行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

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第2話 過去 レアナ視点(2)

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「お祭りの最中とはいえ、こんな時間に女性の一人歩きは危険ですよ? 僕はこの先にある宿――一応この街で最も歴史のある宿の支配人の息子で、危険な者ではありません。何か御力になれることはありませんか?」

 様々な理由で28回お断りされ、少しでも安全に眠れる場所を求めて街を彷徨っている時でした。色素の薄い猫っ毛が印象的な、優しそうな雰囲気の男性が――ヴァランタンくんが、声をかけてくれました。

「…………なるほど、追放されて居場所を失ってしまったと……」
「……はい……」
「事情は分かりました。そういうことでしたら、ウチで働きませんか? ちょうど従業員の募集をしようと思っていたところなんですよ」
「え!? よ、よろしい、のですか……? 自分で言うのも、なんですが……。嘘をついているかも、しれないのですよ……?」
「物心ついた時から接客業に携わっているから、なんでしょうかね? なんとなく良い人と悪い人の判断がつくんですよ。さすがに発言が嘘か本当かまでは感じ取れませんが、僕が『良い人』と感じた人なら今(いま)嘘はつきません。そういう方は大歓迎・・・ですよ」

 あの時ヴァランタンくんだけがわたしの言葉を信じてくれて、わたしはホライザの一員として働けるようになりました。

「ヴァランタンから事情は聞いているよ。ようこそホライザへ」
「私達のことは家族と思って、ここは自分の家だと思って、過ごして頂戴ね」

 支配人のダッド様と奥様のアメリ様――今はお義父さんとお義母さんになった二人も温かく迎えてくださって、地獄から天国に来たような気分でした。

 ――この方々に精一杯を恩返しをしたい――。

 ですのでそういった思いが溢れ、一生懸命お仕事を覚えて毎日毎日一生懸命働きました。
 そうしているうちに、お客様の笑顔と『ありがとう』に喜びを感じるようになって。このお仕事が好きになって。ホライザで過ごせず毎日が楽しくて仕方がなくなって。
 追放された時は考えられなかった日々を過ごせるようになり――やがて、同じくあの頃は想像もしなかったことが起きてくれたのでした。

「レアナちゃん、僕は君に恋をしました。これからはこれまでとは少々違う形で、隣を歩かせてくれませんか?」

 いつも優しくて、温かくて、真面目で、わたしの心をポカポカとさせてくれる人。一緒に過ごすうちに大好きになっていった人もまた、一緒に過ごすうちにわたしを大好きになってくれていて。

「はいっ! わたしも、ヴァランタンくんが好きです! 恋をしていましたっ!」

 交際を始めて恋人になって、やがて結婚をして夫婦になって。
 新たな場所で、人生で一番の幸せをいただいたのでした。
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