悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

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第2話 翌日~不思議な反応~ ジョゼット視点(3)

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「べ、ベルナール様……? どうなさいましたか……?」
「…………ザワヴァ様とボトーア様にお会いした……。隠されないのですね……?」
「かく、す……? は、はい。隠さないといけないような出来事ではありませんし」

 お二人がいらっしゃるお屋敷を訪ねる、それはもちろん法に触れる行動ではありません。加えてマリエール様とファティナ様に悪影響が発生するものではなく、ありのまま言及しました。

「隠す必要が、ない……!? 僕の前で……!?」
「??? ええ、ありませんよ。何か、問題がありましたでしょうか……?」
「………………………………そんなバカな……」
「え?」

 そんなバカな、と仰いましたよね? 問題が、あった……?

「…………では……。根本から間違っていた……?」
「べ、ベルナールさま……?」
「……………………いや、しかし……。だとしたら、説明がつかない……」
「べるなーる、さま……?」
「……………………だが、その様子は明らかに違うし……。待てよ……。それ以前に、今日のジョゼット様は……」

 何度かお名前を呼んでみましたが、俯いたまま反応はありません。こんな距離にいるわたしの声が耳に入らない程に、ご自身の世界に入られているようです。

「…………………………」
「…………………………」
「…………………………そうだ。そうだ! ジョゼット様っ!」
「は、はい」

 3分くらい経ったでしょうか。ようやくお顔があがりました。

「さきほど、『わたし』と仰りましたよね? 一人称を変えた理由を教えていただくことはできますでしょうか?」
「? 一人称は変わっていませんよ? わたしは、ずっとわたしと言っておりまし――あれ? …………違いますっ! そうです! わたしは『わたし』ではありませんでした!」

 わたくし。
 わたしの一人称は、ずっとそうでした。

「…………どうして、今まで気にならなかったのでしょうか……? あの時からずっと、変わっていたのに……」
「あの時? いつのお話なのでしょうかっ?」
「一昨日の、夜です。その時うっかり転んでしまって顔を強く打ち、少しの間意識を失ってしまったのですよ。その時からなんです」

 わたしは自分を、『わたくし』ではなく『わたし』と呼ぶようになっていました。

「ご自身のことなのに、気が付かなかった……? 他には、変化はございませんか……? たとえば思考や価値観などに、変化はありませんでしたか?」
「あり、ました。そちらは自覚がありました。わたしは今まで、わたしらしくない行動を頻繁にとっていたのです」

 脅迫や八つ当たりなどなど。絶対に行わない愚行を働いていました。

「……そういうこと、でしたか……。だから昨日は一日中、あのような行動を取られていたのですね」
「昨日……。もしかして、外出を御存じなのですか?」
「…………申し訳ございません」

 ベルナール様はテーブルに額がつくほどに頭を下げられ、そのあと――。信じられないことを仰ったのでした。


「実を言いますと家の者を使い、ジョゼット様を監視しておりました」


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