの指輪でいいよね? ねっ?

「…………………………………………」(次は恐らく、半年から8か月後……。それまで待てませんわね)
「サーフィナ? 今、何か言ったかい?」
「いいえ、何でもありませんわ」

 彼女は品よく首を左右に振って、両方をじっと見比べる。そして――

「エメリック様、すみません。折角ですが、わたくしはこちらに惹かれております」

 肩を窄めて申し訳なさげに、ルビーの指輪を見つめた。

「ぇ。僕から見たら、エメラルドの指輪こっちがとても似合ってると思うよ? ど、どうして、ルビーの指輪そっちがいいのかな?」
「……やはり……。ルビーだから。七月の誕生石だから、です」

 申し訳なさげにしていた彼女の頬が、ほんのりピンク色に染まる。

「七月は、エメリック様のお誕生月。だからなのか、この大きなルビーはいつも頼もしいエメリック様のように思えて……。ずっと身につけておきたいな、これがあえば離れている時も一緒にいられるな。そう、思っています……っ」
「っっ。サーフィナ……っ」
「それに、だからなのかもしれません。違う指輪を選んでしまったら、エメリック様との御縁も切れてしまいそうな気がしていまして……。こちらしか、考えられないんです……っ」
「っっっ。サーフィナ……っっ!」

 君は、そんな風に思ってくれていたのか……っ。
 嬉しいよ! 幸せだ!
 気が付くと思わず、彼女を強く抱き締めていた。

「お奨めしてくださっているのに、ごめんなさい。こちらで、構いませんか……?」
「当たり前だよ! サーフィナ、オーナーもだっ。少々待っていてくれ」

 暫くは、これ以上は渡せない。父さんと母さんに、そう言われた。
 でも、それがどうした!!

 愛しのサーフィナが、こんなことを言ってくれているんだ!

 なんとしても、差額を確保する。
 …………僕は不可能を可能にするため、彼女にルビーの指輪分身をプレゼントするため、父さん達がいる王の間へと向かった――。

しおりを挟む
感想 366

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

処理中です...