私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

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番外編その1 3人の1年後 俯瞰視点(2)

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「………………え? い、今……。なんと、言ったのだ……?」

 あの日から2か月後の、日中。外は明るく人気(ひとけ)が多いため、多少は、安心して過ごせる時間。普段なら少しは表情が和らいでいるはずの時間に、ドミニクは――傍に居る妻チエラも娘ミレーヌも、全身を石像の如く硬直させていました。
 目尻が裂けんばかりに目を見開き、愕然となっている理由。それは――

 報酬のアップ。

 精鋭である10人から突如、そんな要望があったのでした。

「オレらは朝昼晩と、当主殿達をお守りしている。その疲労は、かなりのものなんですよ」
「相手は、侯爵家当主。おまけに大量の殺気を抱いていて、どんな手段を取って来るか分からない」
「心も体も、そう。相当な負荷がかかっているんですよ」
「そ、それは分かっているっ。だからっ、1人につき1か月200万を支払って――」
「だから、それじゃあ割りに合わないんですよ。この内容なら、1人1か月250万は必要です」
「こっちだって、命がけで活動しているんですよ。……当初は短期で契約して、ハッキリ言うとオレらの好意で契約内容を維持してきました」
「そろそろ、その好意も限界なんですよ。相応の報酬をいただきたく思います」

 という10人の話は嘘で、この契約は相場より少し上。ドミニクは、多めに払っていました。
 ですが彼らは衰弱してゆく3人を見て、『自分達の存在が唯一の希望』『最後の砦だ』と確信。ドミニクたちの足元を見て、つりあげようとしているのです。

「申し訳ありませんね、当主殿。コレは、慈善事業じゃないんですよ」
「200万から250万へのアップ。呑んでいただけますよね?」
「のっ、呑めるはずないだろうっ!! その要求は滅茶苦茶だっ!! 理不尽だっ‼ 弱みに付け込む脅迫だっ!!」

 当然ドミニクは相場を把握しているため、即座に首を左右に振ります。そうして10人に対して怒りの視線を注ぎますが――

「「「「「「「「「「そうですか。では、当主殿とのお付き合いもここまでですね」」」」」」」」」」

 ――この言葉が出ると、態度は一変。その怒りは瞬く間に消え去り、赤くなっていた顔は青くなってしまったのでした。

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