婚約破棄をされたら、お兄様に溺愛されていたと気付きました

柚木ゆず

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3話(7)

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「いらっしゃいませ。本日は、女性とご一緒なのですね」
「ええ、そうなんですよ。こちらのお店のコーヒーはとても気に入っていて、彼女にも味わってもらいたかったんです」
「いつも御贔屓にしてくださり、ありがとうございます。でしたら、オリジナルブレンドをお二つ、でございますね?」
「ああいや、違うんです。さっきのは嘘で、今日はお前に用事があってきたんだよ」

 眼鏡をかけて髪を立てていたお兄様は、隠し持っていたナイフを男性の喉に突きつけました。
 同じく変装をした私が今いるのは、『フォルトゥ』という小さなカフェ。オーカス・ウルデさんはここを隠れ蓑としていて、お兄様は情報を得るため常連客となっていたそうです。

「シャリオさんっ!? 急になにを――っっ! お前は…………お前達は…………っ。クラメール家の、シャルルとアンリエット……!」
「大正解。アンタが色々とやってくれてたんで、こうしてお礼に来たのさ」

 店内にお客様はいませんし、こちらに入る時に『CLOSE』の札を立てておきました。誰かに目撃される心配はないのでお兄様は変装を解き、ナイフで脅して両手を挙げさせました。

「命は惜しいだろ? 大人しく言う事を聞いてくれるよな?」
「……………………。……………………」
「アンリエットがいるから、あまり手荒な真似はしたくないんだ。……素直に聞いてくれる、よな?」
「ひっ! わっ、分かった! きっ、聞くますっ!!」

 私には見えない角度でお兄様が顔を覗き込むと、ウルデさんは顔面蒼白でしどろもどろになりました。
 今のこの人からは、血の気がすっかり引いています。私のために隠してくれていましたが、相当怖い顔をされていたようです。

「こちらは全てを知得し、犯人はお前だと確信している。それを踏まえた上で、よく聞け」
「は、はぃっ! どっ、どうぞ!」
「俺のお願いは、収拾。噂の流布中止および、誤りだったというメッセージの流布だ。すぐにできるな?」
「もっ、もちろんですっ! オレの持つルートを使えば、今日中にはご希望の状態にできますっ!」

 こちらに向かう際に知ったのですが、すでに世間では『アンリエットのせいで婚約破棄』が有名になっていました。昨日起きたことがもう浸透しているのですから、逆も可能ですよね。

「必ず、少しの落ち度もなく、完遂致しますっ。ほっ、ほかには何かございますでしょうかっ?」
「ああ。あと一つ、頼みたい事があるんだよ」

 お兄様はポケットから、四つ折りになった紙を2枚取り出しました。
 他にも、まだあったのですね。そちらは、なんなのでしょう……?
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