才能取扱い店 二好屋

柚木ゆず

文字の大きさ
10 / 11

9 その後 ? (2)

しおりを挟む
「もしも、確固たる意志を――。才を得ても溺れない意志を作れたら、その時はもう一度いらっしゃい。今度は本当に、才玉を差し上げるわ」
「は、励ましをありがとうざいます。でも私は、きっとまた」
「貴方がココを訪れるに云った掲示板の紹介文、あれはそもそも『ある程度強く、真っ当な想い』を持つ者にしか見えないの。誰にでも見えていたら、今頃この店は大賑わいでしょう?」
「ぁっ。確かにそう、ですね」
「だから貴方の中には、ちゃんと自惚れない意志も存在してる。もともと存在しているのなら、確固とするのはそう難しくはないんじゃないかしら?」

 その言葉を聞き終えた直後、いいえ、その刹那でした。下を向いていたあどけない顔が、上へと戻ります。

「安心しなさい、貴方は『まとも』な子。一度痛い目を見たら己をしっかりと戒め、今度は間違わないようにできる子よ」
「っっ! 店長さん……っ」

 店主はその声に一度の頷きを返し、不意に視線を移動。宙に、僅かな憂いを帯びたソレを漂わせます。

「……この世で夢を叶えるのは難しく、諦める人が殆ど。大半の人間が自分を無理やり納得させ、渋々決めた他のレールに乗る」

 でも――。
 彼女は否定を放って視線を戻し、

「誰にだって譲りたくない、諦めたくないものはあるじゃない? どんなに努力をしても届かないものがあるなんて、悔しいじゃない? だから本当にその夢を叶えたいなら、例え一度絶たれても、強く正しく胸に抱き続けなさい。ずっと諦めなければいつか必ず、あたしがその背中を押してあげるわ」

 その台詞に該当するであろう少女に向け、光となる言の葉を贈り――。この不可思議な店の主は、すまし顔でこう言うのでした。

「もしテストに失敗しても、次に好機(チャンス)があるなら与える。真面目に前を向き続けているのなら、もう一度力になってあげる。それがここ、『二好屋』でございますから」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...