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エピローグ 告白×告白 ミシュリーヌ視点

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「ミシュリーヌ? ここに何かあるのか……?」

 それは、この世界に戻って来てすぐのことでした。竜神様にお願いをさせていただき、わたし達は今『竜神の間』に――思い出の場所に、います。

「…………竜神様。今からおよそ1か月前に、こちらで初めてお会いしましたよね」
「そうだな。あれから1か月、長いような短いような、不思議な感覚があるな」

 わたしもです、竜神様。
 あっという間だったような、のんびりと時間が流れたような。不思議な感覚が、ありますよね。

「……そんな竜神様と過ごした時間が、わたしの中である感情を育ててくれました。…………竜神様。貴方様に、大事なお話がございます」

 玉座の前。あの時と同じ位置で――でもその時と内心はまるで違う状態で、竜神様の瞳を見つめました。

「竜神様はあの日、わたしを美しいと。好きになったと、仰ってくださりましたよね?」
「ああ。確かに言った」
「……今はわたしの中にも、まったく同じ気持ちが宿っております。貴方様が好き、大好き。この先もずっと一緒に人生を歩んで欲しいと思っております」

 あの時の、お返事。あの日戸惑ってしまった言葉に、想いを乗せた言葉をお返しして――

「ありがとう。今日という日が、人生で最も嬉しい日になった」

 ――そうしたら、優しく温かい、わたしが大好きな微笑みをくださりました。

「恋をしている人に好きだと言ってもらえる以上に、幸せなことはない。ありがとう、幸せだ」
「わたしもでございます。好きな方に喜んでいただける以上に、幸せなことはありません。ありがとうございます、りゅうじんさ――」
「バティスト。ふたりきりの時は、そう呼んで欲しい」

 え?
 ばてぃ、すと……?

「竜神となった者は以降名前は『竜神』となるが、家族だけは以前のものを使っても構わないという決まりがあるんだ。バティストは俺の本当の名前で、ミシュリーヌはいずれ家族となる女性。君はそう呼んで欲しい」
「はいっ、呼ばせていただきますっ。……バティスト、様。バティスト様」
「ありがとう、ミシュリーヌ。これからもよろしく頼む。ふたりでよい未来を紡いでいこう」

 わたしはそっとバティスト様に抱き寄せられ、静かに見つめ合い、頷き合います。そうしてわたし達の身体、顔はゆっくりと近づいていき――

 キス。

 ――お互いの想いを行動で示し合い、お互いの愛をしっかりと感じ合ったのでした。
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