45 / 62
第13話 賑 賑?(4)
しおりを挟む
「順番に詳細を伺います。薄光さん」
「村の記念硬貨とボールペンをポケットに入れて、そのまま店を出たとのこと。目全(もくぜん)さんが教えてくれました」
目全さんは天地屋の店員のひとりであり、視野が360度あり透視もできるあやかしさん。店内全てを見渡すことができる。
「こちらが、万引きの証拠になります」
薄光さんが差し出した紙を受け取ると、そこには――赤いキャップを被った10代後半に見える男の子が、コインとペンを忍ばせている絵がありました。
これを用意してくれたのは、記憶紙(きおくし)さん。対象に触れると記憶を読み取れて、更にはその記憶が描かれた紙を創り出せる力があります。
「この男の子は、今どちらに?」
「幸い驚影さんが近くにいらっしゃり、影の中から追跡をしてくれています」
驚影さんはかつて、人の影から飛び出して驚かせていたあやかし。人の影に出入りできる力を持っているのです。
「了解です。次は、地栄さんお願いします」
今対応できるのはわたし、安倍さん、心問答さんのみで、片方ずつ対応していくしかない。どちらを優先すべきか確認しよう。
「物造ちゃんが道案内をした帰りに、畑にあるダイコンを踏んづけたり抜いて折ったりしているのを見たなのさ。男女二人組だったなのさ」
「……そんなことを……。安倍さん」
「はい。地栄さん、その人達の特徴は分かりますか?」
「見つけた時は遠くにいて、近づく前にどこか行ってしまったから情報が少ないなのさ。分かっているのは、女の方は鞄にピンク色のヌイグルミ? みたいなのをつけているのと、男の方はズボンに鎖をつけるってことだけなのさ」
よかった。それだけ特徴が分かれば対応できる。
「分かりました。……驚影さんが追ってくださっているのなら、最悪村から出そうになったら足止めしてもらえますね。対応するのは畑荒しからで、会いにいきましょう」
「あ、会う!? ど、どうやって会いにいくなのさ!?」
こっちの2人は万引き犯と違って、追跡している人がいない。
なのになぜ、わたしがそう言っているのかと言うと――
「僕の式紙に案内してもらいます」
――追跡する方法がちゃんとあるから。
安倍さんは陰陽師の力を使える。そこで村の周辺に特殊な結界を張っていただいていて、訪れた方々全員に極小の式紙が自動的に貼り付くようになっているんです。
「式紙が存在している場所であり貼り付いている人間を、僕は把握できます。特徴さえわかれば会いに行けるのですよ」
「……式紙……!? いつの間になのさ……!?」
「水前寺さんからご提案を受け、先週より設置していました」
人が増えたら、邪な心を持った人間が来る可能性がある。卓上の調味料などへのイタズラや席の破壊、悪質なクレームなど、ウチのレストランが有名になってから定期的に問題が発生して頭を悩ませた。
そんな経験があるから嫌な確信があり、何かあった際に対策できるように安倍さんに相談。その際にそういう式紙の使い方ができると教わり、準備をお願いしていたのです。
「わたし達が行うことはすべて、あらかじめ皆さんに同意を得るつもりでした。ですがこちらに関してはせっかくのムードに水を差しかねませんし、警戒心が抱いたことにより皆さんの表情が硬くなってしまう心配があったんです。今まで黙っていて、申し訳ありませんでした」
「そんなっ、頭を上げて欲しいなのさっ。おかげで助かっているなのさ」
「ボクも同意見です。そこまで考えてくださり、感謝します」
地栄さん、薄光さん。ありがとうございます。
「ここからは、安倍さんとわたしに任せてください」
「お任せを」
畑荒しの居所は、特定できた。なのでわたし達は、大急ぎでその地点を目指し――
「村の記念硬貨とボールペンをポケットに入れて、そのまま店を出たとのこと。目全(もくぜん)さんが教えてくれました」
目全さんは天地屋の店員のひとりであり、視野が360度あり透視もできるあやかしさん。店内全てを見渡すことができる。
「こちらが、万引きの証拠になります」
薄光さんが差し出した紙を受け取ると、そこには――赤いキャップを被った10代後半に見える男の子が、コインとペンを忍ばせている絵がありました。
これを用意してくれたのは、記憶紙(きおくし)さん。対象に触れると記憶を読み取れて、更にはその記憶が描かれた紙を創り出せる力があります。
「この男の子は、今どちらに?」
「幸い驚影さんが近くにいらっしゃり、影の中から追跡をしてくれています」
驚影さんはかつて、人の影から飛び出して驚かせていたあやかし。人の影に出入りできる力を持っているのです。
「了解です。次は、地栄さんお願いします」
今対応できるのはわたし、安倍さん、心問答さんのみで、片方ずつ対応していくしかない。どちらを優先すべきか確認しよう。
「物造ちゃんが道案内をした帰りに、畑にあるダイコンを踏んづけたり抜いて折ったりしているのを見たなのさ。男女二人組だったなのさ」
「……そんなことを……。安倍さん」
「はい。地栄さん、その人達の特徴は分かりますか?」
「見つけた時は遠くにいて、近づく前にどこか行ってしまったから情報が少ないなのさ。分かっているのは、女の方は鞄にピンク色のヌイグルミ? みたいなのをつけているのと、男の方はズボンに鎖をつけるってことだけなのさ」
よかった。それだけ特徴が分かれば対応できる。
「分かりました。……驚影さんが追ってくださっているのなら、最悪村から出そうになったら足止めしてもらえますね。対応するのは畑荒しからで、会いにいきましょう」
「あ、会う!? ど、どうやって会いにいくなのさ!?」
こっちの2人は万引き犯と違って、追跡している人がいない。
なのになぜ、わたしがそう言っているのかと言うと――
「僕の式紙に案内してもらいます」
――追跡する方法がちゃんとあるから。
安倍さんは陰陽師の力を使える。そこで村の周辺に特殊な結界を張っていただいていて、訪れた方々全員に極小の式紙が自動的に貼り付くようになっているんです。
「式紙が存在している場所であり貼り付いている人間を、僕は把握できます。特徴さえわかれば会いに行けるのですよ」
「……式紙……!? いつの間になのさ……!?」
「水前寺さんからご提案を受け、先週より設置していました」
人が増えたら、邪な心を持った人間が来る可能性がある。卓上の調味料などへのイタズラや席の破壊、悪質なクレームなど、ウチのレストランが有名になってから定期的に問題が発生して頭を悩ませた。
そんな経験があるから嫌な確信があり、何かあった際に対策できるように安倍さんに相談。その際にそういう式紙の使い方ができると教わり、準備をお願いしていたのです。
「わたし達が行うことはすべて、あらかじめ皆さんに同意を得るつもりでした。ですがこちらに関してはせっかくのムードに水を差しかねませんし、警戒心が抱いたことにより皆さんの表情が硬くなってしまう心配があったんです。今まで黙っていて、申し訳ありませんでした」
「そんなっ、頭を上げて欲しいなのさっ。おかげで助かっているなのさ」
「ボクも同意見です。そこまで考えてくださり、感謝します」
地栄さん、薄光さん。ありがとうございます。
「ここからは、安倍さんとわたしに任せてください」
「お任せを」
畑荒しの居所は、特定できた。なのでわたし達は、大急ぎでその地点を目指し――
18
あなたにおすすめの小説
幽縁ノ季楼守
儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」
幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。
迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。
ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。
これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。
しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。
奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。
現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。
異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー
様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。
その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。
幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。
それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
もっと早く、伝えていれば
嶌田あき
キャラ文芸
記憶から生まれ、1ヶ月で消える運命のあやかし・憶。鎌倉の古い喫茶店「波音堂」で目覚めた彼が最初に出会ったのは、17歳の高校生・夏希だった。
同じ17歳なのに、夏希には18歳の誕生日が来る。憶には来ない。
憶は、大切な人を失った人々を「記憶の渚」へ導き、故人の記憶と対話する手伝いをしている。言えなかった恋の告白、12年越しのさよなら、認知症の夫への思い――4つの「弔い」を通じて、憶は生きること、死ぬこと、記憶することの意味を知っていく。
そして最後、憶は自分の正体を知る。憶は、夏希の母の記憶から生まれたのだと。
「もっと早く、伝えていれば」と後悔する人々に寄り添いながら、憶自身も夏希との限られた時間の中で、大切な気持ちを伝えようとする。
1ヶ月後、憶は静かに光の粒子となって消えていく。でも憶の存在は、夏希の記憶の中で永遠に生き続ける――。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜
鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
紅蓮の鬼神と華印の乙女〜神隠しにあった穢れモノの私が、最愛に出逢うまで〜
五城楼スケ(デコスケ)
キャラ文芸
──人とあやかしたちが混在する、大正時代に似たもう一つの世界。
名家、天花寺(てんげいじ)家の娘である琴葉は14歳の頃、十日もの間行方不明になったことがあった。
発見された琴葉にその間の記憶は一切なく、そればかりか彼女の髪の毛は雪のように真っ白に変わってしまっていた。
そんな琴葉を家族や使用人たちは、人目に付かないよう屋敷の奥深くに隠し、”穢れモノ”と呼び虐げるようになった。
神隠しに遭った琴葉を穢らしいと嫌う父からは使用人より下に扱われ、義母や双子の義姉弟たちからいじめられていた琴葉が、十六歳の誕生日を迎える直前、ある転機が訪れる。
琴葉が十六歳になった時、天花寺家の遺産を琴葉が相続するように、と亡くなった母が遺言で残してくれていたのだ。
しかし、琴葉を狙う義兄と憎む義姉の策で、琴葉は絶体絶命の危機に陥ってしまう。
そんな彼女を救ったのは、どこか懐かしい気配を持つ、妖しくも美しい青年だった。
初めて会うはずの美青年は、何故か琴葉のことを知っているようで……?!
神聖な実がなる木を守護する家門に生まれながら、虐げられてきた少女、琴葉。
彼女が十六歳の誕生日を迎えた時、あやかしが、陰陽省が動き出す──。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる