こちら、あやかし村おこし支援課

柚木ゆず

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第4話 はじめての天地村(2)

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「そうだな、近いところから紹介していくか。ここは土産物屋の、『天地屋(あまちや)』だ」

 軽トラックの後ろに積まれていた自転車に乗り、心問答さん、わたし、安倍さんの縦並びでゆっくり漕いで3分くらいかな。昔ながらの駄菓子屋に似た、レトロな雰囲気を放つ平屋の建物についた。

「ここでは天地村で作った野菜や米、村のパンフレットや村特製のグッズを売ってるんだよ」

 実家にあるわたしの部屋6つ分くらい――36畳ほどの広さがあり、そこでは大根やニンジン、村のイラストが描かれたペナントや村のロゴが入ったメモ帳やクリアファイルなどが売られていた。

「なんでここにあるかというと、最も来訪客の目に留まりやすい場所に設置した方がいいからだ。戦略は完璧――だと思ったんだがなぁ……」

 事前に見させてもらった資料によると、直近の売り上げは0。写真を撮るなどしに村を訪れた方が何人もいたみたいだけど購入はしてもらえなかった、と書かれていた。

「ここに関しても、あとで嬢ちゃんの意見を伺いたい。んで反対側に見えてる3つ並んだ建物が、食事処だ」

 その名も『天地食堂(あまちしょくどう)』。一番出入り口に近いお店が和食専門、その隣が洋食専門、一番遠いのが中華専門だそう。

「今はやりの専門店で打ち出していて、人気が出ると思ったんがなぁ……」

 こちらも同じく、直近の売上は0。最初のうちはお客様が来た――写真を撮りにこられた方が寄っていたそうだけど、時間に比例して立ち寄る人の数が減る。調べてみたら某レビューサイトで☆1がついていました(しかも荒しレビューではない)。

「食べてみてもらいたいんだが今は料理人が出払ってるんで、次に移らせてもらうな」

 再び自転車に乗って道を真っすぐ進むこと、今度はおよそ10分。田んぼや川を軽く紹介してもらいながら青空の下を走っていくと、所謂住宅エリアが見えてきました。

「見ての通り、俺達が暮らしている家がある地帯だ。基本的には1あやかし1家で、広さや階層はあやかしの趣味で決めてる」

 2階建て、1階建。広い家、狭い家。お庭が広い家、狭い家。屋根や外壁の色だけではなく形なども千差万別で、色々なお家が道の両サイドにずらっと並んでいた。
 資料によると元々あやかしさんは、村の好きな場所で思い思いに暮らしていた。村おこしを計画し始めた段階で『固まっていた方が都合がいい』となって、この形になったのだとか。

「あそこにあるのが明彦の家で、嬢ちゃんが暮らすのはあの家だ。歓迎会が終わったあと、改めて案内するな」
「はい。よろしくお願いします」
「建物関係は――役場は最後に案内するから、これで一旦終わりか。ここからは自然物を紹介していくな」

 村の西にある、『月下湖(げっかこ)』という鳥が多くいる湖。村の東側にある『清龍の滝』と呼ばれている大きな滝。村の南にある、魚がたくさん泳いでいる『風上川(かざかみがわ)』。村の南にある樹齢200年越えの『元樹(げんじゅ)』。
 あやかしさん達が自慢に思っているスポットを案内してもらって、周り終えた頃ちょうど時間となりました。

「案内ツアーに付き合ってくれてありがとうな。じゃあ、会場に案内するぜ」
「はい、お願いします」

 役場があるのは、村の中心。わたし達は今来た道を引き返し、全村人さんが待つ場所へと向かったのでした。


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