私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが?

柚木ゆず

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第5話 5人目の悪(3)

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「身体に力が、入らない……っっ。こ、これは……!? どうなっているんだ……っっ!?」
「しびれ薬の効果、ですよ。私が盛ったものが、効いてきたのですね」

 薬学の本を研究し、近くの山で8種類の薬草と3種類の実を採ってきて調合しました。
 やはり書物は、頼りになりますね。工程と材料さえ分かれば、素人でも簡単に作れるのですから。

「薬、だと……!? いつっ、いつだ!? 儂はそんなものを呑んだ覚えは――まさかっ!!」
「はい。ここにいらっしゃる前に行う日課、『紅茶を飲む』。本日使用したティーバックの中に、混ぜ込んでおきました」

 ミレヤ校長は面白い癖があって、毎回一番後ろのものを使います。そのため給湯室に忍び込み、最後方のパックに忍ばせておきました。

「さて。私の作戦は貴方と違って成功し、この通り。証拠を入手できました」

 校長先生の傍に落ちている荷物を拾い上げ、念のため中身を全て確認した後しっかりと確保します。
 彼は必死に取り返そうとしていましたが、薬には勝てません。意思に反して身体から力抜け、床でうつ伏せになってしまいました。

「これにより貴方の薔薇色の未来とやらは絶たれ、それどころか厳しい未来が待っています。因果応報で、覚悟しておいてくださいね?」
「……ま、待ってくれ……。話が、ある……」

 ミレヤ校長は懸命に床に顎を突き立て、こちらを見上げました。

「儂には、かなりのコネクションがある……。もし儂が罪に問われないように立ち回ってくれたら――『アルベール様に脅され協力した』と話を合わせてくれたら、そのコネを使ってフェリア家の地位を向上させる――向上させて、いただきます。ですのでどうか、寛大なご判断をお願いいたします……!」
「……………………」
「フェリア様っ! お願い、いたします……!!」
「……………………うちの地位向上は、とても魅力的なお話です。その方向で、手を打ちますよ」

 ウソ、ですけどね。
 私も両親も現状維持で満足、人並みの暮らしができればそれでいいのです。故にそんなものに興味はなく、後日きっちりと多数の罪で裁かれて頂きましょう。

「ぉ、ぉぉ……っ。ぁ、ありがとうございます! ありがとうございますっ!!」
「いえいえ。でしたらアルベール様を問い詰める際に、校長先生もご一緒に証言されると効果的です。明日(あす)の朝にある集会で行う予定ですので、そのつもりでお願いしますね」
「畏まりましたっ! しっかりと、アルベール様――アルベールの指示だと話します!!」
「ミレヤ校長先生。よろしくお願いしますね」

 はい。こうして私の下準備は、全て終わりました。
 いよいよ明日(あした)は、本番です。アルベール・スティア様。覚悟、してくださいね?
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