私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

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第1話 のびのび生きていくために、行うこと

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「今日から私は24時間・・・のびのび生きて、ミレーヌが家にいる時でも、好きなように生きて好きなことをやっていく。でもそれを始める前に、あれをやっておかないといけないわね」

 生まれ変わった私は、まずは深呼吸。新しい世界の空気をたっぷり吸って、引き出しにあるリングやネックレスを取り出してゆく。

「??? マリエットお嬢様……? なにをされているのですか……?」
「選別よ。思い入れがあるものを――ミレーヌが目をつけそうなものを選んで、部屋の前に置いておくの。物色に来られたら鬱陶しいからね」

 あの子は父や母の威光を使って、たびたび狙いを定めに来ていた。
 今はあの頃のような恐怖や不安はないけれど、自分の部屋をウロウロされるのは迷惑だもの。私の時間を邪魔されないように、外に出しておくのだ。

「そ、そうなのですね。で、ですが……。お嬢様、本当によろしいのですか……?」

 キトリーは納得しつつも、戸惑いの視線を投げかけてくる。
 このリングは、7か月前今年の春まで通っていた学舎で最も成績が良かった卒業生に贈られるもの。こっちのネックレスは、生徒会長を務めた者に贈られるもの。
 どれもが、特別な意味を持つものなんだもの。この家で唯一私を想ってくれているこの人は、心配になるわよね。

「キトリー、何一つ問題はないわ。これもおじい様やおばあ様の形見達と同じで、『物』が全てではないんだもの。一番の成績を収めた、生徒会長をした、その事実があればそれでいいのよ」

 これらを失っても、あの3年間は消えない。今は私には、思い出があれば充分なのよね。

「考えは人それぞれだから、貴方からしてみれば不安に映ると思うわ。でも私は、心からそう思っているの。決して負け惜しみではなくって、悲しくも寂しくもないのよ」
「…………お嬢様のお目が、本心なのだと物語っておられますね。余計な心配をしてしまい、お時間を消費してしまいました」
「いいえ、その配慮は嬉しいわ。いつもありがとう、キトリー」

 下がった目尻に微笑みを返し、集めた装飾品達を外へと運び出す。そういったものは計11点あるためキトリーにも手伝ってもらって運び、

「お嬢様。こちらに載せた方がいいかと思います」
「そうね。採用させてもらうわ」

 彼女が持ってきてくれた小さな台の上に等間隔で並べ、設置完了。分かりやすいように《ご自由にお取りください》と書いた紙を台に貼りつけて、全ての作業は終わって――

「お姉様!? なんですのこれは!?」

 ――そうしていると甲高い声が響いて、ミレーヌがやって来た。
 この子には、この貼り紙が見えないのかしら? まあ、いいわ。あとあと確認されるのも面倒だし、説明してあげましょうか。

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