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第9話(1)
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「こんにちは。2日ぶりですね、リルさん」
「こんにちは。2日ぶりですね、アルフレッドさん」
アルフレッドにエスコートされて馬車から降りて、あたし達はプッと噴き出す。
こうやってふざけながら笑い合うのって、本当に幸せ。何度やっても、体の中が嬉しさで一杯になっちゃうよね。
「ちょっと早めに着いたから、ランチのセッティングはしてある。こちらへどうぞ」
「何から何まで、ありがとう。今日はあたしも『いいもの』を用意してるから、楽しみにしててね」
持参したバスケットを軽くあげて、他愛もない話をしながら移動。静かで清々しい空気の中を進んで、青色のピクニックシートに腰を下ろした。
「あたし達の声以外は、ぜんぶ鳥の鳴き声。やっぱり、貸しきり状態だね」
「あの時以外は、ビックリするくらい人気がないからなあ。6月の光景が、嘘みたいに感じるよな」
アオプ湖。面積はおよそ0・9平方キロメートル。景色、悪い。水質、非常に悪い。以上の理由から、とても不人気な湖となっております。
だけどこの湖には、『6月の奇跡』――6月にここでデートと告白をした男女は生涯結ばれる、という伝説があるため、その時期は大賑わい。朝から晩まで国内外から来たカップルでごった返すという、非常に人口の落差が激しいスポットなのです。
「俺達も、6月以外に来たコトはなかったよな。だから新鮮」
「意外と、これはこれでありだよね。……すごく濁ってるけど」
「食欲がなくなるレベルで、濁ってるな……。…………背を向けて、湖畔の雰囲気と風をおかずにしようか」
「そうだね。そうしよ」
あたし達は揃って背を向けて横並びになって、アルフレッドがバスケットからお料理を出してくれる。
今日のメニューは…………っ! オムレツサンドとミートボールとポテトサラダっ。どれもあたしの好物だ(ちなみに一昨日会ったミーラには、いつも『お子ちゃま』と小ばかにされていました)。
「それの何が悪い! 好きなものは好きなのだっ!」
「……? 急にどした?」
「ううんなんでもない。作ってくれて、ありがとう。大事に頂くね」
手を拭いて、まずはオムレツサンドをパクリ。口に含むとチーズと卵とケチャップの味がフワッと広がって、あとからレタスの爽やかさとパンのあっさりさがやってくる。そしてそれらが合わさって形容しがたい絶妙な一体感を生み出し、口の中はあっという間に楽園になっちゃう。
だから、パク、パクパク、パクパクパクパクパク。食べ始めると止まらなくなって、一つを一気に食べてしまった。
「アルフレッドの手料理だし、10ヵ月ぶりだし、隣にいてくれるのはアルフレッド。そしたら、こうなっちゃうよね」
「俺もリルが一緒だから、いつもより遥かに食が進む。ほら、もう一つどうぞ」
「ん。ありがとう。あたしが言うのは変かもだけど、アルフレッドもも一つどうぞ」
あたし達はお互いに渡し合って、もう一度パクパク。今度は冷めてもジューシーなミートボール、それとジャガイモとマヨネーズとチーズがコラボレーションした絶品のポテトサラダを途中で挟んで、そうしながらアルフレッドとお喋りをする。
そんな時間が、楽しくない、はずがない。
体感だと、ほんの3~4分くらい。笑顔と笑い声が絶えない時間はあっという間に過ぎ去り、驚くくらい早くランチは終了となったのでした。
「いつもより量を多めにしてたんだけど、余裕だったな。リルは、足りた?」
「うん、お腹いっぱいになったよ。……でも、デザートは別腹。ここからはあたしの手作りを楽しんでもらうよっ」
ニヤリ。悪戯っぽく口角を吊り上げたあと、傍に置いていたバスケットをアルフレッドの前に置いた。
さあて、問題です。この中には、何が入っているでしょうかっ?
「こんにちは。2日ぶりですね、アルフレッドさん」
アルフレッドにエスコートされて馬車から降りて、あたし達はプッと噴き出す。
こうやってふざけながら笑い合うのって、本当に幸せ。何度やっても、体の中が嬉しさで一杯になっちゃうよね。
「ちょっと早めに着いたから、ランチのセッティングはしてある。こちらへどうぞ」
「何から何まで、ありがとう。今日はあたしも『いいもの』を用意してるから、楽しみにしててね」
持参したバスケットを軽くあげて、他愛もない話をしながら移動。静かで清々しい空気の中を進んで、青色のピクニックシートに腰を下ろした。
「あたし達の声以外は、ぜんぶ鳥の鳴き声。やっぱり、貸しきり状態だね」
「あの時以外は、ビックリするくらい人気がないからなあ。6月の光景が、嘘みたいに感じるよな」
アオプ湖。面積はおよそ0・9平方キロメートル。景色、悪い。水質、非常に悪い。以上の理由から、とても不人気な湖となっております。
だけどこの湖には、『6月の奇跡』――6月にここでデートと告白をした男女は生涯結ばれる、という伝説があるため、その時期は大賑わい。朝から晩まで国内外から来たカップルでごった返すという、非常に人口の落差が激しいスポットなのです。
「俺達も、6月以外に来たコトはなかったよな。だから新鮮」
「意外と、これはこれでありだよね。……すごく濁ってるけど」
「食欲がなくなるレベルで、濁ってるな……。…………背を向けて、湖畔の雰囲気と風をおかずにしようか」
「そうだね。そうしよ」
あたし達は揃って背を向けて横並びになって、アルフレッドがバスケットからお料理を出してくれる。
今日のメニューは…………っ! オムレツサンドとミートボールとポテトサラダっ。どれもあたしの好物だ(ちなみに一昨日会ったミーラには、いつも『お子ちゃま』と小ばかにされていました)。
「それの何が悪い! 好きなものは好きなのだっ!」
「……? 急にどした?」
「ううんなんでもない。作ってくれて、ありがとう。大事に頂くね」
手を拭いて、まずはオムレツサンドをパクリ。口に含むとチーズと卵とケチャップの味がフワッと広がって、あとからレタスの爽やかさとパンのあっさりさがやってくる。そしてそれらが合わさって形容しがたい絶妙な一体感を生み出し、口の中はあっという間に楽園になっちゃう。
だから、パク、パクパク、パクパクパクパクパク。食べ始めると止まらなくなって、一つを一気に食べてしまった。
「アルフレッドの手料理だし、10ヵ月ぶりだし、隣にいてくれるのはアルフレッド。そしたら、こうなっちゃうよね」
「俺もリルが一緒だから、いつもより遥かに食が進む。ほら、もう一つどうぞ」
「ん。ありがとう。あたしが言うのは変かもだけど、アルフレッドもも一つどうぞ」
あたし達はお互いに渡し合って、もう一度パクパク。今度は冷めてもジューシーなミートボール、それとジャガイモとマヨネーズとチーズがコラボレーションした絶品のポテトサラダを途中で挟んで、そうしながらアルフレッドとお喋りをする。
そんな時間が、楽しくない、はずがない。
体感だと、ほんの3~4分くらい。笑顔と笑い声が絶えない時間はあっという間に過ぎ去り、驚くくらい早くランチは終了となったのでした。
「いつもより量を多めにしてたんだけど、余裕だったな。リルは、足りた?」
「うん、お腹いっぱいになったよ。……でも、デザートは別腹。ここからはあたしの手作りを楽しんでもらうよっ」
ニヤリ。悪戯っぽく口角を吊り上げたあと、傍に置いていたバスケットをアルフレッドの前に置いた。
さあて、問題です。この中には、何が入っているでしょうかっ?
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