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第12話 奥の手 俯瞰視点(1)
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「隠し玉の内容によって、判断が変わる可能性はあります。詳細を教えてもらえますか?」
「もちろんでございます。……我々はつい最近まで、隣国エレトーファンに属する貴族でした。故に珍しい、希少なアイテムを所有しているのでございます」
「所有している? どういうことですか?」
ヴァランタンとレアナが保護した時、三人は裸一貫。身体以外に持っていたのは身に着けていた衣類のみで、ヴァランタンは首を傾げました。
「……万が一の保険があるのです」
「ああっ、アレのことね!!」
「すっかり忘れてしまっていましたわ!」
戸惑っていたミサとポーリーヌの表情と声音に、みるみる活気が蘇りました。
「我々には8年前まで長女がおりまして、その者が持っていた貴金属をすべて、かつて屋敷で働いていた信頼できる者に預けていたのです。そちら計6点ありまして、特にその中の一つは希少価値が高い。恐らく現在は合わせてゆうに1500万を超えておりまして、引き換えにそちらをお渡ししたいと考えております」
「長女の、所有品? なぜその方はいなくなって、他者に預けられているのですか?」
「家の金をコッソリ使うなど我が娘フィエナは問題行動が多く、その上まったく反省しないため泣く泣く追放したのです。そして我が国では縁を切ったものの私物は全て手放すという仕来りがあるのですが、フィエナの影がなくなるのは寂しくて売れず……。手放したフリをして、預かってもらっていたのですよ」
「周囲には内緒にしていたため、家族以外――使用人でさえも、その事実は知りません。この人の弟によってわたくし達は全てを奪われ追放されましたが、それだけは残っているのです」
という話は、半分嘘。
確かに祖国エレトーファンにはそういった仕来りはありますが、手放さなかったのは『置いておいた方が価値が出るから』。そのタイミングで売ってしまうと損をするため満足できる額になるまで待っていて、回収して売り捌く前に追い出されてしまったのです。
『周りに誰もいない。ならば決まっていますわ』
『15万も臨時収入があれば、予定よりも随分と早くアレを取りに行けるんだもの。もらわない手はないわ』
『さすが私の妻と娘だ。そう、そうなのだよ。クレバーに生きねばならんのだ』
ピエール達はホライザで働き、祖国へと渡り回収するための旅費を稼ごうと考えていたのです。
「今後更に価値は上がり続ける、本物しかございません。なにとぞ、お願い致します……!」
「よろしく、お願い致します……!」
「お願い致します……!」
イエスかノーかで、天と地の違いがあります。ピエール達は再び心の中で強く強く胸の前で手を組みながら訴え、泣きそうになりながら正面にあるブルーの瞳を見つめていると――
「分かりました。手を打ちましょう」
――三人にとって、最高の返事が聞こえてきたのでした。
「もちろんでございます。……我々はつい最近まで、隣国エレトーファンに属する貴族でした。故に珍しい、希少なアイテムを所有しているのでございます」
「所有している? どういうことですか?」
ヴァランタンとレアナが保護した時、三人は裸一貫。身体以外に持っていたのは身に着けていた衣類のみで、ヴァランタンは首を傾げました。
「……万が一の保険があるのです」
「ああっ、アレのことね!!」
「すっかり忘れてしまっていましたわ!」
戸惑っていたミサとポーリーヌの表情と声音に、みるみる活気が蘇りました。
「我々には8年前まで長女がおりまして、その者が持っていた貴金属をすべて、かつて屋敷で働いていた信頼できる者に預けていたのです。そちら計6点ありまして、特にその中の一つは希少価値が高い。恐らく現在は合わせてゆうに1500万を超えておりまして、引き換えにそちらをお渡ししたいと考えております」
「長女の、所有品? なぜその方はいなくなって、他者に預けられているのですか?」
「家の金をコッソリ使うなど我が娘フィエナは問題行動が多く、その上まったく反省しないため泣く泣く追放したのです。そして我が国では縁を切ったものの私物は全て手放すという仕来りがあるのですが、フィエナの影がなくなるのは寂しくて売れず……。手放したフリをして、預かってもらっていたのですよ」
「周囲には内緒にしていたため、家族以外――使用人でさえも、その事実は知りません。この人の弟によってわたくし達は全てを奪われ追放されましたが、それだけは残っているのです」
という話は、半分嘘。
確かに祖国エレトーファンにはそういった仕来りはありますが、手放さなかったのは『置いておいた方が価値が出るから』。そのタイミングで売ってしまうと損をするため満足できる額になるまで待っていて、回収して売り捌く前に追い出されてしまったのです。
『周りに誰もいない。ならば決まっていますわ』
『15万も臨時収入があれば、予定よりも随分と早くアレを取りに行けるんだもの。もらわない手はないわ』
『さすが私の妻と娘だ。そう、そうなのだよ。クレバーに生きねばならんのだ』
ピエール達はホライザで働き、祖国へと渡り回収するための旅費を稼ごうと考えていたのです。
「今後更に価値は上がり続ける、本物しかございません。なにとぞ、お願い致します……!」
「よろしく、お願い致します……!」
「お願い致します……!」
イエスかノーかで、天と地の違いがあります。ピエール達は再び心の中で強く強く胸の前で手を組みながら訴え、泣きそうになりながら正面にあるブルーの瞳を見つめていると――
「分かりました。手を打ちましょう」
――三人にとって、最高の返事が聞こえてきたのでした。
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