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プロローグ ミシュリーヌ・アズローラ視点
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「…………お父様お母様、お姉様、最後にもう一度確認をします。ちゃんと、約束を守ってくれるのですよね?」
7月7日。わたしがこのお屋敷を――この世界を去る日の朝。出発の支度を整えたわたしは、エントランスで前方を睨みつけました。
「わたしがサンドラお姉様の代わりに『生贄』になれば、監禁しているローナを解放してくれるのですよね?」
「もちろんだとも。お前がちゃんとサンドラの身代わりになってくれるのであれば、すぐに自由にしてやるさ」
この国『リシュエール』では天災を防ぐために、100年に1度国民の1人を『竜神様』に捧げる仕来りがあります。
生贄の選別方法は完全ランダムで、絶対に欠けてはならない王族以外から――貴族を含んだ全国民から選ばれる。その結果今から1か月前に、アズローラ子爵家の長女が――わたしの姉・サンドラが選ばれてしまい、それを切っ掛けにして……本人と両親、3人の暴走が始まりました。
「生贄なんて嫌ですわ!! いやっ、いやだっ!! 死にたくないっ!! 国のために犠牲になるなんて嫌あっ!! お父様お母様!! どうにかしてくださいまし!! 助けてっ!!」
「わ、分かったっ! ちゃんと助ける!! どうにかしようっ!!」
「そ、そうね! 安心して頂戴!! あなたを死なせはしないわ!!」
コームお父様とシルビアお母様にとって、お姉様は初めての子。そんな理由で昔からわたしの何倍もお姉様を可愛がっていて、どうにかして『愛娘』を護ろうとします。
それによって――
「…………サンドラとミシュリーヌは、似ていないこともない……。ミシュリーヌをサンドラの代わりにしよう」
「ミシュリーヌ、お前はサンドラの代わりに生贄になってもらう。……もしも拒むのならば、ローナを殺すぞ」
――わたしのもう一人の姉同然の侍女を人質に取り、要求を呑めと迫ってきたのです。
……ローナは、幼い頃からずっとお世話になっている人。見捨てることなんてできませんし、そもそも、もし拒んだら八つ当たりでわたし達2人は殺されてしまうでしょう。
2人とも死ぬのなら、1人だけ死ぬ方がずっとマシ。
ですのでわたしは頷き、姉のフリをして竜神様の生贄になると決めたのです。
「そうですか。……それと生贄を差し出した家に与えられる、10億ルビール(1ルビール=1円)。あちらの半分をローナに渡す約束も、忘れないでくださいね」
わたしの勝手な判断により、彼女は今後罪悪感を背負って生きていく羽目になってしまいました。それを少しでも和らげられればと――お屋敷を出て自由に暮らしてもらえるように、2分の1の提供を要求したのです。
「ああ、そこも違えはしない。そこまで酷な真似はしないし、なにより、お前が保険をかけたせいで反故にはできんだろうが」
「……そうでしたね。では安心してこの世を発てます」
急いで準備をしたので不安でしたが、あの保険はちゃんと機能してくれたようです。でしたら気がかりはもうなく、わたしは安堵しつつ外へ出ます。
そうすると王家からの馬車が停まっていて、
「サンドラ……。約束だ……! 来世でまた会おうな……!」
「サンドラ……私の、最愛の子……。次もまた、私の……私達の子どもになって頂戴ね……!」
「お姉様……! また、わたしを妹にしてくださいね……!! ぜったいですよ……っ!!」
お父様とお母様とお姉様のウソ泣きに見送られながら乗り込み、わたしを乗せた馬車は生贄の儀式が行われる『祭壇』を目指したのでした。
7月7日。わたしがこのお屋敷を――この世界を去る日の朝。出発の支度を整えたわたしは、エントランスで前方を睨みつけました。
「わたしがサンドラお姉様の代わりに『生贄』になれば、監禁しているローナを解放してくれるのですよね?」
「もちろんだとも。お前がちゃんとサンドラの身代わりになってくれるのであれば、すぐに自由にしてやるさ」
この国『リシュエール』では天災を防ぐために、100年に1度国民の1人を『竜神様』に捧げる仕来りがあります。
生贄の選別方法は完全ランダムで、絶対に欠けてはならない王族以外から――貴族を含んだ全国民から選ばれる。その結果今から1か月前に、アズローラ子爵家の長女が――わたしの姉・サンドラが選ばれてしまい、それを切っ掛けにして……本人と両親、3人の暴走が始まりました。
「生贄なんて嫌ですわ!! いやっ、いやだっ!! 死にたくないっ!! 国のために犠牲になるなんて嫌あっ!! お父様お母様!! どうにかしてくださいまし!! 助けてっ!!」
「わ、分かったっ! ちゃんと助ける!! どうにかしようっ!!」
「そ、そうね! 安心して頂戴!! あなたを死なせはしないわ!!」
コームお父様とシルビアお母様にとって、お姉様は初めての子。そんな理由で昔からわたしの何倍もお姉様を可愛がっていて、どうにかして『愛娘』を護ろうとします。
それによって――
「…………サンドラとミシュリーヌは、似ていないこともない……。ミシュリーヌをサンドラの代わりにしよう」
「ミシュリーヌ、お前はサンドラの代わりに生贄になってもらう。……もしも拒むのならば、ローナを殺すぞ」
――わたしのもう一人の姉同然の侍女を人質に取り、要求を呑めと迫ってきたのです。
……ローナは、幼い頃からずっとお世話になっている人。見捨てることなんてできませんし、そもそも、もし拒んだら八つ当たりでわたし達2人は殺されてしまうでしょう。
2人とも死ぬのなら、1人だけ死ぬ方がずっとマシ。
ですのでわたしは頷き、姉のフリをして竜神様の生贄になると決めたのです。
「そうですか。……それと生贄を差し出した家に与えられる、10億ルビール(1ルビール=1円)。あちらの半分をローナに渡す約束も、忘れないでくださいね」
わたしの勝手な判断により、彼女は今後罪悪感を背負って生きていく羽目になってしまいました。それを少しでも和らげられればと――お屋敷を出て自由に暮らしてもらえるように、2分の1の提供を要求したのです。
「ああ、そこも違えはしない。そこまで酷な真似はしないし、なにより、お前が保険をかけたせいで反故にはできんだろうが」
「……そうでしたね。では安心してこの世を発てます」
急いで準備をしたので不安でしたが、あの保険はちゃんと機能してくれたようです。でしたら気がかりはもうなく、わたしは安堵しつつ外へ出ます。
そうすると王家からの馬車が停まっていて、
「サンドラ……。約束だ……! 来世でまた会おうな……!」
「サンドラ……私の、最愛の子……。次もまた、私の……私達の子どもになって頂戴ね……!」
「お姉様……! また、わたしを妹にしてくださいね……!! ぜったいですよ……っ!!」
お父様とお母様とお姉様のウソ泣きに見送られながら乗り込み、わたしを乗せた馬車は生贄の儀式が行われる『祭壇』を目指したのでした。
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