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第8話 苦しみ~予想外~ シメオン視点(2)

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((え? パトリスが、同意した? …………あ、いやいや違うな。いまのは聞き間違いっ、俺は聞き間違えてしまったんだ))

 おもわずポカンとなっていた俺は、心の中で何度も頷いた。
 パトリスは元々気遣いをできる人間な上、こういう痛みの苦しみを誰よりもよく知っている。コイツが同意なんてするはずがない。

「すまないパトリス、ちゃんと聞こえなかったよ。もう一度言ってくれ」
「はい、分かりました。確かにそうですね。ヨランド姉さんは、本当に困った問題児です」
「……………………」

 聞き間違い、ではなかった。
 ヤツははっきりと、同意をした――した、だけじゃなかった……!

「格上貴族の反感を買ってしまえば、『家』に悪影響が出かねません。子どもと子どもの問題であっても、ムキになる大人――当主はごまんといますからね」

「気付かれなくて、本当によかったですね。いいですかヨランド姉さん、二度とそんな真似はしないでくださいよ?」

「ああヨランド姉さん、すみません。ヨランド姉さんはもう17にもなるのですから、そんなことは当然理解していますよね。申し訳ございません」

「いや……ヨランド姉さんなら、まったく理解していない可能性もありますね。だって兄さんの口からこんなにも、ポンポンと欠点が飛び出すような人なのですから」

 次々と、追い打ちをかけるようなことを言いやがった……!!

((なっ、どうなってるんだ……!? パトリスがこんなことを言うだなんて……!? なにが起きてるんだ――っ! ぁ、ああああああああああああああああっ!!))

 戸惑っていると、明らかにイライラしているヨランドの顔が目に入った。

((りっ、理由を考えている場合じゃない!! ヨランドは、ただでさえ心にダメージを受けているんだっ。とっ、とにかく止めさせないと!!))

 俺はすぐさま、割って入――入ろうとして、止まる。

((だ、駄目だ……。止められ、ない……))

 ここでパトリスの発言を止めたら、『ヨランドを嫌っている』をしっかりと植え付けられなくなってしまう。むしろ、『やっぱりヨランドが好きだった』――今日これまでの発言は、認識を変えるための嘘なのだと思われかねない。
 だ、だから……。
 だから…………。

「今も理解していない。兄さんもそう思いますよね?」
「え……? あ、ああっ、そうだな! ヨランドならまたやりかねないな! まったく理解していないに、100万賭けてもいい!」

 パトリスを制止するどころか、こんな風に返さなくてはならなくなって――


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