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第15話 裁きの時・その1 レティシア視点
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「……セルジュよ。この時をもって、ガ―レンドの姓を剥奪する」
夥しい数の白眼視。全方位から白い目を向けられていたセルジュ様に、おじ様から新たな言葉が向けられました。
姓の剥奪。それは追放、貴族籍の喪失を意味します。
「貴様は自分勝手な理由で婚約者を騙し、悲しませ、翻弄し続けた。そんな人間は、我が家には要らん。この瞬間より貴様は子ではない、他人だ」
「そ、そんな……っ。おっ、お許しを……! せ、せめて、家には籍を置かせてい――」
「忌々しいが、浮気や仮病は罪に問えん」
ポールおじ様は声を遮り、大きく息を吐き出しました。
「だがこの問題は、『はいそうですか』で済む問題ではない。済ませてよい問題ではない。そこで、違う形で罰を与えることにしたのだよ」
「た、確かに僕は、自分勝手な真似をしました……っ。ですが仰られているようにっ、法に触れることを行ってはいません……っ。ですので少しっ、ご容赦を――」
「法に触れていないだけで、貴様のソレは愚行中の愚行だ!! お前はそれだけの事をしてしまったのだよ。容赦が入る余地など僅かもない」
おじ様は断言され、懐から麻袋を取り出し、私へと体を向けられました。ですので頷きをお返しし、そうすればその袋はセルジュ様へと投げつけられました。
「こ、これは……。お金……!?」
「これが直接の原因となって野垂れ死にでもしたら、レティシア嬢は寝覚めが悪くなってしまう。……一週間は生きていける額を入れている。底を尽く前に職を見つけ、勝手に生きてゆくがいい」
冷たい目で淡々と告げられ、言い終えると周囲に一礼されます。そうしておじ様は私と来場されている方々に非礼を詫び、それが済むと2人の衛兵さんがセルジュ様の両腕を掴みました。
追放されてしまった方に、この場にいる資格はありません。ですのでセルジュ様は邸外へと連れ出されてしまい、その場にはエリーヌ・ルレアル様がぽつんと取り残される形となりました。
「…………セルジュ、様が…………。そんな――っ、皆様違うのっ! わたしも騙されていたのっ!! 記憶喪失が嘘だなんて知らずに会っていたの!! 被害者なのよ!!」
独りぼっちとなってしまった、ルレアル様。彼女はやがて弁解を始めますが、そちらを信じる人はいません。
「何を言っても無駄ですわよ。貴女は先ほど、『初めて出会った』と仰ったではありませんの」
「共犯なのに……。よくそのような事を口にできますわね……」
白眼視に加えて否定と非難の声が飛んでくるようになり、それらに耐えられなくなってしまわれたのでしょう。ルレアル様は逃げるように会場を飛び出し、そのまま去られてしまったのでした。
「あの様子なら今後、社交界への参加は不可能だろう。オディロン君のおかげで、双方に罰を――うむ? オディロン君? どこに行ったのだ……?」
いつの間にか、お兄様の姿がなくなっていました。
さっきまで、いらっしゃられたのに。どちらへ行かれたのでしょう……?
夥しい数の白眼視。全方位から白い目を向けられていたセルジュ様に、おじ様から新たな言葉が向けられました。
姓の剥奪。それは追放、貴族籍の喪失を意味します。
「貴様は自分勝手な理由で婚約者を騙し、悲しませ、翻弄し続けた。そんな人間は、我が家には要らん。この瞬間より貴様は子ではない、他人だ」
「そ、そんな……っ。おっ、お許しを……! せ、せめて、家には籍を置かせてい――」
「忌々しいが、浮気や仮病は罪に問えん」
ポールおじ様は声を遮り、大きく息を吐き出しました。
「だがこの問題は、『はいそうですか』で済む問題ではない。済ませてよい問題ではない。そこで、違う形で罰を与えることにしたのだよ」
「た、確かに僕は、自分勝手な真似をしました……っ。ですが仰られているようにっ、法に触れることを行ってはいません……っ。ですので少しっ、ご容赦を――」
「法に触れていないだけで、貴様のソレは愚行中の愚行だ!! お前はそれだけの事をしてしまったのだよ。容赦が入る余地など僅かもない」
おじ様は断言され、懐から麻袋を取り出し、私へと体を向けられました。ですので頷きをお返しし、そうすればその袋はセルジュ様へと投げつけられました。
「こ、これは……。お金……!?」
「これが直接の原因となって野垂れ死にでもしたら、レティシア嬢は寝覚めが悪くなってしまう。……一週間は生きていける額を入れている。底を尽く前に職を見つけ、勝手に生きてゆくがいい」
冷たい目で淡々と告げられ、言い終えると周囲に一礼されます。そうしておじ様は私と来場されている方々に非礼を詫び、それが済むと2人の衛兵さんがセルジュ様の両腕を掴みました。
追放されてしまった方に、この場にいる資格はありません。ですのでセルジュ様は邸外へと連れ出されてしまい、その場にはエリーヌ・ルレアル様がぽつんと取り残される形となりました。
「…………セルジュ、様が…………。そんな――っ、皆様違うのっ! わたしも騙されていたのっ!! 記憶喪失が嘘だなんて知らずに会っていたの!! 被害者なのよ!!」
独りぼっちとなってしまった、ルレアル様。彼女はやがて弁解を始めますが、そちらを信じる人はいません。
「何を言っても無駄ですわよ。貴女は先ほど、『初めて出会った』と仰ったではありませんの」
「共犯なのに……。よくそのような事を口にできますわね……」
白眼視に加えて否定と非難の声が飛んでくるようになり、それらに耐えられなくなってしまわれたのでしょう。ルレアル様は逃げるように会場を飛び出し、そのまま去られてしまったのでした。
「あの様子なら今後、社交界への参加は不可能だろう。オディロン君のおかげで、双方に罰を――うむ? オディロン君? どこに行ったのだ……?」
いつの間にか、お兄様の姿がなくなっていました。
さっきまで、いらっしゃられたのに。どちらへ行かれたのでしょう……?
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