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第4話 婚約破棄の直後に アンリエット視点
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「アンリエット様。僕と婚約をしていただけないでしょうか?」
それは、フェルナン様が婚約破棄を宣告した直後でした。わたしとフェルナン様を囲んでいたオーディエンスの中から、そう仰りながら近づいてくる男性がいました。
この方は、ジョエル・メルフェア様。3回生時代のクラスメイトだった方です。
「……正気なのか? 君は何を見て聞いていたんだ? この女はたった今、暴言と暴力を理由に婚約破棄を宣告されたんだぞ?」
「ええ、分かっていますよ。ずっと見ていましたからね、状況は理解していますよ」
「だったらなぜ! わざわざ毒を喰らうような真似をする!? 君には破滅願望があるのかっ!?」
「まさか、そんなものはありませんよ。僕は以前から彼女に惹かれていましたし、なにより――。先の暴言と暴力は根も葉もないものだと思っているため、こうして提案をさせていただいたのですよ」
貴方が仰った暴力と暴言。それらを見て聞いた人間は、フェルナン様とジュリー様の2名しかいません。
たったこれだけの証言なんて、信用できませんよ。
ジョエル様はきっと意図的に、会場中に聞こえるように大きな声を出してくださいました。
「……俺はアンリエットの婚約者だったし、俺とジュリーは学院時代も含め一切接点がなかった。そもそもあの婚約は政略的なもので、我が商会は――何より俺が一番、アンリエットとの婚約を望んでいたんだ。にもかかわらず、嘘を吐いていると――アンリエットとの関係を絶つために、ジュリーと手を組んだと言いたいのか?」
「いえいえ、そんなことは一言も口にしていませんよ。僕は単に、あまりにも証拠が少なすぎるから信用できていないだけです。それと、客観的ではない個人的な理由もありまして――」
「個人的な理由? なんだ」
「貴方もクラスメイトだった時期がありましたよね? ならば、共感していただけるはずです。アンリエット様がそのような真似をする方とは、到底思えないのですよ」
公爵令嬢でも男爵令嬢であっても、いつも分け隔てなく接していたこと――。
以前蜂が飛んできた時、他令嬢を庇ってご自分が刺された。その際に、『誰かが痛い思いをするのを見るは辛い』から庇ったと微笑んでいたこと――。
そんな人が『生意気』と言ったり何度も傷付けるとは思えない――。
再び大きな声で、理由を語ってくださいました。
「もちろん俺も、それらはちゃんと記憶しているさ。だから最初は信じられなくて、監視したんだ。……残念ながらアレは、自分を良く見せるためのロールプレイの一環だったと思い知ったよ」
「ですがその言い分も、他の目撃者がいない以上は断言できなくなって――という風に、堂々巡りになっていつまでも結論が出ませんよね」
ニッコリ笑いながら、オーディエンスをぐるりと見回す。そうして皆さんが頷く姿を、隅々まで確認したジョエル様は――
それは、フェルナン様が婚約破棄を宣告した直後でした。わたしとフェルナン様を囲んでいたオーディエンスの中から、そう仰りながら近づいてくる男性がいました。
この方は、ジョエル・メルフェア様。3回生時代のクラスメイトだった方です。
「……正気なのか? 君は何を見て聞いていたんだ? この女はたった今、暴言と暴力を理由に婚約破棄を宣告されたんだぞ?」
「ええ、分かっていますよ。ずっと見ていましたからね、状況は理解していますよ」
「だったらなぜ! わざわざ毒を喰らうような真似をする!? 君には破滅願望があるのかっ!?」
「まさか、そんなものはありませんよ。僕は以前から彼女に惹かれていましたし、なにより――。先の暴言と暴力は根も葉もないものだと思っているため、こうして提案をさせていただいたのですよ」
貴方が仰った暴力と暴言。それらを見て聞いた人間は、フェルナン様とジュリー様の2名しかいません。
たったこれだけの証言なんて、信用できませんよ。
ジョエル様はきっと意図的に、会場中に聞こえるように大きな声を出してくださいました。
「……俺はアンリエットの婚約者だったし、俺とジュリーは学院時代も含め一切接点がなかった。そもそもあの婚約は政略的なもので、我が商会は――何より俺が一番、アンリエットとの婚約を望んでいたんだ。にもかかわらず、嘘を吐いていると――アンリエットとの関係を絶つために、ジュリーと手を組んだと言いたいのか?」
「いえいえ、そんなことは一言も口にしていませんよ。僕は単に、あまりにも証拠が少なすぎるから信用できていないだけです。それと、客観的ではない個人的な理由もありまして――」
「個人的な理由? なんだ」
「貴方もクラスメイトだった時期がありましたよね? ならば、共感していただけるはずです。アンリエット様がそのような真似をする方とは、到底思えないのですよ」
公爵令嬢でも男爵令嬢であっても、いつも分け隔てなく接していたこと――。
以前蜂が飛んできた時、他令嬢を庇ってご自分が刺された。その際に、『誰かが痛い思いをするのを見るは辛い』から庇ったと微笑んでいたこと――。
そんな人が『生意気』と言ったり何度も傷付けるとは思えない――。
再び大きな声で、理由を語ってくださいました。
「もちろん俺も、それらはちゃんと記憶しているさ。だから最初は信じられなくて、監視したんだ。……残念ながらアレは、自分を良く見せるためのロールプレイの一環だったと思い知ったよ」
「ですがその言い分も、他の目撃者がいない以上は断言できなくなって――という風に、堂々巡りになっていつまでも結論が出ませんよね」
ニッコリ笑いながら、オーディエンスをぐるりと見回す。そうして皆さんが頷く姿を、隅々まで確認したジョエル様は――
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