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第5話 反撃その2(2)
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「お母様。これから出す質問に、正直に答えてください」
「……はい、分かりました。ワタシは、何をお話しすればよいのでしょうか?」
「まず、一つ目。なぜあたしに何度も催眠術をかけ、婚約が破棄されたあと自ら命を絶つようにしたのですか?」
無理やりフェリクス・ファーフ様を好きにさせておいて、なのに嫌われる言動を実行させる。その裏には、どういう意図があるのですか?
「……それは……。ワタシと王太子殿下の思惑が、一致したからです」
お母様と、フェリクス様の思惑……? 一致しているということは、フェリクス様も破棄を望んでいた……?
「あの日、パーティーの日。王太子殿下は、ミーナに恋をしました。しかしミーナが拒絶の意思を示したため、家の地位向上を考え催眠術を施しました」
「……そこまでは、既知の事実です。それがどうして、思惑の一致に繋がるのですか?」
「あれは婚約が正式に決まり、ラナラ家の4人で王族の皆様に挨拶を行った日でした。パーティーを風邪で欠席していたララは、初めて近くで見たフェリクス殿下に一目惚れをしました。そして同じく、初めてララの姿を目にした殿下はこの子に一目惚れをしたのです」
そう、でしたか。あの日、そんなことが起きていたのですね……。
「婚約は既に成立しており、心変わりという理由での撤回はできません。そのためワタシと殿下は頭を捻り、ミーナに不祥事を起こさせ破棄させるようにしたのです」
「……なるほど。腑に落ちていなかった部分が、すっきりしました」
あたしが使用人の方に無礼を働いた時、フェリクス様はすぐに激怒されて即破棄を口にしました。
それまであたしは何度もあの方とお話ししていて、あの方はあたしの性格を知っていました。
どんなに舞い上がっていてもそんな発言はしないと、知っていました。
なのに少しも不思議がらずに、迷わず追い出す。
あの時ああされたのは、フェリクス様も計画者の一人だったからなのですね。
「そして無事相手がいなくなった殿下は、傷心を癒したくれたララに恋をする――。このようなシナリオになっていて、明後日には新たな婚約が発表されるようになっています」
「…………すでに、そこまでお話が進んでいたのですね。ですがそれは、こちらにとって好都合です」
婚約の発表は国中の貴族や他国の有力貴族や王族を招き、大々的に行います。その場で催眠を使ってララとお母様に暴露をしてもらったら、二人だけではなくフェリクス様にも『お礼』ができますね。
「でしたらこの機会に、その仕込みを行いましょう。お母様、ララ。順番にこのコインを見つめて、あたしの声を聞いてくださいね」
「「……はい……」」
紐をつけた硬貨をゆらゆらと揺らし、深層心理に干渉して下準備はお仕舞い。これで明後日の晴れ舞台で、キツイお返しをできるようになりました。
「ではこれで明後日については終わりで、再びさっきの話に戻させていただきますね」
あの内容には、理解できない点がまだあります。そのためもう一度、お母様の顔を直視しました。
「……どうぞ。なんでしょうか?」
「五日後に予定されている、あたしの服毒自殺。なぜわざわざ、催眠で服従させているあたしを殺さないといけないのですか?」
催眠が解ける事態は、ソールさん――専門家でも有り得ないと思っていた出来事で、それならばお母様達だって絶対にないと思っています。それにそんな時期に家族が死んでしまえば結婚の式が遅れ、愛する娘の計画に支障をきたします。
なのになぜ、消す必要があるのでしょうか?
「包み隠さず、教えてください。どうして、なのですか?」
「…………はい。それはですね……」
お母様はぼんやりと舌を動かし、
「ミーナは、ワタシの子供じゃないから。アイツは忌々しい前妻の子で、血の繋がりがないから消し去りたかったんです」
あらゆる想定をしていたあたしでさえも、呆然となってしまう言葉を発したのです。
「……はい、分かりました。ワタシは、何をお話しすればよいのでしょうか?」
「まず、一つ目。なぜあたしに何度も催眠術をかけ、婚約が破棄されたあと自ら命を絶つようにしたのですか?」
無理やりフェリクス・ファーフ様を好きにさせておいて、なのに嫌われる言動を実行させる。その裏には、どういう意図があるのですか?
「……それは……。ワタシと王太子殿下の思惑が、一致したからです」
お母様と、フェリクス様の思惑……? 一致しているということは、フェリクス様も破棄を望んでいた……?
「あの日、パーティーの日。王太子殿下は、ミーナに恋をしました。しかしミーナが拒絶の意思を示したため、家の地位向上を考え催眠術を施しました」
「……そこまでは、既知の事実です。それがどうして、思惑の一致に繋がるのですか?」
「あれは婚約が正式に決まり、ラナラ家の4人で王族の皆様に挨拶を行った日でした。パーティーを風邪で欠席していたララは、初めて近くで見たフェリクス殿下に一目惚れをしました。そして同じく、初めてララの姿を目にした殿下はこの子に一目惚れをしたのです」
そう、でしたか。あの日、そんなことが起きていたのですね……。
「婚約は既に成立しており、心変わりという理由での撤回はできません。そのためワタシと殿下は頭を捻り、ミーナに不祥事を起こさせ破棄させるようにしたのです」
「……なるほど。腑に落ちていなかった部分が、すっきりしました」
あたしが使用人の方に無礼を働いた時、フェリクス様はすぐに激怒されて即破棄を口にしました。
それまであたしは何度もあの方とお話ししていて、あの方はあたしの性格を知っていました。
どんなに舞い上がっていてもそんな発言はしないと、知っていました。
なのに少しも不思議がらずに、迷わず追い出す。
あの時ああされたのは、フェリクス様も計画者の一人だったからなのですね。
「そして無事相手がいなくなった殿下は、傷心を癒したくれたララに恋をする――。このようなシナリオになっていて、明後日には新たな婚約が発表されるようになっています」
「…………すでに、そこまでお話が進んでいたのですね。ですがそれは、こちらにとって好都合です」
婚約の発表は国中の貴族や他国の有力貴族や王族を招き、大々的に行います。その場で催眠を使ってララとお母様に暴露をしてもらったら、二人だけではなくフェリクス様にも『お礼』ができますね。
「でしたらこの機会に、その仕込みを行いましょう。お母様、ララ。順番にこのコインを見つめて、あたしの声を聞いてくださいね」
「「……はい……」」
紐をつけた硬貨をゆらゆらと揺らし、深層心理に干渉して下準備はお仕舞い。これで明後日の晴れ舞台で、キツイお返しをできるようになりました。
「ではこれで明後日については終わりで、再びさっきの話に戻させていただきますね」
あの内容には、理解できない点がまだあります。そのためもう一度、お母様の顔を直視しました。
「……どうぞ。なんでしょうか?」
「五日後に予定されている、あたしの服毒自殺。なぜわざわざ、催眠で服従させているあたしを殺さないといけないのですか?」
催眠が解ける事態は、ソールさん――専門家でも有り得ないと思っていた出来事で、それならばお母様達だって絶対にないと思っています。それにそんな時期に家族が死んでしまえば結婚の式が遅れ、愛する娘の計画に支障をきたします。
なのになぜ、消す必要があるのでしょうか?
「包み隠さず、教えてください。どうして、なのですか?」
「…………はい。それはですね……」
お母様はぼんやりと舌を動かし、
「ミーナは、ワタシの子供じゃないから。アイツは忌々しい前妻の子で、血の繋がりがないから消し去りたかったんです」
あらゆる想定をしていたあたしでさえも、呆然となってしまう言葉を発したのです。
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