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第2話 突如発生したピンチ 俯瞰視点(1)
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『カシアス様。貴方様は四日前の夜、わたくしに関する悪評を捏造されましたよね?』。その言葉が飛び出した瞬間に、カシアスとジェスの表情は一変しました。
「……………………………………」
「……………………………………」
さっきまで貼り付けていた笑顔や明るい雰囲気は、跡形もなく消失。入れ替わりに無表情と石像の如き硬直がやって来て、二人は身動き一つ取れなくなってしまっていました。
「『屋敷内ではふんぞり返っていて、使用人に偉そうにしている』――。『困ったらすぐ「次期会頭だから」と地位を出し、婚約者に対しても我が儘を通そうとする』――。誰に対しても平等に接する人というのは大間違いで、下に厳しく上には媚びへつらう」――。など。ありもしないお話を、ご友人の方々にされましたよね?」
「……………………………………」
「……………………………………」
「カシアス様、お応えください。貴方様は四日前の夜、そのような内容を口にされましたよね?」
固まってしまっている間にも容赦なく話は進んでゆき、ブルーの瞳が真っすぐカシアスを捉えました。
「わたくしの声が、聞こえていらっしゃらないのでしょうか? カシアス様、お応えください」
「……………………………………い、いや、言ってない。言ってないよ! まったく言っていない!」
あの夜確かに口にしていますが、認めると大変なことになってしまう。カシアスはどうにか口や首を動かし、声と動作で否定をしました。
「な、なぜならっ。なぜならっ。なぜなら! あのね! なぜなら!!」
しかし、対応できたのはここまで。あまりにも予想外な出来事によって頭がうまく働かなくなっていて、上手い言い訳ができずにいました。
「? なぜなら?」
「えっとっ。あれだ! あれなんだよ!! ほらっ、あれだ!! なぜなら! なぜならばっっ! 俺はあの朝――じゃない! あの夜か! あの夜に――」
「あっ、アマリア嬢っ、ミーヴェル卿っ! 身に覚えのない疑惑を突きつけられてしまいカシアスはパニックに陥ってしまっているようだ! 申し訳ありませんが静かな場所で少し落ち着かせますぞっ!」
ジェスは捏造をしたという話を聞かされており、このまま放置すれば取り返しのつかなくなる状況が出来上がってしまうと理解していました。そこで慌ててカシアスを連れて馬車へと戻り、
「ち、父上助かりました! ありがとうございます!」
「ああ……。我ながら見事な立ち回りで――いかん安心している暇なんてない!」
「そっ、そうでした! 早く上手い言い訳を考えないとっ、大事になる……っ!」
二人ともに脂汗をたっぷりと浮かべ、打開策を探し始めたのでした。
「……………………………………」
「……………………………………」
さっきまで貼り付けていた笑顔や明るい雰囲気は、跡形もなく消失。入れ替わりに無表情と石像の如き硬直がやって来て、二人は身動き一つ取れなくなってしまっていました。
「『屋敷内ではふんぞり返っていて、使用人に偉そうにしている』――。『困ったらすぐ「次期会頭だから」と地位を出し、婚約者に対しても我が儘を通そうとする』――。誰に対しても平等に接する人というのは大間違いで、下に厳しく上には媚びへつらう」――。など。ありもしないお話を、ご友人の方々にされましたよね?」
「……………………………………」
「……………………………………」
「カシアス様、お応えください。貴方様は四日前の夜、そのような内容を口にされましたよね?」
固まってしまっている間にも容赦なく話は進んでゆき、ブルーの瞳が真っすぐカシアスを捉えました。
「わたくしの声が、聞こえていらっしゃらないのでしょうか? カシアス様、お応えください」
「……………………………………い、いや、言ってない。言ってないよ! まったく言っていない!」
あの夜確かに口にしていますが、認めると大変なことになってしまう。カシアスはどうにか口や首を動かし、声と動作で否定をしました。
「な、なぜならっ。なぜならっ。なぜなら! あのね! なぜなら!!」
しかし、対応できたのはここまで。あまりにも予想外な出来事によって頭がうまく働かなくなっていて、上手い言い訳ができずにいました。
「? なぜなら?」
「えっとっ。あれだ! あれなんだよ!! ほらっ、あれだ!! なぜなら! なぜならばっっ! 俺はあの朝――じゃない! あの夜か! あの夜に――」
「あっ、アマリア嬢っ、ミーヴェル卿っ! 身に覚えのない疑惑を突きつけられてしまいカシアスはパニックに陥ってしまっているようだ! 申し訳ありませんが静かな場所で少し落ち着かせますぞっ!」
ジェスは捏造をしたという話を聞かされており、このまま放置すれば取り返しのつかなくなる状況が出来上がってしまうと理解していました。そこで慌ててカシアスを連れて馬車へと戻り、
「ち、父上助かりました! ありがとうございます!」
「ああ……。我ながら見事な立ち回りで――いかん安心している暇なんてない!」
「そっ、そうでした! 早く上手い言い訳を考えないとっ、大事になる……っ!」
二人ともに脂汗をたっぷりと浮かべ、打開策を探し始めたのでした。
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