私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

文字の大きさ
18 / 48

第11話 パーティー マリエットside~告げる、2つの想い~ マリエット視点(2)

しおりを挟む
「…………人は、怖い生き物だと思います」

 綺麗なブルーの瞳を見つめながら、ぽつりと呟く。
 トリスタン様、いきなりおかしなことを言い出してごめんなさい。でもこれは、とても大事なことなので――。聞いてください。

「私はずっと、人は怖い生き物だと思ってきました。なぜなら人間は、表と裏の顔を持っているのだから」

 表ではニコニコしていても、裏では嗤っていたり怨んでいたり。家の外では姉想いのお淑やかな妹なのに、家の中ではサディスティックだったり。
 まるで正反対のことをあたかも『本物』のようにしてしまえるから、怖い。恐ろしい。

「でも。本当にごく稀に、表の顔しか持っていない人も、いるんですよね」

 おじい様、おばあ様。アンナ様、イレーナ様、ファナ様。そして、目の前にいる方。
 心の中で順番にあげていって、それが終わると――。一旦ブルーの瞳から視線を外し、顔をバルコニーの外へと向けた、

「…………その人は私がいない時でも、おんなじでした。地位ではなく『個人』で周囲の人達を見てくださっていて、曲がったことが大嫌い。違う選択をすれば簡単に味方を増やせたり『箔』を増やしたりできるのに、絶対にしないんです」

 トリスタン様派の生徒御自分の味方を注意されたり、歴代の生徒会長のように選挙に私財を注いだりはしない。どんな時でも、トリスタン様はトリスタン様。この目に映っているお姿が、本物だった。

「だから、私は……。そんな人に、恋をしたんです」

 バルコニーの外――その切っ掛けとなった、学舎の中庭へと向けていた顔。それを動かし、ブルーの瞳を再び見つめる。

「けれど私は、臆病でした」

 失敗が怖い、宝物を失うことが怖い。せっかくのチャンスを何度も逃していたし、妹に対してはほぼ何もできなかった。
 他のことはキビキビ動けるのに、肝心な物事に対しては臆病でした。

「でも。大切な方々のおかげで、変わることができました」

 ゲルンおじい様。レイナおばあ様。アンナ様。イレーナ様。ファナ様。
 おじい様とおばあ様のおかげで生まれ変わることができて、皆さんのおかげで一歩踏みだすことができました。

「なのでこれから、ずっと言えなかった想いを伝えさせていただきます」

 ごくり。自然と口内に溜まっていた唾液を飲み込んで。
 どくんどくんどくんどくん。両耳の間近に心臓があると錯覚してしまう程に、大きくなっている鼓動を聞きながら。
 私は今殻を破り、外へと飛び出した。

「トリスタン・ロールド様。わたしマリエット・リュシアは、ずっと貴方を好きでした。よろしければ…………私を、貴方のお嫁さんにしてください」
















 突然すみません。ご報告になります。

 彼が答える前に本日分が終わりとなってしまい、申し訳ございません。
 実は……。構成の(明日の投稿分の展開の)都合上、どうしてもここで止める必要がありまして……。
 
 明日も本日と同じ時間に、必ず、投稿をさせていただくつもりですので。
 すみませんが……。よろしければ、少々お待ちくださいませ。
しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです

珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。 だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。 それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。

coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。 お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません? 私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、 アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。 しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。 一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。 今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。 "醜草の騎士"と…。 その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。 そして妹は言うのだった。 「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」 ※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。 ※ご都合主義、あるかもしれません。 ※ゆるふわ設定、お許しください。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。 調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。 裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」 なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。 後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

処理中です...