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第18話 お兄様から告げられる、複数の言葉 レティシア視点(1)
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「レティシア、申し訳ありませんでした。あの頃何も気付けなくて」
セルジュ様が廃嫡となった、次の日の夕方。最後の関係者であるクロエ様が、修道院に送られたという知らせが入ったあとのことでした。オディロンお兄様が私のお部屋にいらっしゃられて、背骨が折れそうな程に腰を折り曲げられました。
「クロエとセルジュの狙い、セルジュの嘘にも気付けなかった。……俺の見る目のなさが悲しみを生んでしまっているのに、当の俺はあんなことを言ってしまっていた」
本当に大丈夫なのか? 何かあったらすぐ言うんだぞ? あの時はそんなことを口にしたよな――と。
お兄様は、自嘲含みで声を震わせました。
「知らないとはいえ、酷い話だ。レティシアはこんなことに返事をしないといけないんだから、つらなかったよな? ……全ては、俺の責任です」
「いいえお兄様、違います……っ。お兄様は悪くありません。そちらは私の責任です……っっ」
セルジュ様を信じ切ってしまっていて、本人に僅かの確認すらしませんでした。
勝手に決めつけてしまい、失恋したと落ち込む。そうして私が気持ちを隠し続けていたのですから、オディロンお兄様が気付けるはずがありません。
ですので、ごめんなさい――。
私は即座に首を振り、その理由と謝罪を口にしました。
「だが……。そのせいでレティシアは傷心を利用され、仲が発展することになってしまった。それはやはり、俺の責任だ」
「……お兄様。お兄様は以後も変わらず、頻繁に私と遊んでくださっていました。学院内外で、クロエ様に自ら近づかれることはありませんでしたよね?」
「あ、ああ。そう、だな」
「それは興味が全くなかったからで、私の感情と違って、何も隠されてはいませんでした。そこを、ちゃんと訝しむべきだったのですよ。セルジュ様との関係は、私が招いたものなのですよ」
あの頃は引き続き決めつけていて、『そういうものなんだ』と思い込んでいました。気付けるチャンスは常にあったのですから、お兄様の責任とはなりません。
「しかしだな……。その原因を作ったのは俺で、原因がなければそもそも問題が発生しては――…………。こんなことを繰り返していたら、レティシアを困らせるだけだ。逆効果だな」
お兄様は私の性質を、理解してくれている方。ですので私が必死に隠しさえしなければ、気付いてくださるのです。
「お兄様の頬の、ひどい腫れ。それは、私のために行ってくださったものなのですよね? それほどまでに思い想ってくださっていて、真剣になって記憶喪失の問題に関わってくださったのですから。私の中には感謝しかないのですよ」
「………………ああ、分かったよレティシア。ならお互いの言葉を受け取り合って、『どちらの責任でもなかった』とさせてもらう」
お兄様は私の瞳を見つめながら頷かれ、「この話も、これで終わりにさせてもらう」と続けられました。
オディロンお兄様、ありがとうございます。では先ほど提案をさせていただいた、アフタヌーンティーの準備を――
「じゃあ、もう一つの話をさせてもらう。……レティシア、聞いてください」
――えっ? もう一つ……?
なんなの、でしょうか……?
セルジュ様が廃嫡となった、次の日の夕方。最後の関係者であるクロエ様が、修道院に送られたという知らせが入ったあとのことでした。オディロンお兄様が私のお部屋にいらっしゃられて、背骨が折れそうな程に腰を折り曲げられました。
「クロエとセルジュの狙い、セルジュの嘘にも気付けなかった。……俺の見る目のなさが悲しみを生んでしまっているのに、当の俺はあんなことを言ってしまっていた」
本当に大丈夫なのか? 何かあったらすぐ言うんだぞ? あの時はそんなことを口にしたよな――と。
お兄様は、自嘲含みで声を震わせました。
「知らないとはいえ、酷い話だ。レティシアはこんなことに返事をしないといけないんだから、つらなかったよな? ……全ては、俺の責任です」
「いいえお兄様、違います……っ。お兄様は悪くありません。そちらは私の責任です……っっ」
セルジュ様を信じ切ってしまっていて、本人に僅かの確認すらしませんでした。
勝手に決めつけてしまい、失恋したと落ち込む。そうして私が気持ちを隠し続けていたのですから、オディロンお兄様が気付けるはずがありません。
ですので、ごめんなさい――。
私は即座に首を振り、その理由と謝罪を口にしました。
「だが……。そのせいでレティシアは傷心を利用され、仲が発展することになってしまった。それはやはり、俺の責任だ」
「……お兄様。お兄様は以後も変わらず、頻繁に私と遊んでくださっていました。学院内外で、クロエ様に自ら近づかれることはありませんでしたよね?」
「あ、ああ。そう、だな」
「それは興味が全くなかったからで、私の感情と違って、何も隠されてはいませんでした。そこを、ちゃんと訝しむべきだったのですよ。セルジュ様との関係は、私が招いたものなのですよ」
あの頃は引き続き決めつけていて、『そういうものなんだ』と思い込んでいました。気付けるチャンスは常にあったのですから、お兄様の責任とはなりません。
「しかしだな……。その原因を作ったのは俺で、原因がなければそもそも問題が発生しては――…………。こんなことを繰り返していたら、レティシアを困らせるだけだ。逆効果だな」
お兄様は私の性質を、理解してくれている方。ですので私が必死に隠しさえしなければ、気付いてくださるのです。
「お兄様の頬の、ひどい腫れ。それは、私のために行ってくださったものなのですよね? それほどまでに思い想ってくださっていて、真剣になって記憶喪失の問題に関わってくださったのですから。私の中には感謝しかないのですよ」
「………………ああ、分かったよレティシア。ならお互いの言葉を受け取り合って、『どちらの責任でもなかった』とさせてもらう」
お兄様は私の瞳を見つめながら頷かれ、「この話も、これで終わりにさせてもらう」と続けられました。
オディロンお兄様、ありがとうございます。では先ほど提案をさせていただいた、アフタヌーンティーの準備を――
「じゃあ、もう一つの話をさせてもらう。……レティシア、聞いてください」
――えっ? もう一つ……?
なんなの、でしょうか……?
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