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第13話 回想 その怯えの正体は……? トリスタン視点
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「……風邪をひいたせいで、ミレーヌは家に戻ってる……。八つ当たりをしていない、よね…………?」
それは、ある日のお昼休みのことだった。書類整理をするべく生徒会室の扉を開けようとしたら、中からそんなことが聞こえてきたのだ。
((八つ当たり……? 風邪で、何に八つ当たりをするというんだ……? それに……))
マリエット会長の声音にはなぜ、大量の怯えが含まれているんだ?
それはまるで、臆病な小さな子どものよう。そんな風に感じてしまうほど、何に怯えているのだろうか……?
((もしや……。妹君の体調は、想像以上に悪いのか……?))
そんな予想が過ぎったが、それはあり得ない。彼女は確か微熱があるからと大事を取って早退しただけだし、『八つ当たり』と口にしていた。原因は別にある。
((……体調の心配でないとなると……。一体、なんなんだ……?))
他人の独り言をもとに、あれこれ詮索する。それは褒められる行動ではないが、あの怯えの量は異常。そして普段は一切悟られないようにしていることもあって、外部からの介入がが必要だと感じた。
そこで何かできることはないかと、不躾と承知でロールド家の配下に調査を依頼し――彼女を取り巻く状況、リュシア家の実態を知った。
「…………。まさか、そんな事になっていたとはな……」
従者から報告を受けた僕は、おもわず自室で天を仰いだ。
姉想いの妹ミレーヌ・リュシアは、家の中では別人。姉マリエットを虐げることに快楽を覚える人間だった。
そして2人の両親はそんなミレーヌを溺愛しており、一切咎めはしない。その結果マリエット会長は宝物を人質に取られているも同然の状況となっており、日々妹に怯えていたのだった。
「トリスタン様。如何なさいますか?」
「………………どうにかしたい問題だ。けれど……。少なくとも今は、なにもできはしないよ」
これは非常に腹立たしい問題だが、リュシア家内の問題だ。法律上現段階では他者が口を出しても罪に問うことはできないし、なにより、下手に動くと宝物を全て失ってしまう危険性がある。
それに――。
「どうやら。マリエット会長には、何かしらの考えがあるようだ」
報告によると、定期的に彼女は侍女と2人で外出している。
残念ながら、その目的は把握できていないが――。そんな状況下で意味もなしに部屋を開けるはずはなく、何かの準備をしているように思えた。
「このタイミングで動いてしまうと、恐らくはソレが台無しになってしまうだろう。そこで僕は、とある準備を行っておく。……ライナス。ここに記したことを、済ませておいてくれ」
そうして『作戦』を記した紙を渡し、あとは静観。告白云々は封印し、彼女が動き出すタイミングを待つことにしたのだった――。
それは、ある日のお昼休みのことだった。書類整理をするべく生徒会室の扉を開けようとしたら、中からそんなことが聞こえてきたのだ。
((八つ当たり……? 風邪で、何に八つ当たりをするというんだ……? それに……))
マリエット会長の声音にはなぜ、大量の怯えが含まれているんだ?
それはまるで、臆病な小さな子どものよう。そんな風に感じてしまうほど、何に怯えているのだろうか……?
((もしや……。妹君の体調は、想像以上に悪いのか……?))
そんな予想が過ぎったが、それはあり得ない。彼女は確か微熱があるからと大事を取って早退しただけだし、『八つ当たり』と口にしていた。原因は別にある。
((……体調の心配でないとなると……。一体、なんなんだ……?))
他人の独り言をもとに、あれこれ詮索する。それは褒められる行動ではないが、あの怯えの量は異常。そして普段は一切悟られないようにしていることもあって、外部からの介入がが必要だと感じた。
そこで何かできることはないかと、不躾と承知でロールド家の配下に調査を依頼し――彼女を取り巻く状況、リュシア家の実態を知った。
「…………。まさか、そんな事になっていたとはな……」
従者から報告を受けた僕は、おもわず自室で天を仰いだ。
姉想いの妹ミレーヌ・リュシアは、家の中では別人。姉マリエットを虐げることに快楽を覚える人間だった。
そして2人の両親はそんなミレーヌを溺愛しており、一切咎めはしない。その結果マリエット会長は宝物を人質に取られているも同然の状況となっており、日々妹に怯えていたのだった。
「トリスタン様。如何なさいますか?」
「………………どうにかしたい問題だ。けれど……。少なくとも今は、なにもできはしないよ」
これは非常に腹立たしい問題だが、リュシア家内の問題だ。法律上現段階では他者が口を出しても罪に問うことはできないし、なにより、下手に動くと宝物を全て失ってしまう危険性がある。
それに――。
「どうやら。マリエット会長には、何かしらの考えがあるようだ」
報告によると、定期的に彼女は侍女と2人で外出している。
残念ながら、その目的は把握できていないが――。そんな状況下で意味もなしに部屋を開けるはずはなく、何かの準備をしているように思えた。
「このタイミングで動いてしまうと、恐らくはソレが台無しになってしまうだろう。そこで僕は、とある準備を行っておく。……ライナス。ここに記したことを、済ませておいてくれ」
そうして『作戦』を記した紙を渡し、あとは静観。告白云々は封印し、彼女が動き出すタイミングを待つことにしたのだった――。
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