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第1話 謎の妹ルナ イナヤ視点(2)
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「時折『用事がある』と言っていたのも、嘘でした。ルナ様とお話ししたいがために吐いたものでございます。申し訳ございませんでした……」
「そ、そちらは構いません。それよりもマティウス様、もう一回確認させてください。ルナという人間は食事会を行った時から存在していて、今も貴方様のお隣で立っているのですね?」
「? は、はい。あの時一緒に食事をさせていただきましたし、ほら。ここにいらっしゃるじゃないですか」
居る、そうです。しかもそのルナという謎の妹は、『お姉様もお父様もお母様も、どうしてしまったのでしょうか……?』と首を傾げているみたいでした……。
「い、いるって……。ば、バカな……。ありえん! この通りだ! どこにいるというのです!?」
お父様が『ルナ』がいる場所へと歩いてみましたが、誰にもぶつかることなく素通りしました。
そちらは、居ない、の証左になります。
「……………………なんてことだ……」
「「「?」」」
「いま…………ルナの身体を、すり抜けました……。僕は、ほらこの通り! ちゃんと触れられているのにっ! 卿のお身体は何もないかのように通り抜けました!」
戸惑っているのはマティウス様も同じだったようでして、顔を真っ青にしながら『ルナ』が居るという場所とお父様を何度も見比べました。
「……マティウスさん、わたくしも触れられませんわ」
「わたしも、です。触れることも、見ることもできません」
わたし達家族、だけではありませんでした。マティウス様の提案でウチの人間5人に来てもらいましたが、全員同じ結果となりました。
「……ルナ様に、触れることも見ることもできないだなんて……。どうなっているのですか……!?」
「…………あなた……。どうしましょうか……?」
「…………このまま続けていても、進展はしないだろう……。今日のところはおかえりいただこう」
今回の表情や声調、前回前々回の目撃情報を鑑みると、マティウス様が嘘を吐いているとは思えません。しかしながら、ルナという三人目の子どもが存在しているはずがありません。
このままでは平行線を辿るだけで、どちらも証明できません。ですので一旦間を置き、両家の都合がつく最短日である翌々日に――今度はマティウス様のご家族も御一緒の上で、改めて意見を交わし合うことになりました。
「……裏切っていた僕に、こんな発言をする資格はないのでしょうが……。ひどく不安がっております。ルナ様をよろしくお願い致します」
「「「は、はぁ……」」」
そうお返事するしか、ありませんでした。わたし達は何度も何度も『ルナ』を案じるマティウス様をお見送りして、こうして不思議に満ちた時間は一旦終わりとなったのでした。
((…………妹、ルナ……。なんなのでしょうか……))
「そ、そちらは構いません。それよりもマティウス様、もう一回確認させてください。ルナという人間は食事会を行った時から存在していて、今も貴方様のお隣で立っているのですね?」
「? は、はい。あの時一緒に食事をさせていただきましたし、ほら。ここにいらっしゃるじゃないですか」
居る、そうです。しかもそのルナという謎の妹は、『お姉様もお父様もお母様も、どうしてしまったのでしょうか……?』と首を傾げているみたいでした……。
「い、いるって……。ば、バカな……。ありえん! この通りだ! どこにいるというのです!?」
お父様が『ルナ』がいる場所へと歩いてみましたが、誰にもぶつかることなく素通りしました。
そちらは、居ない、の証左になります。
「……………………なんてことだ……」
「「「?」」」
「いま…………ルナの身体を、すり抜けました……。僕は、ほらこの通り! ちゃんと触れられているのにっ! 卿のお身体は何もないかのように通り抜けました!」
戸惑っているのはマティウス様も同じだったようでして、顔を真っ青にしながら『ルナ』が居るという場所とお父様を何度も見比べました。
「……マティウスさん、わたくしも触れられませんわ」
「わたしも、です。触れることも、見ることもできません」
わたし達家族、だけではありませんでした。マティウス様の提案でウチの人間5人に来てもらいましたが、全員同じ結果となりました。
「……ルナ様に、触れることも見ることもできないだなんて……。どうなっているのですか……!?」
「…………あなた……。どうしましょうか……?」
「…………このまま続けていても、進展はしないだろう……。今日のところはおかえりいただこう」
今回の表情や声調、前回前々回の目撃情報を鑑みると、マティウス様が嘘を吐いているとは思えません。しかしながら、ルナという三人目の子どもが存在しているはずがありません。
このままでは平行線を辿るだけで、どちらも証明できません。ですので一旦間を置き、両家の都合がつく最短日である翌々日に――今度はマティウス様のご家族も御一緒の上で、改めて意見を交わし合うことになりました。
「……裏切っていた僕に、こんな発言をする資格はないのでしょうが……。ひどく不安がっております。ルナ様をよろしくお願い致します」
「「「は、はぁ……」」」
そうお返事するしか、ありませんでした。わたし達は何度も何度も『ルナ』を案じるマティウス様をお見送りして、こうして不思議に満ちた時間は一旦終わりとなったのでした。
((…………妹、ルナ……。なんなのでしょうか……))
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