悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

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第15話 その後・アリシア(佐伯美花)の場合~真実~ 俯瞰視点(3)

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「ジョゼット……! ベルナールの偽物……! モニカぁ……!」

 更に一か月後。美花の口から『死んでやるぞ』や『なんであたしだけ』といったものは出なくなり、その代わりに別のワードが頻発するようになっていました。

「全員、不幸になれ……!!」

 いくら正論・・を訴えても好転しない。もういい。誰も頼らない。自分の力でやる。
 ――あたしが幸せになれないなら、アイツを引きずり落してやる――。
 言霊という言葉の存在を知っている美花は、実現させるべく呪詛を口に出し続けていたのです。

「モニカは、怪我をしてずっと入院しろ……。治ったらまたすぐ怪我をして、入院しろ……。死ぬまで、繰り返せ……」

「ジョゼットと偽ベルナールは、まずは喧嘩しろ……! 一緒にならなかった方が良かったと思うようになって、別れろ……! 別れたあとは、散々な人生になれ……!」

「ジョゼットは政略結婚で、とんでもないクソ男と結婚せざるをえなくなれ……! クソ男に浮気されたり暴力を振るわれたりして、毎日泣くようになれ……! 死にたくなるように、なれ……!」

「偽ベルナールも、とんでもないクソ女と結婚せざるを得なくなれ……! 毎日尻に敷かれて理不尽なストレスを受け続け、やつれてしまえ……! 笑えなくなって、死にたくなるようになれ……!」

「ジョゼット。偽ベルナール。モニカ。全員、時間が巻き戻ってと懇願するように、なれ……!!」

 忌々しい3人は、すぐにでも殺したかった。けれどそれでは、自分だけが苦しい思いをし続ける羽目になってしまう。

 ――お前達も、ずっと苦しむんだ――。

 同じ目に遭わせるため、そう繰り返していました。

「言霊、頼んだわよ……! アイツらに不幸を……! あたしの邪魔をしたジョゼット、あたしを理不尽に傷付けた偽ベルナール、あたしを裏切ったモニカに……! 特大の不幸と絶望をもたらすのよ……!!」

 今日もまた天へと言葉を投げかけますが、残念ながらその願いが実現する時は訪れません。

 ――すべてが逆恨み――。

 ジョゼット達は『邪魔』も『理不尽』も『裏切り』もしていないため、3人に害が及ぶ日は訪れません。
 しかも――

「不幸になれ……! 不幸になれ……!! 不幸になれ……!! 不幸になれ……!! 不幸になってしま――がは!? い、痛い……!?」

 呪詛、悪い感情を含んだ言葉を吐き続けた影響なのでしょうか? 美花は頻繁に謎の激痛や謎の病気に襲われる羽目になり、

「なんでよぉぉぉ……! なんであたしばっかりこんな目にぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい……!!」

 散々な人生を送ることとなるのでした――。


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