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第22話 その後のザラたちは 俯瞰視点
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「…………………………」
見渡す限り雲一つない、快晴の空。そんな気持ちのよい『青』の下を、
身体はやせ細り、髪はボサボサ、肌はボロボロ。
実年齢よりも二回りは老けて見えるみすぼらしい格好をした22歳の女が、屍のように無表情な男女を引き連れ歩いていました。
「まま~。あそこに――」
(見ちゃ駄目よっ。さあ行きましょっ)
傍にいる人がたまらず目を逸らし、大急ぎで距離を取ってしまうこの女性。彼女はかつてこの国で子爵令嬢として生きていた、ザラでした。
『移動は足のみ、衣食住は全て自給自足、聞き込みも含め他人への協力要請はすべて厳禁。睡眠食事調達以外、捜索に無関係な行為も厳禁。それらを一つでも破ったら死んだ方がマシと思える激痛に襲われて、でもどうやっても自殺できない』
あの日ザラは催眠術によってそんな状況となってしまい、日中は歩き周り、陽が落ち始めると森などに入って食料と寝場所を確保する――という、まるでサバイバルのような毎日が始まっていました。
そんなあまりにも不慣れで過酷な日々が5年も続いてしまっているため、こんな有様となっているのです。
「ぁ、ぁぁ……。いや……。こんな生活は、もういや……」
激痛が生じるため誰にも助けを求めることもできませんし、傍にいる両親は新たな催眠によって、黙々と捜索をこなす人形のようになってしまっています。ですので常に『疲労』『絶望』『孤独』に直面しており、今日もまたすっかり常套句となった言葉を呟きます。
けれどゴールが永遠にやって来ることはなく、催眠により死ぬこともできません。こんな生活が、終わることはまだまだありません。
「…………あの時、寝言を聞かなければ勘違いしなかったのに……。あの頃に、戻りたい……」
ですので同じようにもう一つの常套句も零れますが、時間が逆行することは決してあり得ません。
そのため今日も、これからも、今までと同様の毎日が繰り返されてしまって――
「…………………………」
その命が、尽きるまで。彼女は自らの行いが招いた『災い』を、心身で味わう羽目になるのでした――。
見渡す限り雲一つない、快晴の空。そんな気持ちのよい『青』の下を、
身体はやせ細り、髪はボサボサ、肌はボロボロ。
実年齢よりも二回りは老けて見えるみすぼらしい格好をした22歳の女が、屍のように無表情な男女を引き連れ歩いていました。
「まま~。あそこに――」
(見ちゃ駄目よっ。さあ行きましょっ)
傍にいる人がたまらず目を逸らし、大急ぎで距離を取ってしまうこの女性。彼女はかつてこの国で子爵令嬢として生きていた、ザラでした。
『移動は足のみ、衣食住は全て自給自足、聞き込みも含め他人への協力要請はすべて厳禁。睡眠食事調達以外、捜索に無関係な行為も厳禁。それらを一つでも破ったら死んだ方がマシと思える激痛に襲われて、でもどうやっても自殺できない』
あの日ザラは催眠術によってそんな状況となってしまい、日中は歩き周り、陽が落ち始めると森などに入って食料と寝場所を確保する――という、まるでサバイバルのような毎日が始まっていました。
そんなあまりにも不慣れで過酷な日々が5年も続いてしまっているため、こんな有様となっているのです。
「ぁ、ぁぁ……。いや……。こんな生活は、もういや……」
激痛が生じるため誰にも助けを求めることもできませんし、傍にいる両親は新たな催眠によって、黙々と捜索をこなす人形のようになってしまっています。ですので常に『疲労』『絶望』『孤独』に直面しており、今日もまたすっかり常套句となった言葉を呟きます。
けれどゴールが永遠にやって来ることはなく、催眠により死ぬこともできません。こんな生活が、終わることはまだまだありません。
「…………あの時、寝言を聞かなければ勘違いしなかったのに……。あの頃に、戻りたい……」
ですので同じようにもう一つの常套句も零れますが、時間が逆行することは決してあり得ません。
そのため今日も、これからも、今までと同様の毎日が繰り返されてしまって――
「…………………………」
その命が、尽きるまで。彼女は自らの行いが招いた『災い』を、心身で味わう羽目になるのでした――。
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