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第10話 異変と異変 俯瞰視点(1)
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「………………」
「………………」
ジスランが倒れた。その報告を受け慌ててバルコニーに駆け寄ったルイゾンとネリーは、揃って言葉を失っていました。
なぜならば、
「眩暈がぁああ!! 眩暈なんてもんじゃないぃぃぃ!! ずっとグルグル回ってうるうううう!! 誰かなんとかしてくれえええええええええええええ!!」
視界が常に360度回転している。そんなあまりにも異様な様子を、のたうち回りながら訴えているジスランが居たからです。
「いつまでも目が回ってるみたいっ、なんだ!! 医者っ、医者を呼べええ!! よべえええええええええええええええええ!」
「しょつ、承知しました!! おいっ、おいお前達!!」
ひとまずロムレード家の専属医を呼び、同時にノブノルト家にも緊急の連絡を入れさせる。ルイゾンは最善の策を取り、やがてジスランが求めていた名医が到着しますが――
「……申し訳ございません。わたくしにできることはありませぬ……」
――ジスランの願いは叶わず、多少の改善すらないどころか原因の手がかりすら掴めませんでした。
「この役立たずめ!! もういい!! ウチの医者をよべえええええええええええええええええええ!! 早くよべえええええええええ!!」
すでにルイゾンが早馬を走らせており、1日半後にノブノルト伯爵家の専属医が到着。急いで診始めますが――
「……わたくしにも……。できることは、ございません……」
――結果は同じ。ジスランにとってプラスになることは、一切ありませんでした。
「じ、ジスラン様……」
「もっと大きなっ、王族御用達の医者たちならなんとかできるはず!! とにかく優秀な人間をできる限りよべええええええええええええええええええ!!」
事情が事情。特別に該当する人間に診てもらうことになりましたが、それでも結果は変わらない。
あまりに異様な――これまで誰も訴えたケースがない症状なため手の打ちようがなく、前回の症状のように、緩和することさえもできませんでした。
「なぜだぁあああ!? なんなんだよおおおおおおおお!! なにが起きてるんだぁあああああああああああああ!?」
((お前が望んだ結果だよ。自業自得なのさ))
とある目的を果たすために来訪していて、病室のベッドで頭を抱える様子を見ていた不可視の存在――神マロルトが、ジスランを指差しながら鼻で笑いました。
『今思えば、原因不明の病にかかってよかったな』
『…………改めて思う。よかったな、と』
『謎の眩暈だよ。あの一件がなければ、大切な人の存在を見落とす羽目になっていた。あれは不幸な出来事ではない。幸福の出来事だよ』
糸が切れ、ジスランに与えられていた『治す』効果がウスターシュへと移動した。本来は、元の状態に戻るだけのはずでした。
しかしながら事あるごとに、眩暈に感謝した。何度も何度も心の奥底から眩暈を歓迎していたため、糸を通じて、エルミーヌに付与されていた『願いを叶える力』の一部と反応してしまっていました。
――眩暈に感謝している――。
――眩暈を求めている――。
それによって現在抑制しているものを押しのけて症状が出せるように『眩暈』の力は水面下で大きくなっており、神の力がなくなったことで、期待に応えて強力になった『眩暈』が現れてしまったのです。
「うわああああああああああああああああああああああ!! なおれええ!! なおれええええええええ!! なおれえええええええええええええ!!」
((お前は自らチャンスを捨てたんだ。二度目はもうない。そのまま一生苦しめられるといいさ、ついうっかり自分が育ててしまった眩暈にね))
ヒラヒラと手を振り、ジスランに背を向ける。ひとつめの用事を終えたマロルトは、今度はロムレード子爵家へと移動して――
「………………」
ジスランが倒れた。その報告を受け慌ててバルコニーに駆け寄ったルイゾンとネリーは、揃って言葉を失っていました。
なぜならば、
「眩暈がぁああ!! 眩暈なんてもんじゃないぃぃぃ!! ずっとグルグル回ってうるうううう!! 誰かなんとかしてくれえええええええええええええ!!」
視界が常に360度回転している。そんなあまりにも異様な様子を、のたうち回りながら訴えているジスランが居たからです。
「いつまでも目が回ってるみたいっ、なんだ!! 医者っ、医者を呼べええ!! よべえええええええええええええええええ!」
「しょつ、承知しました!! おいっ、おいお前達!!」
ひとまずロムレード家の専属医を呼び、同時にノブノルト家にも緊急の連絡を入れさせる。ルイゾンは最善の策を取り、やがてジスランが求めていた名医が到着しますが――
「……申し訳ございません。わたくしにできることはありませぬ……」
――ジスランの願いは叶わず、多少の改善すらないどころか原因の手がかりすら掴めませんでした。
「この役立たずめ!! もういい!! ウチの医者をよべえええええええええええええええええええ!! 早くよべえええええええええ!!」
すでにルイゾンが早馬を走らせており、1日半後にノブノルト伯爵家の専属医が到着。急いで診始めますが――
「……わたくしにも……。できることは、ございません……」
――結果は同じ。ジスランにとってプラスになることは、一切ありませんでした。
「じ、ジスラン様……」
「もっと大きなっ、王族御用達の医者たちならなんとかできるはず!! とにかく優秀な人間をできる限りよべええええええええええええええええええ!!」
事情が事情。特別に該当する人間に診てもらうことになりましたが、それでも結果は変わらない。
あまりに異様な――これまで誰も訴えたケースがない症状なため手の打ちようがなく、前回の症状のように、緩和することさえもできませんでした。
「なぜだぁあああ!? なんなんだよおおおおおおおお!! なにが起きてるんだぁあああああああああああああ!?」
((お前が望んだ結果だよ。自業自得なのさ))
とある目的を果たすために来訪していて、病室のベッドで頭を抱える様子を見ていた不可視の存在――神マロルトが、ジスランを指差しながら鼻で笑いました。
『今思えば、原因不明の病にかかってよかったな』
『…………改めて思う。よかったな、と』
『謎の眩暈だよ。あの一件がなければ、大切な人の存在を見落とす羽目になっていた。あれは不幸な出来事ではない。幸福の出来事だよ』
糸が切れ、ジスランに与えられていた『治す』効果がウスターシュへと移動した。本来は、元の状態に戻るだけのはずでした。
しかしながら事あるごとに、眩暈に感謝した。何度も何度も心の奥底から眩暈を歓迎していたため、糸を通じて、エルミーヌに付与されていた『願いを叶える力』の一部と反応してしまっていました。
――眩暈に感謝している――。
――眩暈を求めている――。
それによって現在抑制しているものを押しのけて症状が出せるように『眩暈』の力は水面下で大きくなっており、神の力がなくなったことで、期待に応えて強力になった『眩暈』が現れてしまったのです。
「うわああああああああああああああああああああああ!! なおれええ!! なおれええええええええ!! なおれえええええええええええええ!!」
((お前は自らチャンスを捨てたんだ。二度目はもうない。そのまま一生苦しめられるといいさ、ついうっかり自分が育ててしまった眩暈にね))
ヒラヒラと手を振り、ジスランに背を向ける。ひとつめの用事を終えたマロルトは、今度はロムレード子爵家へと移動して――
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