婚約破棄をすると言ってきた人が、1時間後に謝りながら追いかけてきました

柚木ゆず

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第2話 撤回の理由 フェルナン視点

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「マリア!? ヴァーラリアス伯爵家!? 漁船!? お前が想定していた利益を凌駕する『宝』を手放してしまったんだぞ!! お前の独断のせいでな!!」
「……………………」

 俺は生まれて初めて、立ち眩みというものに襲われていた。
 このタイミングで、そんなことがあるなんて……。悪夢、だ……。

「せっかく手の中にあった大成功を自ら手放すだなんて!! 有史以来の間抜けだ!! なぜ貴様はこの状況下で利益を追求した!? いつも言っていただろうが!! 『欲をかき過ぎると身を亡ぼす』とな!!」
「…………………………」
「大ニュースが俺の情報網にかかりっ、大喜びで屋敷を飛び出したコレだなんて!! 納得できるか!! かっ、神よ頼む!! どうにかして婚約をもとに戻してくれええええええええええええ! あの婚約がなければっ、せっかくのお宝が手から零れおちてしまうんだああああああああ! お願いだっ! 奇跡を起こしてっ、どうにか婚約をもとに戻してくれえええええええええええええええ!!」
「………………もとに、もどす……。だっ、大丈夫だっ。婚約をやり直すチャンスはあるっ!」

 絶句していた俺の頭に、『保険』の存在が浮かび上がった。

「さっきの婚約破棄は、ジュリーに騙されてしてしまっていた。そうアンリエットに伝えて再度婚約を申し込めば、関係を戻せるっ。あちらはまだ『アレーナ茸』の件を知らないはずだから違和感もないしな!」
「まっ、待て待て待て! ジュリーに騙されていただなんて、そんな無茶な言い訳が通用するのか!?」
「あの『保険』は復縁を想定してはいないから、かなり強引な弁明になるだろうさ。それでもきっと問題はない。アンリエットから見て俺が、率先して婚約を破棄する理由がないんだからな」

 マリアの件は家族にさえも秘密で動かしていたし、ジュリーは俺の好みとはかけ離れているし、なによりレーズリック子爵家には何も魅力はない。
 加えて俺は、アロメリス家の山や畑を気に入っていた。
 それらの事実があれば、どうにかなる。

「婚約破棄のあとのアレ・・が厄介ではあるが、そこは気合でどうにかしてみせよう。必ず、再婚約を成功させる」

 根性論、俺が嫌うもの。普段は決して口にしない言葉だが、今回ばかりは使う。

「そ、そうか! 任せたぞ! じゃあ早急に動くのだ!!」
「言われなくてもそうする。まずは……ジュリー!」
「はい? なんでしょうか?」
「…………状況が変わったのでな、これからお前には嘘を吐いたと――俺を利用してアンリエットを貶めたと自供してもらう。断ればその命はなくなると思え」

 まずはヒステリックに怒りだしたバカ女を脅して言うことを聞かせ、大急ぎで馬車を発たせる。そうして全速力で、アロメリス家の馬車を追いかけ――

「君との婚約破棄をっ、撤回したい! アンリエットと再び婚約させて欲しいんだ!!」

 ――復縁計画が、幕を開けたのだった。

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