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第3話 面接が終わって
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「あっ! 清香ちゃん、お疲れ様~!」
階段を使って一階まで降りると、椅子で待ってくれていた美郷先輩が手を振りながら走り寄ってきてくれた。
「ど、どうだった? 聞いても、いいのかな?」
「大丈夫ですよ。面接は、合格で――」
「え!? 合格、だけど条件が合わなかった……?」
「先輩、いつも言っていますが気が早すぎですって。面接は合格で、その後提示されたものは全て納得できるものでした。わたしは、ここの一員として働くことになりました」
あやかしさんの村おこしのお手伝いをする仕事、面白そう。
あの時真っ先に心の中に現れた感情が、ソレだった。
「俺は鈴木心太という名前の人間になっていた、ええと、あれだ。お前達人間が、『あやかし』と呼んでいる存在だよ」
せっかく知れた『あやかし』という存在をもっと知りたい。もっと関わってみたい。
そう思ったとの、
「最初のうちは今でいう県が提供してくれてたんだが、昨今人間界も不景気だろ? 年々その額が減っていってさ、作った米や野菜なんかを売って穴埋めしてたんだが、それもいつまでももたない。一年もすれば破綻して、近いうちに村を維持できなくなっちまうんだよ」
一生懸命頑張っている困っている人を、助けたい。自分に助けられる力があるなら力になりたい。
あの時の自分に協力したい。
とも、思った。
なので――
「嬢ちゃん、頼む。この通りだ」
「アドバイザーになってはいただけませんか?」
「はい。よろしくお願いします」
わたしは姿勢を正し、お二人に向けて頭を下げたのでした。
「そうなんだっ! おめでとう! よかったねぇ!」
「ありがとうございます。一応、また先輩の後輩になります」
「本当におめでとうっ、あたしも嬉しいよ~! 清香ちゃんはどこに入るの? 行けそうなら毎日一緒に出勤しようぜ~!」
「ごめんなさい、それは無理なんですよ。わたしは『村おこし』を担当する部署に配属になって、北部にある天地村で生活するようになるんです」
天地村は地図にも存在している、れっきとした村。関係者じゃない人に対しては、あやかしの部分を抜いて説明するようになっているのです。
「え!? 天地村に行っちゃうの!? よ、よかったの清香ちゃん?」
「はい。やりがいのある仕事だと感じましたよ」
「そ、そっか。清香ちゃんがいいならいいんだ。応援するし、差し入れ持って会いにいくからね!」
「ありがとうございます。……それと、面接を紹介してくれてありがとうございます」
そのおかげで、予想もしなかった道が開けました。
新たな出会いをもたらしてくれたことに感謝をして――
「なんのなんの~! じゃあこれからお祝いだ!! さ行こう行こうっ!」
――グイッと腕を引っ張られ、先輩による就活成功パーティーがスタート。個室居酒屋で大盛り上がりをしたりプレゼントを貰ったりと楽しくも慌ただしい時間が流れていき、あっという間に卒業を迎え新天地へと出発する日となったのでした。
「いってらっしゃい、清香ちゃん。応援してるね」
「はい。いってきます、美郷先輩」
階段を使って一階まで降りると、椅子で待ってくれていた美郷先輩が手を振りながら走り寄ってきてくれた。
「ど、どうだった? 聞いても、いいのかな?」
「大丈夫ですよ。面接は、合格で――」
「え!? 合格、だけど条件が合わなかった……?」
「先輩、いつも言っていますが気が早すぎですって。面接は合格で、その後提示されたものは全て納得できるものでした。わたしは、ここの一員として働くことになりました」
あやかしさんの村おこしのお手伝いをする仕事、面白そう。
あの時真っ先に心の中に現れた感情が、ソレだった。
「俺は鈴木心太という名前の人間になっていた、ええと、あれだ。お前達人間が、『あやかし』と呼んでいる存在だよ」
せっかく知れた『あやかし』という存在をもっと知りたい。もっと関わってみたい。
そう思ったとの、
「最初のうちは今でいう県が提供してくれてたんだが、昨今人間界も不景気だろ? 年々その額が減っていってさ、作った米や野菜なんかを売って穴埋めしてたんだが、それもいつまでももたない。一年もすれば破綻して、近いうちに村を維持できなくなっちまうんだよ」
一生懸命頑張っている困っている人を、助けたい。自分に助けられる力があるなら力になりたい。
あの時の自分に協力したい。
とも、思った。
なので――
「嬢ちゃん、頼む。この通りだ」
「アドバイザーになってはいただけませんか?」
「はい。よろしくお願いします」
わたしは姿勢を正し、お二人に向けて頭を下げたのでした。
「そうなんだっ! おめでとう! よかったねぇ!」
「ありがとうございます。一応、また先輩の後輩になります」
「本当におめでとうっ、あたしも嬉しいよ~! 清香ちゃんはどこに入るの? 行けそうなら毎日一緒に出勤しようぜ~!」
「ごめんなさい、それは無理なんですよ。わたしは『村おこし』を担当する部署に配属になって、北部にある天地村で生活するようになるんです」
天地村は地図にも存在している、れっきとした村。関係者じゃない人に対しては、あやかしの部分を抜いて説明するようになっているのです。
「え!? 天地村に行っちゃうの!? よ、よかったの清香ちゃん?」
「はい。やりがいのある仕事だと感じましたよ」
「そ、そっか。清香ちゃんがいいならいいんだ。応援するし、差し入れ持って会いにいくからね!」
「ありがとうございます。……それと、面接を紹介してくれてありがとうございます」
そのおかげで、予想もしなかった道が開けました。
新たな出会いをもたらしてくれたことに感謝をして――
「なんのなんの~! じゃあこれからお祝いだ!! さ行こう行こうっ!」
――グイッと腕を引っ張られ、先輩による就活成功パーティーがスタート。個室居酒屋で大盛り上がりをしたりプレゼントを貰ったりと楽しくも慌ただしい時間が流れていき、あっという間に卒業を迎え新天地へと出発する日となったのでした。
「いってらっしゃい、清香ちゃん。応援してるね」
「はい。いってきます、美郷先輩」
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