行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

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第16話 その後の三人は 俯瞰視点(2)

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「そこの荷車を動かすからっ、手伝えと言っているだろうが!!」
「先にここの荷台を動かしにきなさいよ!!」
「そうですわ!! 口を動かす前に手を動かしなさい!!」

 あれから一か月後。三人の姿は、『スーロアル』という場所にある炭鉱にありました。

 初心、ありがたみをすぐに忘れてしまう。
 他者を下等と見下している。
 他者が指摘や指導をするとソレを許せず、陰湿な形で発散させようとする。
 平然と物を盗む。
 罪を指摘されると素直に認めず逃走を図る。
 自分達が助かるために、人質を作ろうとする。
 交渉を持ち掛け、どうにかして罪から逃れようとする。

 ホライザ内での行動に加え彼らには、家族を陥れ人生を一変させた、という本来は罪に問われないといけない行いがありました。以上を合わせた結果――

 三人しかいない区画で作業を行う。

 ――という、すべての危険性を排除する第二の人生を与えられていたのでした。

「こっちは別の作業で忙しいんだ!! お前達がやらないのならそのままにするからなっ!!」
「どうぞご自由に!! こっちだって忙しいのよ! さ、行きましょ」
「ええお母様。ふん、好きにするといいですわ!!」

 揉めた三人は地面を蹴ってその場を離れ、

「くそっ!」
「もう!」
「ああもう!」

 るものの結局戻って来て、じゃんけん。まずは勝ったミサが言っていた荷台を三人で協力して動かし、そのあとピエールが言っていた荷車を三人でどかしました。
 なぜならばそうしないと自分達の担当エリアの仕事が進まず、一日のノルマが達成できなくなってしまうから――週に1度与えられる、監視付きの外出ができなくなってしまうからです。

「ちっ」
「ちっ」
「ちっ」

 顔も見たくない相手だけど、ノルマを達成するには協力しないといけない。毎回3人は激しいストレスを感じながら力を合わせる羽目になり、そのたびに愚痴を言い合い、時には口だけでは足りず手が出ます。

「もとはと言えばお前達が――ぐあ!」
「しつこいわよ!! あなたが――ぎゃ!」
「お母様!! よくも――きゃあ!」

 毎日かかさず『愛している』と告げていた者達が、殴り合う。あの頃の微笑ましい光景はなく、その景色が戻ることはその後もありません。

「お前達さえいなければ……!」
「あなたがいなければ……!」
「アンタがいなければ……!」

 ピエールも、ミサも、ポーリーヌも。いつまで経っても他責思考を続け、他者だけを責め、その命尽きるまで憎しみ合いいがみ合うこととなるのでした――。



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