こちら、あやかし村おこし支援課

柚木ゆず

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第4話 はじめての天地村(1)

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「到着しました。どうぞ」
「ありがとうございます。……ここが、天地村」

 安倍さんが運転する車で、2時間半ほど移動。たくさんのトンネルと橋を通って辿り着いたのは、緑豊かな山間の地でした。

 ――季節ごとに様々な表情を見せてくれる山がある!――。
 ――澄み切った水の中で魚が元気に泳ぎ回る川がある!――。
 ――稲穂や野菜が元気よく育つ田畑がある!――。
 ――ここは、大自然に愛され大自然に抱かれし村!――。
 ――天地村!!――。

 そんなキャッチコピー(村人&安倍さん考案だそう)があるだけあって、自然が一杯。大学時にわたしが住んでいた地域とは別の世界が広がっていて、同じ県とは思えないほどに爽やかな風と美味しい空気が歓迎してくれた。

「はい、ここが天地村。水前寺さんのお力を借りたい場所です。……実際にご覧になってみていかがですか?」
「映像や資料で見た景色とは、全然違いますね。立っていて、とても気持ちの良い場所です」

 あの日から今日まで一か月近くあって、すぐ村おこしに取り掛かれるように情報を頭に叩き込んできた。
 その際に動画や写真で村のあちこちを見たのだけれど、感じる印象が良い意味でまるで違う。市街地での暮らしでは感じられなかったものがいくつもあって、『大自然に抱かれている』は大袈裟じゃない。

「とても、心地の良いところですよね。……僕もこの場所、天地村が好きなんですよ。よろしくお願い致します」
「出来る限りの努力をさせていただきます。まずは、村の皆さんにご挨拶をしたい――のですが……」
「ぴったりに到着したのですがね。すみません、遅れてしまっているようです」

 事前の打ち合わせでは村の出入り口こと『WEELOME 天地村へ!!』と書かれた大きなゲートの前で、村人の方々が待ってくださっているようになっていた。しかしながら人影がなくて、安倍さんは苦笑いで頬を掻いた。
 ちなみにウェルカムの綴りが違うのは、ここの写真をSNSにアップして綴り間違いでバズろうとした結果だそうです。

「このまま待ってみましょうか?」
「そう、ですね。少しだけ待ってみて、変わらないようでしたら僕が村役場に――」
「すまない遅れちまった! お待ちしてたぜ嬢ちゃん!」

 と言っていたら、30代前半に見える体育会系の男性が軽トラックに乗って現れた。

「鈴木さん――じゃなかった。心問答さん、お久しぶりです」
「一か月ぶりだな! いや~悪い、歓迎会に準備に手間取っちまってるんだ。村の連中は全員会場で最後の仕上げをやってて、あと1時間もすればできると思うんだよ。それまで紹介も兼ねて、俺に村を案内をさせてもらえないか?」
「是非、お願いします」

 自分が暮らす場所は、実際に隅々まで見ておいた方がいい。それに何よりこの村は、資料で見るのと実際に見るのとでは全然違う。
 公私を兼ねて即答で頼み、急遽予定外の案内ツアーが始まったのでした。

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