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第6話 はじめての ミシュリーヌ視点(1)
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「これは、俺が昔から好きなものなんだ。幼い頃はよく食べていた」
「そうなのですね。外はふっくらしていて、中に入っている甘い――餡子と呼ばれるものも、とても美味しいです。わたしも好きになりました」
この世界を訪れて、ちょうど一週間後となる日。竜神様とわたしはお城から馬車で2時間ほどの場所にある『食と工芸が集う場所』と呼ばれるビーラーフェという街で、散策を兼ねた『食べ歩き』を行っていました。
どうして、このようなことになっているのかと言うと――
『昨日の昼食時に、「ビーラーフェ」に興味があると言っていただろう? 急な話にはなるが、今日の昼から一緒に行ってみないか?』
『え!? わざわざ竜神様がご一緒してくださるのですかっ!?』
『昨夜想定以上にスムーズに書類が片付き、今日は時間的な余裕があるんだ。ちょうど俺自身も息抜きをしたいと思っていたし、なによりあの街の案内はこの城の誰よりも得意なのでな。ミシュリーヌさえよければ案内役をさせてもらおう』
――本日の朝食時にそういった提案をいただき、お言葉に甘えたのです。
なんでもビーラーフェの街は、竜神様にとって庭のようなもの。竜紋が発現する前は、よく遊びに行かれていたそうなんです。
「こいつは饅頭と呼ばれるこの街発祥の食べ物で、餡子は小豆という植物や砂糖などを煮て作られる。外は小麦や卵などを混ぜて捏ねてできていて、そうだな。そちらの国でポピュラーな、パンの親戚のようなものだ」
「そうなのですね……! 材料は似ているのに、食感や味は全然違う……。不思議、面白い食べ物です」
わたしが暮らしていた国では――周辺国にも、こういったものはありませんでした。
この世界はわたしの国と雰囲気や仕組みは似ていますが、食文化は遥かにバラエティー豊か。一週間経っても毎日新しい食べ物と出会えて、毎回食事では驚いてしまいます。
「こいつを出店で購入し、出来立てを頬張りながらのんびりと街を歩く。それが昔の俺の楽しみだった。前言ったようにそちらでいう貴族界とは極力距離を置いていて、時間があれば今日みたいに変装をして、よく独りでウロウロしていたんだ」
銀髪のウィッグとメガネ、それとラフなお洋服。それらへと順に視線を動かし、微苦笑を浮かべられました。
「当時ほどではないが竜神となったあとも、月に1度は訪れている。先月もひとりでここを歩いたんだ」
「おっ、おひとりでですか!?」
「竜神は『神』で、竜人がなにをしようとも傷一つ与えられない。護衛を配置する意味がないし、大人数でゾロゾロ歩いてしまえば街の者が気を遣ってしまうからな。プライベートの外出時はひとりでの移動が基本だ」
竜神様は常時強力な守護結界を身に纏っていらっしゃるそうですし、お城などで起きる緊急事態も把握できてしまえるそう。なのでわたし達の国では絶対にできないことも、可能でした。
「だから周囲も竜神だと気付かず、おかげで現在も色々と新店舗の開拓ができる。このあともまだまだ良い店を紹介するから、楽しみにしておいて欲しい」
「はいっ。よろしくお願い致しますっ!」
鶏肉を木の串に刺してタレをつけて焼いた、焼き鳥。『麺』というものをお野菜や甘辛いソースで炒めた焼きそば。コーヒーと『寒天』と呼ばれる不思議なものを混ぜて固め、サイコロ状にカットして生クリームを載せたコーヒーゼリーなどなど。
そのあとも色々な美味しい食べ物を食べさせていただき、たくさん頂いたので、ここからはしばらく街を歩くことになりました。
そうして竜神様とわたしは、『食』ではなく『工芸』がメインとなるエリアへと入り――
「…………」
「???」
――とあるお店の前で、急に竜神様が立ち止まりました。
どう、されたのでしょうか……?
「そうなのですね。外はふっくらしていて、中に入っている甘い――餡子と呼ばれるものも、とても美味しいです。わたしも好きになりました」
この世界を訪れて、ちょうど一週間後となる日。竜神様とわたしはお城から馬車で2時間ほどの場所にある『食と工芸が集う場所』と呼ばれるビーラーフェという街で、散策を兼ねた『食べ歩き』を行っていました。
どうして、このようなことになっているのかと言うと――
『昨日の昼食時に、「ビーラーフェ」に興味があると言っていただろう? 急な話にはなるが、今日の昼から一緒に行ってみないか?』
『え!? わざわざ竜神様がご一緒してくださるのですかっ!?』
『昨夜想定以上にスムーズに書類が片付き、今日は時間的な余裕があるんだ。ちょうど俺自身も息抜きをしたいと思っていたし、なによりあの街の案内はこの城の誰よりも得意なのでな。ミシュリーヌさえよければ案内役をさせてもらおう』
――本日の朝食時にそういった提案をいただき、お言葉に甘えたのです。
なんでもビーラーフェの街は、竜神様にとって庭のようなもの。竜紋が発現する前は、よく遊びに行かれていたそうなんです。
「こいつは饅頭と呼ばれるこの街発祥の食べ物で、餡子は小豆という植物や砂糖などを煮て作られる。外は小麦や卵などを混ぜて捏ねてできていて、そうだな。そちらの国でポピュラーな、パンの親戚のようなものだ」
「そうなのですね……! 材料は似ているのに、食感や味は全然違う……。不思議、面白い食べ物です」
わたしが暮らしていた国では――周辺国にも、こういったものはありませんでした。
この世界はわたしの国と雰囲気や仕組みは似ていますが、食文化は遥かにバラエティー豊か。一週間経っても毎日新しい食べ物と出会えて、毎回食事では驚いてしまいます。
「こいつを出店で購入し、出来立てを頬張りながらのんびりと街を歩く。それが昔の俺の楽しみだった。前言ったようにそちらでいう貴族界とは極力距離を置いていて、時間があれば今日みたいに変装をして、よく独りでウロウロしていたんだ」
銀髪のウィッグとメガネ、それとラフなお洋服。それらへと順に視線を動かし、微苦笑を浮かべられました。
「当時ほどではないが竜神となったあとも、月に1度は訪れている。先月もひとりでここを歩いたんだ」
「おっ、おひとりでですか!?」
「竜神は『神』で、竜人がなにをしようとも傷一つ与えられない。護衛を配置する意味がないし、大人数でゾロゾロ歩いてしまえば街の者が気を遣ってしまうからな。プライベートの外出時はひとりでの移動が基本だ」
竜神様は常時強力な守護結界を身に纏っていらっしゃるそうですし、お城などで起きる緊急事態も把握できてしまえるそう。なのでわたし達の国では絶対にできないことも、可能でした。
「だから周囲も竜神だと気付かず、おかげで現在も色々と新店舗の開拓ができる。このあともまだまだ良い店を紹介するから、楽しみにしておいて欲しい」
「はいっ。よろしくお願い致しますっ!」
鶏肉を木の串に刺してタレをつけて焼いた、焼き鳥。『麺』というものをお野菜や甘辛いソースで炒めた焼きそば。コーヒーと『寒天』と呼ばれる不思議なものを混ぜて固め、サイコロ状にカットして生クリームを載せたコーヒーゼリーなどなど。
そのあとも色々な美味しい食べ物を食べさせていただき、たくさん頂いたので、ここからはしばらく街を歩くことになりました。
そうして竜神様とわたしは、『食』ではなく『工芸』がメインとなるエリアへと入り――
「…………」
「???」
――とあるお店の前で、急に竜神様が立ち止まりました。
どう、されたのでしょうか……?
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