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第23話 アルフレッド(14歳)が気付いた日 アルフレッド視点(3)
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「アルフレッド。恋心は、非常に厄介な存在だ」
部屋の前にいた、父さん。父さんは引き続き微苦笑を浮かべて、はぁと短く息を吐く。
「隠そうとしても、上手く隠し切れない。それは自身が『認識』していようがしていまいが、関係ないんだ。違和感が、どうしても生まれてしまうのだよ」
「違和感……。確かに、そうだったね」
ムズムズしたりドキンとした時は挙動がヘンテコになって、リルが首を傾げていた。父さんの言う通りだ。
「かくいうわたしも、同じ経験をした。幼馴染との時間、エルミの気持ちを考え、自らの気持ちを封印する事にした。だがその結果、エルミに多々心配をさせてしまう羽目になった」
「……それって……。違和感が、原因?」
「そうだな。隠そう抑え込もうとした結果、無意識的に言動が不自然になっていた。そんな事がエルミに勘違いをもたらし、悩ませてしまう事になったのだ」
ダイルの様子が変――。
もしかして、アタシと過ごすのは嫌になった?――。
嫌々一緒にいてくれるの?――。
そう感じるようになって、毎日考えるようになって。やがて母さんは勇気を振り絞って、『遠慮なく本音を教えて』と訴えてきたそう。
「後にも先にも、その時ほど己の選択を後悔した日はなかった。アルフレッド、お前はまだ完全にピンとはこないだろうがな。自分のせいで好きな人が悩み苦しむのは、本当に辛いのだよ」
「……………………」
父さんの言う通りで、経験のない俺は正確に把握できはしない。だけど父さんの声と表情を聞いて見ていたら、その大きさを推測できた。
「……お前達とわたし達はそっくりだが、わたしの駄目な部分はそっくりであって欲しくはない。お前とリル君には、そんな思いをして欲しくはないんだよ」
「父さん……」
「それに、きっと――いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」
父さんはそのあと小さく何かを呟いて、コホンと咳ばらい。調子を整えて、話を再開させる。
「幼馴染なら尚更機微に鋭く、もうじき違和を感じ取ってしまうだろう。あの子のことだから、色々と考えてしまうだろう」
「………………」
「アルフレッド。相手を想うからこそ、踏み出さなければならない時もあるのだよ。それにな――」
ここで父さんの表情が、一変。
「――お前はなぜ、忘れている? 告白を成功させれば、何も問題はないじゃないか」
にこやかに、口元を緩めた。
「告白を成功させれば、現状維持どころか更なる幸せな時が訪れる。そうだろう?」
「そ、それはそうだけど……。俺は、幼馴染だし――」
「幼馴染だからこそ、相手はお前の長所を知り尽くしてくれている。むしろその関係は、プラスじゃないか」
父さんは自信を持って言い切り、俺の胸元を指差す。
「アルフレッド。お前のそこには、立派なものが宿っている。お前がこれまで『やってきた事』を信じ、想いをぶつかってみろ。そうすればきっと、良い方向へ進むさ」
「…………。父さん……」
「とはいえ、不安はまだまだあるだろう。そこでおまけとして、もう一つアドバイスだ。わたしは当時、援軍となるもの――告白の言葉を用意し、場所の力も借りて成功させた。お前もやってみるといい」
父さんは片目を瞑って珍しく子供っぽく笑い、パチンと指を鳴らす。
「うむ。その顔は、決意をした顔だな。だが、腹が減っては何とやらだ。まずは食事をして、英気を養っておくといい」
「…………うん、そうだね。腹ごしらえをして、色々と準備をするよ」
ありがとう、父さん――。その気持ちを心の中と声の両方で伝え、まずはエネルギーを補給。その後は再び部屋に籠り、その日に向けて動き出したのだった。
部屋の前にいた、父さん。父さんは引き続き微苦笑を浮かべて、はぁと短く息を吐く。
「隠そうとしても、上手く隠し切れない。それは自身が『認識』していようがしていまいが、関係ないんだ。違和感が、どうしても生まれてしまうのだよ」
「違和感……。確かに、そうだったね」
ムズムズしたりドキンとした時は挙動がヘンテコになって、リルが首を傾げていた。父さんの言う通りだ。
「かくいうわたしも、同じ経験をした。幼馴染との時間、エルミの気持ちを考え、自らの気持ちを封印する事にした。だがその結果、エルミに多々心配をさせてしまう羽目になった」
「……それって……。違和感が、原因?」
「そうだな。隠そう抑え込もうとした結果、無意識的に言動が不自然になっていた。そんな事がエルミに勘違いをもたらし、悩ませてしまう事になったのだ」
ダイルの様子が変――。
もしかして、アタシと過ごすのは嫌になった?――。
嫌々一緒にいてくれるの?――。
そう感じるようになって、毎日考えるようになって。やがて母さんは勇気を振り絞って、『遠慮なく本音を教えて』と訴えてきたそう。
「後にも先にも、その時ほど己の選択を後悔した日はなかった。アルフレッド、お前はまだ完全にピンとはこないだろうがな。自分のせいで好きな人が悩み苦しむのは、本当に辛いのだよ」
「……………………」
父さんの言う通りで、経験のない俺は正確に把握できはしない。だけど父さんの声と表情を聞いて見ていたら、その大きさを推測できた。
「……お前達とわたし達はそっくりだが、わたしの駄目な部分はそっくりであって欲しくはない。お前とリル君には、そんな思いをして欲しくはないんだよ」
「父さん……」
「それに、きっと――いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」
父さんはそのあと小さく何かを呟いて、コホンと咳ばらい。調子を整えて、話を再開させる。
「幼馴染なら尚更機微に鋭く、もうじき違和を感じ取ってしまうだろう。あの子のことだから、色々と考えてしまうだろう」
「………………」
「アルフレッド。相手を想うからこそ、踏み出さなければならない時もあるのだよ。それにな――」
ここで父さんの表情が、一変。
「――お前はなぜ、忘れている? 告白を成功させれば、何も問題はないじゃないか」
にこやかに、口元を緩めた。
「告白を成功させれば、現状維持どころか更なる幸せな時が訪れる。そうだろう?」
「そ、それはそうだけど……。俺は、幼馴染だし――」
「幼馴染だからこそ、相手はお前の長所を知り尽くしてくれている。むしろその関係は、プラスじゃないか」
父さんは自信を持って言い切り、俺の胸元を指差す。
「アルフレッド。お前のそこには、立派なものが宿っている。お前がこれまで『やってきた事』を信じ、想いをぶつかってみろ。そうすればきっと、良い方向へ進むさ」
「…………。父さん……」
「とはいえ、不安はまだまだあるだろう。そこでおまけとして、もう一つアドバイスだ。わたしは当時、援軍となるもの――告白の言葉を用意し、場所の力も借りて成功させた。お前もやってみるといい」
父さんは片目を瞑って珍しく子供っぽく笑い、パチンと指を鳴らす。
「うむ。その顔は、決意をした顔だな。だが、腹が減っては何とやらだ。まずは食事をして、英気を養っておくといい」
「…………うん、そうだね。腹ごしらえをして、色々と準備をするよ」
ありがとう、父さん――。その気持ちを心の中と声の両方で伝え、まずはエネルギーを補給。その後は再び部屋に籠り、その日に向けて動き出したのだった。
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