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第3話 旧と新 アンリエット視点
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「アンリエット。暴力と暴言の件を含め、不自然な点が多いと感じると思う。でも、全てに裏はないんだよ。俺は君に、ひとつも嘘を吐いてはいないんだ」
僅か1時間での手のひら返し。その理由を考えていたら、フェルナン様はまた自虐含みで唇を噛みました。
「俺があんな風に……半ば勢いで信じ込んで話を進めてしまったから、おかしなことになってしまった……。あのね、アンリエット。どうしてあんなにも急に、大した裏どりもせず俺らしくない行動を取ったのかというとね……。婚約者になった人に、嘘を吐かれたことが辛かったんだよ……」
婚約する際にわたしは、これまでの人生で後ろめたいことは一度もしておりません、とお伝えしました。
なのに、自分の知らないところで嫌がらせをしていた。
現場を見てしまった。
それによってショックを受け、ショックを受けたことで感情が爆発し、そのまま婚約破棄を宣告してしまったそうです。
「実はね……俺は、君に恋をして始めていたんだよ。3か月間多くの時間を過ごすようになって、素敵な部分を沢山知って……。異性として、意識するようになっていたんだ」
「……そう、だったのですね」
「恋をしたのは生まれて初めてで、恥ずかしくて言えなかったけどそうだったんだ。言い訳させてもらうと、そんな気持ちがショックを増幅させたんだと思う……」
「………………」
「君に特別な感情を抱いていなければ……もっと落ち着いてあの状況を俯瞰できていて、すぐにジュリーの思惑に気付けたはずだ。私情によって思い込み、先走ってしまうだなんて……。将来の商会頭としても、男としても失格だよ」
「………………」
「だから身を引くべきだと思ったんだけど、やっぱり、諦めきれなかった。だから急いで追いかけさせてもらって……。こうして、お願いをさせてもらってます」
曇りひとつないように見える、真摯な目。澄んだ目で真っすぐにわたしを見つめ、フェルナン様はゆっくりと片膝をつきました。
「アンリエット、俺にもう一度君とやり直す資格を与えてはくれませんか? あんな過ちは二度としないと誓いますから。一回だけ、こんな俺にチャンスをくれませんか?」
一言一言、噛み締めるように紡いでいって。最後の言葉を発したと同時に、フェルナン様の右腕が静かに動き始めます。
それはまるで劇のヒーローのように、真剣さだけを宿してわたしへと――
「面白い話をしていますね。僕も混ぜてもらいましょうか」
――わたしへと右手を差し出していた、その時でした。
背後から不意に、聞き覚えのあるお声が響いてきたのでした。
僅か1時間での手のひら返し。その理由を考えていたら、フェルナン様はまた自虐含みで唇を噛みました。
「俺があんな風に……半ば勢いで信じ込んで話を進めてしまったから、おかしなことになってしまった……。あのね、アンリエット。どうしてあんなにも急に、大した裏どりもせず俺らしくない行動を取ったのかというとね……。婚約者になった人に、嘘を吐かれたことが辛かったんだよ……」
婚約する際にわたしは、これまでの人生で後ろめたいことは一度もしておりません、とお伝えしました。
なのに、自分の知らないところで嫌がらせをしていた。
現場を見てしまった。
それによってショックを受け、ショックを受けたことで感情が爆発し、そのまま婚約破棄を宣告してしまったそうです。
「実はね……俺は、君に恋をして始めていたんだよ。3か月間多くの時間を過ごすようになって、素敵な部分を沢山知って……。異性として、意識するようになっていたんだ」
「……そう、だったのですね」
「恋をしたのは生まれて初めてで、恥ずかしくて言えなかったけどそうだったんだ。言い訳させてもらうと、そんな気持ちがショックを増幅させたんだと思う……」
「………………」
「君に特別な感情を抱いていなければ……もっと落ち着いてあの状況を俯瞰できていて、すぐにジュリーの思惑に気付けたはずだ。私情によって思い込み、先走ってしまうだなんて……。将来の商会頭としても、男としても失格だよ」
「………………」
「だから身を引くべきだと思ったんだけど、やっぱり、諦めきれなかった。だから急いで追いかけさせてもらって……。こうして、お願いをさせてもらってます」
曇りひとつないように見える、真摯な目。澄んだ目で真っすぐにわたしを見つめ、フェルナン様はゆっくりと片膝をつきました。
「アンリエット、俺にもう一度君とやり直す資格を与えてはくれませんか? あんな過ちは二度としないと誓いますから。一回だけ、こんな俺にチャンスをくれませんか?」
一言一言、噛み締めるように紡いでいって。最後の言葉を発したと同時に、フェルナン様の右腕が静かに動き始めます。
それはまるで劇のヒーローのように、真剣さだけを宿してわたしへと――
「面白い話をしていますね。僕も混ぜてもらいましょうか」
――わたしへと右手を差し出していた、その時でした。
背後から不意に、聞き覚えのあるお声が響いてきたのでした。
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