私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが?

柚木ゆず

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第5話 5人目の悪(1)

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「ふぅ。ようやく明日の朝、アルベール様にお返事ができるのう」

 アリス達が学校から姿を消して、5日後の夜。学び舎『フォルマ』の2階にある、学校長室。大きな木製デスクに向かっていた校長サゼール・ミレヤは、椅子の背に全体重を預けた。
 彼が作成していた書類は、リコの実家であるフェリア家に関するもの。
 サゼールは、各所にコネクションを持つ男。彼はそんな立ち位置を買われ、『浮気の罰として、フェリア家の貴族剥奪と追放』――詰まる所邪魔者を排除するよう、アルベールに命じられていたのだ。
 さしもの王族でも、代々続く家系の断絶は独断で決められない。そこで無関係なサゼールが秘密裏に同調を促し、渋る者には金品を積み、ようやく実を結んだのだった。
 これでリコやその家族が否定しても、手紙に不自然な点があっても、関係ない。学内の声と学外の声を合わせて、押し通せる。

「この書類を提出して会議にかければ、フェリア家は終わり。儂は退職後に王族の教育係となり、第二の人生が幕を開ける」

 来年定年での退職となっていた彼にとって、教育係はこの上ない再就職先。校長を遥かに超える地位が確定となり、サゼールは太った腹を揺らしてほくそ笑んだ。

「アルベール様の心変わりには、感謝しないといけないのう。他の女に一目惚れをしてくださり、まことにありがとうございます! なんてな、あっはっはっはっはっ」

 上機嫌になっている彼は手をパンパンと叩いて大笑いし、そのまま第二の人生について思い描き始める。

 給料は、今迄の2~3倍になる。
 そうだ。その金で、家を新しく建てよう。
 欲しかった絵も買おう。
 金は天下の回りもの、というからな。持つ者は気前よく使って景気を盛り上げようじゃないか。
 あとは…………そうだ。妻(アイツ)は最近儂を立てなくなって、腹が立っていた。儂もアルベール様のように新たな恋を探すようにして、離婚するとしよう。

 彼は机に頬杖をついて愚かなことを考え、突如、その思考を止めなければならなくなってしまう。


 カチャカチャ カチャカチャカチャ ガチャリ


 鍵をかけていたはずの扉が静かに開き、リコ・フェリアが入ってきたのだ。
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