こちら、あやかし村おこし支援課

柚木ゆず

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第5話 最初にやること(1)

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「それじゃあ、第一回戦略会議を始めるか」

 午前9時ちょうど。心問答さん、操形さん、安倍さん、わたしの4人は、役場にある会議室B――村おこし支援課会議室にて、テーブルを挟んで顔を突き合わせていました。
 心問答さんは天地村の村長で、操形さんは副村長。村のリーダー2人と支援課のメンバー2人でまずは意見を交わし、まとまった意見を村人の皆さんに提示し、賛成反対を確認した上で実行する――。という流れになっているため、その第一段階を行うのです。

「嬢ちゃんがすでに、複数のアイディアを用意してくれているらしいな? 早速だが教えてくれるか?」
「はい。本日は、『食の発進』を提案します」

 タラの芽、たまねぎ、にんじんの天ぷら。サトイモなどがたっぷり入った野菜汁。などなど。
 昨日いただいたものはどれも最低限の味付けしかしていないのに、頬っぺたが落ちるほどに美味しかった。それくらいどれも素材の味が上質で、ここを推していかない手はないと思ったのです。

「食って、嬢ちゃん。俺らも、えす――SNSにアップ? をやってみたり、土産屋でポップを作ってアピールしたぞ」
「食堂でも、しているわよね」
「だがどれもまったく食いつかなかった。それでもソコを推すのか?」
「推すべき、だと思います。これまでのプッシュの仕方には少々問題点がありまして、そこを改善すれば強力な武器になると確信しております」

 お世辞ではない。この村の食材には、実際にそれだけの力がある。

「そ、そうなのか? 改善って、どこをどうすればいいんだ?」
「複数ありまして、まず一つ目はお食事処に関してになります」
「あそこ? あそこは完璧に見えるんだが……。何がダメなんだ?」
「建物の構造、販売スタイルですね。専門店3つではなく、和洋中を楽しめる1店舗にまとめるべきだと考えます」

 と提言すると、心問答さん――だけではなく操形さんまでも驚きを見せ、隣に座っている安倍さんもキョトンとなった。

「いやいやいや! 専門店は特別感があるだろ!? 都会では〇〇専門店が流行ってるって聞くぜ!?」
「そう、よねえ。専門は、プラスにはならないのかしら?」
「そちらは、全てに当てはまるわけではありません。こういった場所では、限られたジャンルしか注文できない、は大きなデメリットになるのですよ」

 例えば3人組で写真撮影にいらっしゃった場合、全員が食べたいものを食べられない可能性が出てくる。そうなると『村の外にあるコンビニで買うか』になりかねないし、『前に来た時不便だったからコンビニで食べ物を買ってからこよう』となりかねないのです。

「「……なるほど……」」
「確かに……。言われてみると、一ジャンルしかないフードコートは不便ですね」
「そうなんです。ですからこういう場ではまとめるべきだと思っていますし、提供するメニューも一新するべきだと思います」

 というと、また3人から驚きの反応がやって来た。

「料理は、あの食楽が中心になって考案したメニューなんだぜ? あらゆるモンを食らってきた食の達人のメニューが、いけないのか……?」
「こちらはハッキリと言わせてもらいますが、いけません。あのメニューは、食楽さんの味覚を頼ってはいませんよね? ウケ、バズを意識しすぎて、とんでもないことになってますよ……?」

 季節の野菜のヘルシー蒸し焼き~チョコとバターを添えて~。新鮮川魚のカルボナーラソースがけ~チョコミントの香りと共に~。など、奇抜にしすぎて食材の完全に殺してしまっている。

「奇をてらったら受ける、人気が出るわけではないんですよ。特にこういった村でやると、『痛い』『滑ってる』と嗤われてしまいます」
「「……痛い……。滑ってる……」」
「……そんな……」

 安倍さんも長年の修行の影響で感性がお二人に似ていて、3人揃って顔を見合わせている。
 少し休憩を挟んだ方がいいかも? と感じるくらいショックを受けてみるように見えるけれど、休憩を入れていたら他の皆さんに今日中に提示できなくなりかねない。とりあえずテーブルにあったおしぼりを3人にお渡しして、話を進めることにしました。


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