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第3話 行動、開始
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「フェリア……。どうしてお前が、ここにいるんだ……」
放課後。学舎内の美術室を訪れたヘイゼル・ロンドさんが、たれ気味の目を大きく見開きました。
それはもう、驚いてしまいますよね。机に入っていたラブレターに釣られてきてみたら、私がやって来たのですから。
「『どうして』の理由は、私がお招きしたからです。貴方に少し、お話があるのですよ」
部屋の鍵をカチャリとかけ、退路を断った私は静かに近寄ります。
この方は、私が情熱的なお手紙を送ったとされる相手。いくつかお尋ねしたい点が、あるんですよね。
「ロンドさんは勿論、あの件が捏造だとご存じですよね? どういった理由で、アルベール様に協力していたのですか?」
「な、なんのことだ……? 俺は確かに、お前から手紙をもらったぞ……?」
彼は戸惑いながらも、不思議そうに肩を竦めました。
なるほど。そうきますか。
「おっ、お前はあの手紙をなかったことにして、王太子様とのヨリを戻そうとしてるんだろっ! そうなんだろっ!?」
「この期に及んで、妄言を吐き続けるのですね。やはり貴族と言えど、謝礼――大金は魅力的なようですね」
私がそう告げると、瞬く間に表情が激変。『なぜそれを知っている!?』、というソレになりました。
「数日間、貴方を尾行させてもらいました。高級店でお洋服を買い漁ったり、高価な装飾品を購入したり。随分と豪遊していましたね」
「あ、あれは……。父さんが、誕生日祝いにくれたお金で――」
「貴方が教室にあるご自分の用具入れに隠していた、札束。お札にある番号をよくよく確認してみると、まだ一般には出回っていないものでした。貴方のお父様はどうして、そんなものをお持ちなのですか?」
そんなものがある理由は、アルベール様が製造所から直接取ってきたから。
調べた結果ロンドさんのお父様はとても真面目な方で、たとえアルベール様の命令でも、片棒を担ぎはしません。なのでお父様に内緒にするため、お金をここに隠しておいていたようですね。
「ど、どうしてそれを……っ。用具入れには、鍵をかけていたんだぞ……!?」
「錠の本を読み漁って構造を把握し、私の知識と組み合わせて解錠しました。深夜に忍び込んで開け、調べて、閉じた。以上の行動をしたため、鍵はかかったままだったのですよ」
錠は生活の必需品で、それだけに資料が沢山あって助かりました。やはり書物は、素晴らしいですね。
「ちなみにその際に1枚こっそり抜いていて、ここに確保しています。この保管ミス――証拠品の流出が露見すればアルベール様は激昂しますし、お父様は激怒されて追放される可能性が高いですね」
「ぁ……。ぁぁぁ……」
ロンドさんは腰砕けになり、青ざめた顔で座り込んでしまいました。
良くて追放、悪くて私刑による死刑なのです。そうなるのも無理はありません。
「た、たすけて……。たすけてくれ――たすけて、ください……っ!」
「ヘイゼル・ロンドさん。貴方は私がどんな目に遭うか分かった上で、手伝いましたよね? 断ることはできたのに、お金に目が眩んで手伝いましたよね?」
下調べの結果アルベール様は匿名で複数の男子生徒に『美味しい話がある』と声をかけていて、この人はその誘いに乗って会いに行っていました。
自分の意思で参加しているのでしたら、同情の余地はありません。
「そ、それは、つい出来心で……。ゆるして、ください……っ。どうか許してください……っっ!」
「………………仕方、ありませんね。ロンドさんに被害が出ないように、動いてみましょう」
これは、貴方が大好きなウソです。
私が目的を果たしたら、この人を待つのは追放でも私刑でもなく、収監。厳罰が下るようにちゃんと考えていますから、期待していてください。
「あ、ありがとうございます……っ。ありがとうございます……!」
「いえいえ。それでは、そうですね。貴方が学舎にいると、行動の妨げになります。私がいいと言うまで登校はせず、適当に理由付けをして自宅で待機していてくださいね」
「はいっ! わかりましたっっ!」
こうして私の反撃、第一段階は終わりとなりました。
本来ならこの証拠だけで充分なのですが、幸か不幸か周囲には『アルベール様の仲間』があと4人いるようです。
この方々にもきちんとお礼をしないといけませんし、この方々も良い材料になります。
なので、『本体』を叩くのはもう少しあと。
私は次の反撃を実行するため、校舎を去ったのでした。
放課後。学舎内の美術室を訪れたヘイゼル・ロンドさんが、たれ気味の目を大きく見開きました。
それはもう、驚いてしまいますよね。机に入っていたラブレターに釣られてきてみたら、私がやって来たのですから。
「『どうして』の理由は、私がお招きしたからです。貴方に少し、お話があるのですよ」
部屋の鍵をカチャリとかけ、退路を断った私は静かに近寄ります。
この方は、私が情熱的なお手紙を送ったとされる相手。いくつかお尋ねしたい点が、あるんですよね。
「ロンドさんは勿論、あの件が捏造だとご存じですよね? どういった理由で、アルベール様に協力していたのですか?」
「な、なんのことだ……? 俺は確かに、お前から手紙をもらったぞ……?」
彼は戸惑いながらも、不思議そうに肩を竦めました。
なるほど。そうきますか。
「おっ、お前はあの手紙をなかったことにして、王太子様とのヨリを戻そうとしてるんだろっ! そうなんだろっ!?」
「この期に及んで、妄言を吐き続けるのですね。やはり貴族と言えど、謝礼――大金は魅力的なようですね」
私がそう告げると、瞬く間に表情が激変。『なぜそれを知っている!?』、というソレになりました。
「数日間、貴方を尾行させてもらいました。高級店でお洋服を買い漁ったり、高価な装飾品を購入したり。随分と豪遊していましたね」
「あ、あれは……。父さんが、誕生日祝いにくれたお金で――」
「貴方が教室にあるご自分の用具入れに隠していた、札束。お札にある番号をよくよく確認してみると、まだ一般には出回っていないものでした。貴方のお父様はどうして、そんなものをお持ちなのですか?」
そんなものがある理由は、アルベール様が製造所から直接取ってきたから。
調べた結果ロンドさんのお父様はとても真面目な方で、たとえアルベール様の命令でも、片棒を担ぎはしません。なのでお父様に内緒にするため、お金をここに隠しておいていたようですね。
「ど、どうしてそれを……っ。用具入れには、鍵をかけていたんだぞ……!?」
「錠の本を読み漁って構造を把握し、私の知識と組み合わせて解錠しました。深夜に忍び込んで開け、調べて、閉じた。以上の行動をしたため、鍵はかかったままだったのですよ」
錠は生活の必需品で、それだけに資料が沢山あって助かりました。やはり書物は、素晴らしいですね。
「ちなみにその際に1枚こっそり抜いていて、ここに確保しています。この保管ミス――証拠品の流出が露見すればアルベール様は激昂しますし、お父様は激怒されて追放される可能性が高いですね」
「ぁ……。ぁぁぁ……」
ロンドさんは腰砕けになり、青ざめた顔で座り込んでしまいました。
良くて追放、悪くて私刑による死刑なのです。そうなるのも無理はありません。
「た、たすけて……。たすけてくれ――たすけて、ください……っ!」
「ヘイゼル・ロンドさん。貴方は私がどんな目に遭うか分かった上で、手伝いましたよね? 断ることはできたのに、お金に目が眩んで手伝いましたよね?」
下調べの結果アルベール様は匿名で複数の男子生徒に『美味しい話がある』と声をかけていて、この人はその誘いに乗って会いに行っていました。
自分の意思で参加しているのでしたら、同情の余地はありません。
「そ、それは、つい出来心で……。ゆるして、ください……っ。どうか許してください……っっ!」
「………………仕方、ありませんね。ロンドさんに被害が出ないように、動いてみましょう」
これは、貴方が大好きなウソです。
私が目的を果たしたら、この人を待つのは追放でも私刑でもなく、収監。厳罰が下るようにちゃんと考えていますから、期待していてください。
「あ、ありがとうございます……っ。ありがとうございます……!」
「いえいえ。それでは、そうですね。貴方が学舎にいると、行動の妨げになります。私がいいと言うまで登校はせず、適当に理由付けをして自宅で待機していてくださいね」
「はいっ! わかりましたっっ!」
こうして私の反撃、第一段階は終わりとなりました。
本来ならこの証拠だけで充分なのですが、幸か不幸か周囲には『アルベール様の仲間』があと4人いるようです。
この方々にもきちんとお礼をしないといけませんし、この方々も良い材料になります。
なので、『本体』を叩くのはもう少しあと。
私は次の反撃を実行するため、校舎を去ったのでした。
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