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第4話 はじめての天地村(3)
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「「「「「水前寺清香さん!」」」」」
「「「「「ようこそ!」」」」」
「「「「「天地村へ!!」」」」」
屋根に大きな『A』のオブジェが乗った、独特な外見の平屋の建物。安倍さんが言うには村人の投票で1位になったバズを狙ったデザインの建物に入ると、村人さん達がクラッカーを鳴らして出迎えてくれました。
「あと少しで完成ってところで『やっぱりこっちの飾りつけの方がいいんじゃないか』とか、この子らがあーだこーだ揉めだしてねえ。待たせちゃってごめんね」
「お気になさらないでください、操形(あやかた)さん。皆さんも、一生懸命考えてくださってありがとうございます」
「そう言ってもらえると助かるよ。ところで、自己紹介はまだだったはずだよね? 私の名前、知ってるんだ」
「合格をいただいてから今日まで、一か月ありました。少しでも早くお仕事に取り掛かれるように、お名前などは覚えてきています」
20代後半に映る日本人形のような女性は、この村で二番目の古株の副村長・操形さん。
村の中心人物だけではなく全員分、37あやかし分――37人分の名前と顔写真が頭に入っている。
ちなみに人口が300人以上いることになっているのに37人分で全員と言っているのは、実際の人口は37人だから。数が少なすぎると村の維持が色々と大変になってしまうそうで、数字を誤魔化しているそうです。
「へぇ。真面目な子だねぇ」
「面接で一味も二味も違う人間と出会ったって、あんなに説明したのにもう忘れちまったのか? あのアヤ様も焼きが回ったか?」
「想像以上だって驚いてるだけさね。……ああそうそう、清香ちゃん。面接といえばこの男、最初ガチガチに緊張してなかったかい? 心(しん)は意外と人見知りで、慣れる前はあんな風で――」
「うるせえっての! これから嬢ちゃんの歓迎会をするんだぞ! いつまでも独りで話してるんじゃねぇっての!」
心問答さんと操形さんは数百年の付き合いで、所謂幼馴染のような関係。こんな風によく弄り合っているのだそう。
「ああもううるさいねぇ、分かった分かった。清香ちゃん、宴会の準備はできてる。さ、あがって頂戴な」
「ありがとうございます。お邪魔します」
役場を奥へと進むと『会議室A』とプレートがかかった広い部屋があり、今日はそこが歓迎会の会場となっている。星や動物など様々な形の折り紙が貼られた廊下を通っていると、美味しそうな匂いが漂ってきて――
「わ。すごい……!」
会場に入るとすぐ視界には、テーブルの上にずらっと並ぶ沢山のお料理が飛び込んできたのでした。
「「「「「ようこそ!」」」」」
「「「「「天地村へ!!」」」」」
屋根に大きな『A』のオブジェが乗った、独特な外見の平屋の建物。安倍さんが言うには村人の投票で1位になったバズを狙ったデザインの建物に入ると、村人さん達がクラッカーを鳴らして出迎えてくれました。
「あと少しで完成ってところで『やっぱりこっちの飾りつけの方がいいんじゃないか』とか、この子らがあーだこーだ揉めだしてねえ。待たせちゃってごめんね」
「お気になさらないでください、操形(あやかた)さん。皆さんも、一生懸命考えてくださってありがとうございます」
「そう言ってもらえると助かるよ。ところで、自己紹介はまだだったはずだよね? 私の名前、知ってるんだ」
「合格をいただいてから今日まで、一か月ありました。少しでも早くお仕事に取り掛かれるように、お名前などは覚えてきています」
20代後半に映る日本人形のような女性は、この村で二番目の古株の副村長・操形さん。
村の中心人物だけではなく全員分、37あやかし分――37人分の名前と顔写真が頭に入っている。
ちなみに人口が300人以上いることになっているのに37人分で全員と言っているのは、実際の人口は37人だから。数が少なすぎると村の維持が色々と大変になってしまうそうで、数字を誤魔化しているそうです。
「へぇ。真面目な子だねぇ」
「面接で一味も二味も違う人間と出会ったって、あんなに説明したのにもう忘れちまったのか? あのアヤ様も焼きが回ったか?」
「想像以上だって驚いてるだけさね。……ああそうそう、清香ちゃん。面接といえばこの男、最初ガチガチに緊張してなかったかい? 心(しん)は意外と人見知りで、慣れる前はあんな風で――」
「うるせえっての! これから嬢ちゃんの歓迎会をするんだぞ! いつまでも独りで話してるんじゃねぇっての!」
心問答さんと操形さんは数百年の付き合いで、所謂幼馴染のような関係。こんな風によく弄り合っているのだそう。
「ああもううるさいねぇ、分かった分かった。清香ちゃん、宴会の準備はできてる。さ、あがって頂戴な」
「ありがとうございます。お邪魔します」
役場を奥へと進むと『会議室A』とプレートがかかった広い部屋があり、今日はそこが歓迎会の会場となっている。星や動物など様々な形の折り紙が貼られた廊下を通っていると、美味しそうな匂いが漂ってきて――
「わ。すごい……!」
会場に入るとすぐ視界には、テーブルの上にずらっと並ぶ沢山のお料理が飛び込んできたのでした。
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