行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

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第5話 初めての労働 俯瞰視点(2)

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「「「……つか、れた……」」」

 ピエールもミサもポーリーヌも。それぞれベッドで大の字になり、力なく呟きました。

「身体中が……。パンパン、だ……」
「手も脚も、もう……。ちゃんと、動かせないわ……」
「それに、身体も、重い……。重力が倍になったみたい、ですわ……」

 生まれて一度も肉体労働をしてこなかった者達が、半日間動きっぱなしだった。肉体への負担は非常に激しく、疲労で吐き気すらもよおしていました。

「辛い、苦しい。……だが、とても心地いい」
「身体は苦しいのに、心は真逆。スッキリしているわ」
「充実感で満ちていますわ……!」

 まだまだ未熟なものの、確実にホライザの役に立てた――恩人のお役に立てた。それがなにより嬉しく、三人の顔には自然と笑みが浮かびました。

「僅かではあるが、目標に向かって前進できた。明日はもっと前に進まねばな」
「そうね、あなた。明日もオズアさんにしっかり教わって、しっかりと身につけましょう……!」
「掃除や洗濯に関する知識や技術。すべてを乾いたスポンジみたいに吸収してみせますわ……!!」

 今の三人は、とにかく『成長』したい。ピエール達は声を弾ませて決意をし、残念ながら身体を動かせないため、頭の中で今日覚えたことの復習を始めました。

「廊下を掃く角度は、あれくらいがベスト……。階段を掃くときは、あそこに気をつけつつやる……」

「Aは便器で、Bは壁や床……。床は…………ああすれば、より効率よくよごれを落せる……」

「シーツは、乱暴にしない……。丁寧に…………でも、ちゃんと力を加えて……。あんな風に、洗う……」

「皿やボウルは……。キュッキュと音がするまで、洗う……」

「コップやグラスは、あの道具を使って……。あそこに逆さに置いて、乾燥させる……」

「肉料理に使ったナイフとフォークは、あの洗剤で洗って……。他よりも、少し長めに洗う……」

 などなど。三人は夕食を食べたあとも就寝時間ギリギリまで今日学んだことを振り返り、

「「「ヴァランタン様とレアナ様のために!!」」」

 恩人の姿を思い浮かべながら、気合に満ち満ちた状態で眠りにつきました。
 そうして彼らにとって激動の一日が終わり、次の日もその次の日も気合に満ちた日々が続く。他の従業員が目を見張るほど三人は熱心に働き続け、そのかいあって2週間経つ頃には『期待の新人』と呼ばれるほどになる――のですが。その時期を境に、評判以外にも『変わる』ところが生まれ始めることとなるのでした。


「…………ミサ、ポーリーヌ。少しくらい力を抜いてもいいとは思わんか?」

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