私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

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第12話 告白と、想い マリエット&トリスタン視点

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((………………。………………))

『トリスタン・ロールド様。わたしマリエット・リュシアは、ずっと貴方を好きでした。よろしければ…………私を、貴方のお嫁さんにしてください』
 そうお伝えしてから、まだ数秒しか経っていないと思う。
 だけど、体感的には何百倍もの時間が経過したように感じる。

 お返事はどっち――? 受け入れてくれる――? 駄目――? 手遅れだった――? 勇気を出すのが遅かった――? トリスタン様の首は左右に振られてしまうの――?

 私の脳内には大量のマイナス思考が渦巻いていて、おもわずこの場から逃げ出したくなってしまう。
 ……でも。

((もう、全てから逃げないと決めた))

 だから私は、ブルーの瞳を真っすぐ見続ける。
 1秒が100秒以上に感じる時の中で私はお返事を待ち、そうしていると――。トリスタン様の口が、ゆっくりと動き始め――


「喜んで。……マリエット・リュシア様。僕もずっと、貴方を好きでした。こちらこそ、僕を貴方の夫にしてください」


 ――っっ。その瞳が柔らかく細まり、私は優しく抱き締められたのでした……っ。



 〇〇



『尊敬できる人』から『好きな人』へ。その感情の移り変わりは、非常に不思議であり必然的なものだった。

「マリエット・リュシア様。想像以上に、立派な方だな」

 生徒会活動を行うようになって彼女と接触する機会が増え、自然と理解を深めていった。

 物事を俯瞰できる。自分自身のキャパを把握されている。他者目線になって考えられる。どんな問題に対しても、他人事ではなく我が事のように取り組む。

 長所を挙げると、枚挙にいとまがない。それほどまでに彼女は、会長としても、人としても素晴らしい人だった。
 だから、なのだろう――。誰よりも間近で、こんな人に触れていたからなのだろう――。


 僕は気が付くと、彼女に恋をしていた。


 明確な転機は、分からない。いつの間にか『いいな』になっていて、それが『好きだ』に発展していて。
 彼女は人気者だったから――。隣の席はすぐに埋まってしまうのではないか? と考え、告白をしようとした。

 だが。
 それは、叶わなかった。厳密に言うと、告白をしたくてもすることができなかったのだ。

 なぜならば――。
 ある日偶然、彼女の中にある『怯え』に気付いてしまったから。

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